諸行無常の世の中…
我は北条泰時(ほうじょうやすとき)が妹、竹子(たけこ)です。
1230年2月、泰時の元へ実母の光(ひかり)が訪れました。
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光「京の時氏(ときうじ)を鎌倉に呼び戻すとか…?」
泰時「はい、新たに武家の決まり事を作るのに時氏の力も必要なのです。それに私の後継ぎとして鎌倉で経験を積ませねばなりませぬゆえ。」
光「泰時殿も、後継ぎを決めねばならぬ歳になりましたか……私も歳を取るはずですね。」
光はにこりと笑みを見せました。
泰時「母上、どこかお具合は悪いのですか?」
光「そうではありません。しかし、私も忍びをできる歳ではなくなりました。そこで……入りなさい。」
光の呼びかけに1人の女性が入ってきました。
泰時「こちらは?」
光「私が育てた忍びです。名を風(ふう)といいます。私に変わり、泰時殿に新たに仕える忍びですよ。」
風「お初にお目にかかります。風でございます。」
泰時「風…」
光「足が風(かぜ)のように早いから風と名付けました。風とは京で知り合いました。此度も京から先ほど戻ってきたばかりです。」
風「京では時氏様の働きを影ながら見ておりました。」
泰時「時氏の働きはどうであった?」
風「見事なものでした。尊長(そんちょう)を捕らえた時は周りの動揺を抑え、事を済ませていました。」
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風「ただ…気になることがございます。」
光「時氏のことか?」
風「はい、西国での訴えや飢饉を防ぐために寝る間も惜しんで働いていたのです…身体を壊さねばよいのですが…」
泰時は風の言うことに一抹の不安を感じたのです。
4月、泰時の不安は現実のものとなったのです。
北条家の家令・尾藤景綱(びとうかげつな)が慌てて泰時の館に入ってきました。
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景綱「泰時様ぁ〜!!」
泰時「いかがした、そんなに慌てて。」
景綱「時氏様が!時氏様が鎌倉に向かっている道中で、倒れたのです!」
泰時「何!?」
時氏は鎌倉への帰路の途中、宮路山(みやじやま)辺りで倒れたのです。
泰時は新たな忍び、風を医師とともに、すぐさま時氏の元へ行かせたのです…。
つづく…
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