「やらせメール事件」あきれるほど愚かな九州電力の最終報告。枝野経産相の怒りに強く共感する | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。



秋の夜長、やらなければならない仕事を山ほど抱えたこの時期、
こんなつまらないことに時間をかけたくないのだが、
怒りがおさまらないのでパソコンに向かった。


例の九州電力の「やらせメール」事件だ。
夜7時のNHKニュースが、枝野経済産業相の怒りの会見を伝えた。
なに、何?なにがあったんだ?


福島原発の際には、結果的に間違った「安全・楽観」談話ばかり出していたから、
僕の枝野評はだいぶ下がっていたのだが、
きょうの会見を聞いて、僕は「さすが一国の大臣だ」と感じいった。


■   ■


九州電力が経産省資源エネルギー庁に提出した最終報告書には、
第三者委員会が指摘した「事件の契機に古川佐賀県知事の発言あり」
明確に記述されていなかった。


社長としての責任についても、
「真部利応社長、松尾新吾会長の役員報酬3カ月全額カット」
としたのみで、「辞任」の選択は毛筋ほどもなかった


こうした九州電力の対応について、枝野大臣は
訪問中の中国広東省広州市で日本人記者団に、
「どういう神経をしているのか、私には理解不能だ」と厳しく批判。


第三者委員会までつくりながら、委員会が認定した事実に触れなかったことについても、
「委員会の報告書のつまみ食いだ」と、怒りをあらわにした。


さらに、真部社長が続投を表明したことについて記者団から聞かれると、
「それ以前の問題だ」と切り捨てた。


■   ■


一連の発言、見事な啖呵(たんか)に聞こえた。
僕も瞬間湯沸かし器みたいなところがあるから、気持がよく分かる。
「いやしくも国家を背負った経産省だ、なめんじゃないぞ」
と言ったところだろう。


枝野さんも大臣就任早々、
「安全性を確認したら、順次、原発稼働を再開させる」などと、経済界寄りの発言をして
「与(くみ)しやすし」と思われたきらいなきにしもあらずだったが、
これで「言うべきときには言う男」だということを証明した。


それにしても九州電力と言う会社、トンチンカンだ
社長の真部氏は、一度は辞意を表明しているのである。
それを、きょうの社長会見によれば、
「辞任届を提出していたが、臨時取締役会は受理しなかった。
多難な道のりだが、課題解決に全力で取り組みたい」
と、人ごとである。
確固たる信念があれば、役員会が何を言おうが辞めたはずだ。
「責任」の名を借りた未練であり、保身であると断じざるを得ない。


逆説的な言い方をすれば、
原発を真に再稼働させたい人たちにとっては、
「九州電力さん、ここは社長のクビを差し出してちょうだいな。
そうすれば世論も納得して、原発再開へ流れができる」
と言いたいところだったのではないか。
それを九州電力は台無しにした。


『空気を読めない九電の役員どものおかげで、計画が大狂いだ』
と、怒り嘆いているに違いない。
お気の毒さまである。


■   ■


攻める側、守る側のそんな呼吸が見え見えだから、余計に腹が立つ。
やらせメール事件や、国主催の県民説明番組で九電社員を一般人の振りさせて発言させるなど、
電力会社のやり方は終始一貫、国民をなめきっていた
原発立地の際の札びら作戦も、今は誰もが知る事実だからこれ以上触れないが、
彼らはまるで「神」であるかのようにふるまい、地域独占をほしいままにしてきた。


しかし、この様だ
「未曾有の津波によって」などと言って誤魔化しているが、
震度6の地震によって(これは想定内の震度である)
原発はいともたやすく、壊滅的な内部構造の崩壊をきたしてしまったではないか。
「安全神話」など、チャンチャラおかしい


地に墜ちて、なおこの強弁だから世間は怒るのだ。
福島原発事故の場合、結果責任を負うだけでも「役員総退陣」が相当だった。
世間に顔向けできない結果を招いたのだ。
それが、地域社会の普通のルールであり、感覚であろう。


しかし東電は、今の今まで病気によって清水社長が辞任したのみ。
あれほど迷惑をかけ通していても、幹部が地域や避難所を行脚しておわびすることもしない。
さまざまな被害補償について、今や「値切る側」に回っているのだ。


まことにキッカイ至極な状況と言わなければならない。


■   ■


こうしたボタンの掛け違いは、すべて、出処進退のまずさから来ている。
所管の大臣に言われて辞めるなどということは、恥の上塗りである。
上塗りではあるが、会社として愚かな選択をしてしまったのだから仕方ない。


即刻、真部社長は「自分の意思」で辞表を提出すべきだ。
そして九州電力は、報告書をいったん取り下げ、
第三者委員会報告の苦言を読み返して、ウソ偽りのない、天に恥じない報告書
もう一度、エネ庁に提出しなければならない。


子どもを叱るような、こんなノートを書かなければならないとは、
電力会社のエリート社員たちはどこで勉強してきたのか、と思う。
「名こそ惜しけれ」の精神を血肉にしていれば、
こんな無様なことにはならなかったはずだ。




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