中国全土をおおった大規模反日デモから1年たった。当局の懸命の再発防止策によって、主舞台となった北京市や上海市などはその後、平静を保ち、日中の経済関係にも大きな影響は出ていない。しかし、政府関係は相変わらず険悪な状態が続いており、前途はそう楽観できない。
歴史問題から領土・領海、台湾問題など、今や日中摩擦は複雑、多岐にわたり、ただ「友好」を唱えていれば済まされる時代ではない。時には丁々発止のやり取りも避けられない。それだけにお互いの立場、見解の相違を話し合いで解決することが何より重要になる。
反日デモにおける民衆の度重なる破壊行為はこの大原則への重大な挑戦だ。中国側には改めて破壊行為の謝罪と、被害を受けた日本の政府施設や店舗などの修復、補償を早期に完了してもらいたい。
一連の反日デモは、まるで怒とうのようだった。昨年3月後半、アナン国連事務総長が「新常任理事国の一つは日本」と発言した直後から、中国内で反対運動や日本製品の不買運動が始まった。4月2日に四川省成都でデモが始まり、北京では参加者が1万人に膨れあがり、一部が日本大使館や日本料理店への投石、破壊を繰り返した。日本政府の抗議にもかかわらず、16日には上海で2万人規模の参加者が集まり、日本総領事館への投石は3時間に及んだ。
上海デモ以降、中国政府は再発防止に全力をあげ、各都市は平静を取り戻している。昨年の日中貿易や日本企業の対中直接投資も2ケタ台で伸びており、政治関係の悪化が経済に悪影響を及ぼすところまでいっていないのは、不幸中の幸いだ。
日中政府間では靖国神社参拝問題などで今も非難の応酬が続いているが、そろそろ双方が安定した関係の再構築に動く時だ。中国は事件を謝罪し、上海総領事館の修復や日本料理店への補償を急ぐべきだ。同時に暴力に訴える抗議行動を断固許さないとの原則を明示してもらいたい。
中国政府は日本に関する教育、報道が過去の侵略戦争に偏しているのを改め、昨年後半から戦後日本の紹介に力を入れ始めたという。現に日本のテレビドラマの放映を増やしたり、反日を売り物としていたタブロイド紙の内容が穏健化するなどの変化が感じられるようになった。
日本も呼応して文化、観光などの民間交流を拡大し、現在の日本を中国国民に知らせるよう努めるべきだ。日本の首相がA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社に参拝すべきでないことは繰り返すまでもない。
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