世は群雄割拠の戦国時代。
わしは北条氏康(ほうじょううじやす)です。
1527年、我が北条氏を囲む包囲網は一角が崩れかかっていました。
父・氏綱(うじつな)はそれを忍びの小太郎(こたろう)に調べさせていたのです。
小太郎「停戦した房総半島の真里谷氏(まりやつし)、里見氏(さとみし)は内輪揉めの目があります。」
氏綱「なるほど。いずれ崩れる可能性があるわけだな。よし、房総半島の諸侯から目を離すな。それと元凶の扇谷上杉家(おうぎがやつうえすぎけ)からもな。」
房総半島の諸侯は小弓公方(おゆみくぼう)の足利氏(あしかがし)もいたけど氏綱さんは和睦していたんだよ。
その頃、わし(伊豆千代丸(いずちよまる))は勝千代(かつちよ)と武術の鍛錬をしたり禅を学んだりと切磋琢磨していました。
わしと勝千代は臣下の関係でありながら、兄弟のような関係にも回りからは見えていたようです。
そんなある日、禅を組みに寺に行ったところ、先に禅を組んでいるものがいました。
伊豆千代丸「そなたは…光(こう)ではないか!」
勝千代「光姫様!」
光ちゃんは伊豆千代丸ちゃんの1つ年下の妹なんだよ。あっ、名前は創作だからね。
光「私も兄上らと一緒に禅を学びたいの。だから先に来て待っていたのよ。」
伊豆千代丸「お前はすぐ、わしと同じことをしたがるの。なぁ勝千代…ん?」
勝千代「……あっ、はい。そうですね。」
勝千代の顔はほんのり赤くなっていました。
伊豆千代丸「勝千代、顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」
勝千代「いえ…、なんでもありませぬ。」
光「さあっ、2人とも禅を組みましょう。」
勝千代は光に惚れていたようでした。
わしにはまだわかりませんでしたがわしの守役の清水吉政(しみずよしまさ)は見抜いていたようでそれを氏綱に報告したのです。
氏綱「そうか、イノシシに襲われて以来、伊豆千代丸も変わってきたか。」
清水「勝千代の存在が大きいと思います。」
氏綱「しかし勝千代が光に惚れているとは、これはいずれ夫婦にしようかの〜。はっははは〜。」
清水「勝千代ならば似合いの夫婦になりまする。」
夫婦になるのはまだ後のことなんだけどね。
1528年、わしと勝千代、他の小姓らと共に箱根の箱根権現(はこねごんげん)に行きました。
箱根権現は鎌倉の鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)に次いで関東の武士の信仰を集めていたんだよ。
そこである人物がわしらを待っていたのです。
それは北条長綱(ほうじょうながつな)、後の幻庵(げんあん)でした…。
つづく…
次回をお楽しみに〜