「facebookをビジネスに生かす?」難しい命題に僕が答えたいくつかのこと | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。




来年、出版社を立ち上げようとしている僕のところに
facebookで新しく友達になったMさん(55)からメッセージが届いた。
「相談したいことがあるので、一度おめにかかりたい」と。


Mさんは元トーハン社員、出版物の流通に詳しいはずだ。
こちらも下心があって、二つ返事で了解した。
会社のビル内にあるレストランでランチを取りながら歓談した。


Mさんは、僕をfacebookの達人と思っているらしい。
誤解ではあるが、一家言がなくはないので受けて立つことにした。


■「スマホ用充電器」をfacebookでPR?

Mさんは、レストランなどのコールベルの販売会社にいると言う。
その会社で、これからスマートフォン用の充電器を売っていくという。
ベルと一体にした「スマホ&ケータイ用の充電器」


お世辞でも愛想でもなく、『好いアイデアだ』と思った。
スマホは最近、モバイル市場で携帯電話以上に売れている。
そのスマホで最も不便だと感じているのは「充電」だ。


1日で充電切れとなる携帯電話は、まずないが、スマホは違う。
たっぷり充電して家を出ても、しばしば半日ともたない。
だから僕は、家と会社と、車にも電源コードを置いている。


困るのは車なしで外出するときだ。
写真を撮り、facebookをチェックしていると、もう残量が厳しい。
お店で充電できれば、すごく便利に違いない。


「この商品(充電用のパッド)をfacebookで宣伝できないかと…」
Mさんは本題を切り出した。
『なるほどなるほど』でも、僕はちょっと首をかしげた。


facebookは”広告”には向かないと思いますよ」
Mさんはけげんな顔をした。
本や雑誌で「最強のビジネスツール」だのと情報を流すので、
『すごいPRツールだ』と信じ込む人がいても無理はないが、
日本でのfacebook普及率を考えると、過大な評価と言わざるを得ない。


そこで僕は、持論を述べることにした。


■「知らせる」役目はfacebookには不向き

「いいですか、Mさん。日本のfacebook人口は300万人です。
1000万人という統計もあるが、大半が幽霊アカウントでしょう。
使っている実感として、最大見積もっても300万人。
ネット人口の30人に1人、1教室に1人いるかどうかです。
だから、『拡散させる』ツールとしては向いていない


facebookブックページがあるじゃないか、と言う人もいる。
事実、Mさんも『慣れてきたらfacebookページを』と考えていたようだ。
この辺も誤解が多いテーマなので、説明しておかなければならない。


当たり前のことだが、まず数の問題がある。
facebookページで、普通の企業が1000人のファンを集めるのは難しい。
たとえ1000人の「いいね!」をもらえたとしても、
それが、イコール=「ファン」というわけでもない。


数の問題だけではない、「生きた数」にすることが難しいのだ。
それは、自分のウォールのことを考えれば分かると思う。


あなたには何人の友達がいるだろうか。
1000人?2000人?3000人?その中ですぐに顔と名前が一致するのは?
相当にがんばっても数百人、といったところ。
では「いいね!」をくれる人は何人いる?
多くても数十人、100人以上いる人は相当な達人だ。


この数十~数百人が自分のいわゆる「基礎票」だと思えばいい。
この人たちが自分のつぶやきを見てくれている。
逆に言えば、その余の友達はこちらのつぶやきを目にすることもない。


■「100いいね!」をもらうことさえ難しい

facebookの構造上、これは仕方がない。
頻繁にやり取りする人にしかつぶやきは届かないし、
交流している人のつぶやきしかこちらのウォールに到達しない。


その結果、先ほども述べたが、「100いいね!」でさえ至難である。
たった100人! でも、ハードルが高い「100」という数。
その点「いいね革命」に早い時期に参加した人はさすがで、
200人超、時には800「いいね!」を得る人もいる。


「さすがだね」と思いつつ、『僕では100は無理だ』と思ってしまう。
なぜなら、僕がfacebookに割ける時間はごく限られている。
これだけの反応を得るには、自分も反応しなければならない。
facebookは実社会と全く同じで、疎遠になると縁が切れてしまう


100いいね!もらえる人も、油断すれば数字はすぐに落ちるだろう。
大勢の反響を得たければ大勢に反応しなければならないし、
しかも、その作業をずっと継続しなければならない


四六時中PCに向かえる人を除き、これはとてもしんどい作業だ。
(だから一時「いいね!自動化ツール」というものまで出現した)


■facebookは「シジフォスの神話」みたいだ

facebookという仕組みは人に、実に理不尽を強いるツールである。
山に石を運び上げては転がし落とす「シジフォスの神話」のようだ。
楽しんでやるのでなければ、この”苦役”に耐えられない。


商品を宣伝すると言うのはれっきとした「仕事」だ。
仕事だから、一定数の人に広がる効果がほしい。
広げるためにはfacebookページで「シジフォス」を延々とやる…。


「ねっ、ばかばかしいでしょう」と、僕は言いたかったわけである。
自分のウォールでのつぶやきは、種類も中身も無限だから、
続けること自体は、それほど難しくはない。


しかし、facebookページで商品を語るとなったら、話は別だ。
お客をあきさせないためには「語る技術」が必要となろう。
少ないファンをつなぎとめるために、そこまでやりますか?


