お手軽な生麩糊の作り方と作品の裏打ち(1) | ある木版画家の気まぐれ日記

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木版画家・吉田秀司のブログです。
板目木版と木口木版の2つの技法で作品を制作しています。
作品の話以外にも、たまに好きな映画のことも書いています。
取り扱い画廊 養清堂画廊(銀座)

今日は木口木版の仕上げ作業『裏打ち』について書こうと思います。

一般的に木口木版は雁皮という非常に薄い和紙に刷ります。どれくらい薄いかと言うと…

これくらい薄いです!
そばを歩いただけで吹き飛ぶ程の薄さです。


このままでは保存も展示も出来ませんので、もう少し厚めの紙に張り込む作業が必要になります。


さて、張り込む為にどんな糊を使うのか?
スティック糊を使う作家さんが多いのですが、ぼくは生麩糊(しょうふのり)を使います。

生麩糊というのは、小麦粉からタンパク質を除去した生麩粉を水で煮て作った糊のことです。
何故タンパク質を除去するのかというと、それがカビの餌になるからです。タンパク質が無ければカビが生えにくいという事ですね。

普通は鍋で煮て作るのですが、木口木版の場合は作品が小さいので鍋で作る程大量には必要ありません。
そこで、ぼくは電子レンジを使って作っていますので、まずはその方法をご紹介します。


1)糊を作る前日に生麩粉1 : 水5の割合で混ぜて寝かせておきます。こうした方が糊の接着力が強くなるそうです。
出来るだけカビが生えないようにする為に、一応器や道具類はアルコール除菌スプレーやウエットティッシュの除菌タイプなどで拭いてから使っています。



2)翌日になると粉が、下に沈殿していますのでよ〜く混ぜます。


3)器にラップを掛けて、電子レンジで30秒加熱します。


4)加熱が終わったら、ダマが出来ないように良く混ぜます。
今度は20秒加熱してから取り出し、また良く混ぜます。この作業を数回繰り返します。ラップは途中から外して水分が飛ぶようにします。

電子レンジのワット数は製品によって違いますので、加熱時間や回数は糊の状態を見ながら調節します。



5)良さげな状態になったら、濡れ布巾に乗せて1時間程冷まします。
「良さげな状態ってどれくらいだ?」って思われるでしょうが、これは経験なので説明しづらいですが、下の写真くらいの粘性になれば大丈夫です。


このまま続けると、ものすご〜く説明が長くなりますので続きは次回に…