前回まではこちら⬇️
天下を競望せず…
わしは吉川元春(きっかわもとはる)の三男、広家(ひろいえ)です。
天文19年(1550年)、吉川興経(きっかわおきつね)は隠居し、安芸深川に妻子と共に幽閉された。
![コアラ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/163.png)
興経の隠居により、吉川家は元春が継ぐことになったのだ。
元春は元就(もとなり)に興経との面談を願い出た。
元春「父上、わしは吉川家を継ぐなら、興経殿と話しとおごさいます。」
元就「興経はわしを恨んでおるぞ。わしへの罵詈雑言しかないぞ。」
元春「それでも、わしは会いとおごさいます。それが吉川家を継ぐものの宿命と存じます。」
元就「…わかった。会ってこい。」
元春は興経の居る館に行き、興経と会った。
興経は暗い一室にいた。
元春「元春にございます。」
興経「……。」
元春「此度、吉川家を相続することになりました。」
興経「…相続?乗っ取りであろうが!家臣どもが騒ぎ立てたが、これは元就の謀であろうが!」
興経は声を荒げ立てた。
興経「わしは吉川家を守らなねばならぬ当主なのだ。吉川家は鬼吉川(おにきっかわ)の異名を取った武門の家。それを毛利ごときに…。」
元春「鬼吉川と言われる家がなぜ裏切りを繰り返すのだ?鬼吉川とは強さの象徴ではなのか?」
![コアラ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/163.png)
元春は冷静に声を上げた。
興経「強さ…強さだけでは、家を守れぬ。それは元就も痛いほど知っているはずだ。」
元春「わしは吉川家を継ぐ以上、家を強くし、信頼関係を大切にしていく所存。」
興経「……そなたがどうするのか、ここから見せてもらうぞ。」
元春「見ておれ!」
元春と興経のやり取りを元就の忍び、世鬼政時(せきまさとき)が密かに見ていた。
元春は館を出て、
元春「…政時、父上の命か?」
政時はドキリとした。
政時「…よくぞ、私が見ていることを知っておりましたか…」
元春「父上のことだ。興経の見張りは四六時中いることはわかっておった。」
政時「まだ興経は信用なりませぬからな。」
元春「父上は興経を亡き者にするつもりだな?」
政時「…私にはわかりませぬ。私は大殿(元就のこと)の命に従うまでです。」
元春は大きな息をついた。
元春『これでは恨みしか残らぬ…』
その後、興経の動きに目立ったものはなかったが、密かに元就の謀は動いていたのだ…
つづく…
にほんブログ村
![コアラ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/163.png)