今は園長先生になっています。
不思議と同じ場所で、ばったり会います。
「お母さん、どうかされたの?ちっとも会わないし…」
母の友人からも、鍵がかかっているし電話も出ないし心配だと言われているそうです。
ペラペラとおしゃべりするような先生ではないので母の状況や私が実家にいること、在宅医療を受けている事や弟が帰国して一緒に母のそばにいる事などを話しました。
母がどれほど弟を可愛がっていたかは幼稚園の先生が一番良くご存知です。
「そうなのね。年を取れば誰でもそうなるのよ。皆でいるのね。素晴らしいわ。偉いわ。」そう言って私の肩をさすってくれました。
昨日は2回、母と口論(?)まではいきませんがムカ!っとした事がありました。
午前中の仕事を終えて下に行くと、私を呼んでいました。
「なぁに?」と聞くと「どこに行ってたの?ずっと呼んでも来ないじゃない。」
「仕事だって言ったよ」
「木曜日は仕事無いんでしょ。」
「ある時だってあるよ。仕事だから上に行くって言ったよ。」
「仕事、仕事ってさ」
「だからなに?何かあったの?」
「寂しいじゃない。誰もいなくて。」
「いるじゃない。仕事じゃなくたって私はテレビを見てダラダラ過ごせないよ。」
以前なら強く言い返していましたが、極力声のトーンを下げて話しました。
母は黙っていましたが、言い過ぎたかな?と思いました。
一人でベッドにいるのも退屈だろうし、トイレに行っても誰もいないところを歩いているし二階も静か。
いるんだかいないんだかわからないのが寂しいのでしょう。
おしゃべりしたいわけでは無くて「気配」を感じていたいようです。
買い物に出るので、母のところに行くと何事も無かったように「行ってらっしゃい」と見送っていました。
買い物から帰って来てからは二階に行かず「下にいるからね。下で仕事してるから。」パソコンを持って来て事務仕事をしていました。
「うん、安心」母はそう言ってました。
夕方からはケアマネージャーさんや介護レンタル業者の方が来て、浴槽内で使う椅子や脱衣所の手すりを持って来てくれたり浴室の手すり工事のお話を聞きました。
母がトイレから出てきてベッドには行かず昇降座椅子に座っていました。
かなり長い時間座っていました。
母は長時間座っていると足が痺れると言っているので「長いな」と見ていました。
用事が済んで「ベッド行く」と言うので私も一緒に後ろをついて行きました。
部屋に入るときに足がふらついて転びそうになりました。
テレビに捕まり転倒は防げましたが顔を軽くぶつけていました。
大した事なくてベッドに入りましたが
「看護師さんは上手に支えてくれる。あなたは何もしないで見てるだけよね。看護師さんがお風呂に入れてくれた時は後ろから支えてくれたよ。看護師さんは…」
「私、看護師さんじゃないから。看護師さんみたいに出来ないよ。教わってないし。ヘルパーさんでもないから。出来ない事を専門の方にお願いするんでしょう?」
ちゃんと見てなかった罪悪感もあり、先日も足湯に入る際に取っ手をつかみ損ねて転んでいました。
私はそばにいたのですが一瞬後ろを向いてパジャマを整えていました。
弟もたまたまトイレに行ってました。
弟がすぐに来て立ち上げていました。
私は母が転びそうになったり転んだ時にどうしたら良いのかわかりません。
以前に立たせようとして、どうしても出来ずに隣の家の方に助けて頂きました。
母への罪悪感や自分の無力感を母にぶつけてしまいました。
そうは言っても声のトーンは抑えて。
静かに話しました。
私が静かに怒っているので母は私が怒っているとは感じててないようで、ケロリとしています。
怒っちゃって母に悪いことしたかな?と反省したのですが全然気にしないようです。
私も特に腹を立てたわけでもありません。
夜に、弟に「こんな事言われたからこう言ったんだよ」と話すと静かに笑ってました。
弟のこの「暖簾に腕押し感」がいまの私にはありがたいのです。
昼も夕方も母の言葉にカチンと来たのではなくて
、母にずっと付き添えない自分。母を支えられない自分に「なにやってるんだろう」と感じたのです。
陽だまりのしっぽ 美香