「商品を広めたいなら、やはりマスメディアですよ」
僕はMさんに断言した。
中でも推奨したのは、雑誌やムック(雑誌風の書籍)である。
iPhoneを買うような人は、関連の本や雑誌もよく買う。
グッズの本とか、iPhone・アンドロイドのムックが最適だ。


■「人に印象を残す」点で優れているfacebook

このようなブログを書くと
「何だ、facebookはビジネスに使えないの」と早合点する人がいる。
だから「全否定ではない」と、これも説明しなければならない。


facebookは拡散のため(つまり広告=広く告げる)には不向きだ。
だからと言って、ビジネスに使えないわけではない
やはり、長所はあるのである!!


最大の長所は、「人に印象を残す」ということだ。


例えば、雑誌やテレビやツイッターで「商品」を知ったとする。
興味ある人は『あっ、いいかも』と思うかもしれない。
が、すぐに店に買いに行ったり、ネットで注文する人は少ない。
何となくそのままにしてしまうことが多いはずだ。


そんな時に、誰かがfacebookで店での体験をつぶやく。
「お店で充電できて助かった!」
こんなつぶやきを目にすると、『あっ、あれか』とピンと来る。
人の「いいよ」という評価は、actionへの踏み台になる。
眠っていた購買意欲が目を覚まし、背中を押されるのだ。


あるいはこの役目、売り込みのご本人が演じることもできる。
つまりMさんだ。
でもウォールで商品紹介したら、まず「いいね!」はつかない。


■自分の行動のすべてがストーリー

単調な商品の「連呼」は最悪の結果を招くだろう。
しかし自分が『これはいい!』と、売り込みたいと思った商品だ。
商売だから命がけで当然である。
信じる気持ち、売り込みに賭ける気持ちがあるだろう。
それをウォールに書いても、決して嫌みではないと僕は思う。


商品を売り込むために、例えば飲食店回りをする。
シェフやオーナーの反応はどうだろうか。
最初は相手にされないかもしれない。
しかし、実演して見せると反応が変わることもある。


飲食店だけでなく、人が待つ美容院や、あるいは書店でもいい。
公立の図書館だって、好いと思えば置いてくれる可能性はある。
人に会い、説得し、話し合う中で、
自分で気づかなかったアイデアが人から聞けるかもしれない。


商談中、居合わせた人が「使わせてくれ」と言ったら…。
思いがけず好反応を得られるかもしれない。
そんなエピソードの一つ一つがつぶやきのネタだと思う。


つぶやきは極論すれば、うまくいってもいかなくてもいい。
開発・販売苦闘物語はプロセスそのものがストーリーだ。
雑誌に「スマホ充電器」のPRが載る。
載ればそれを写真入りでつぶやき、世に出した狙いを語る。
繰り返し、いろいろな形で固有名詞を出していく。


■人の心に商品を”埋め込む”facebook

一つの商品を本気で広めようとするとき「広告」は欠かせない。
マスコミにはやはりマスコミの役割もあるし、効果も威力もある。
一方、人の心に商品を”埋め込む”ためには
ツイッターやfacebookと言った個メディアは、良きツールだ。


もちろん、商品売り込みにホームページは欠かせないだろう。
しかしhtmlファイルのHPは素人には扱いにくい。
月々何万円かのメンテナンス料も個人・零細企業には負担だ。


そこで、HPは半固定化して初期費用のみにとどめ、
柔軟な書き換えが必要な部分はfacebookページで受ける。
Mさんの場合で言えば、メンテナンスやQ&Aなどの部分だ。
もちろん消費者からの「苦情」「意見」なども受け止める。


facebookページのネックは利用者が少ないことだ。
だからここへの動線は多数確保しておく。
自分のウォール、ツィッター、HP、ブログ…。
そして、語り手は常にMさん。


つまり商品売り込みのステージはいろいろあるが、
一本「芯(しん)」を通すなら「Mさん」というブランドである。


■「自分」という人間を刻むソーシャルメディア

短い時間でMさんにどこまで理解してもらえただろうか。
ソーシャルメディアをビジネスに生かそうと思ったら、
僕は「自分ブランドの確立」だと思っている。
「自分」という人間へのファンづくり。
遠回りのようだが、それが王道だ


僕は毎日毎日、朝刊を読んでは何かをつぶやく。
「出版」というターケットには何の関係もない。
しかし、僕と言う人間がどんな男か、何となく分かってはもらえるだろう。


僕がめざす「出版」は著者との共同事業だ。
本に自分の思いを込めたい人も、思うように書けないかもしれない。
そんなときには僕がお手伝いする。


その仕事、無責任に途中で投げ出す人間には頼めないだろう。
大げさに言えば、つぶやきは「僕」と言う個性の表出だし、
「持っているかもしれない能力」の品定めである。
一応はそういう深謀遠慮があってやっている。


人となり、人間性、考え方を見てもらうのはfacebook。
まとまった感想や意見、提言をするならブログ。
ブログの存在を拡散させるのはツイッター。


そんな使い分けを、いつの間にかするようになっている。


◇   ◇

いけない、いけない、最後に自分を引き合いに出したら、
もっともっと説明したくなってしまった。
facebookの活用法については、具体的に書かないと分かりづらい。
近いうちにもう一度、facebookとビジネスについて書いてみたいと思う。
きょうは、このへんで………。



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