~ブラッドピットのゾンビ諸国漫遊記!!
果たして人類に明日はあるのか!?~
いつから始まったのか分からんが、ゾンビ映画ブームである。
あのスティーブンセガールまでもゾンビを刀でぶった切り、素手で倒す「斬撃~ZANGEKI~」という映画を撮る時代。
かつて俺がビデオレンタルコーナーの端っこでゾンビ映画を借りまくった時代を考えれば、「いい時代になったなぁ・・・」などと遠い目になってしまう。
「低予算!グロ!!サバイバル!!!ついでにおっぱい!!!」があればお釣りが来るとか思ってましたからね。
まさかサスペンス、アクション、ラブストーリー、コメディ、セガールなど、どのジャンルにゾンビを投入しても作品として成り立つとは・・・。
ゾンビ映画が市民権を得るとは夢にも思ってなかったわけですよ。
いうなれば薄汚い店で、長距離のトラック運転手やらネクタイが緩んだおっさんが暗い表情で「はやい!安い!!うまい!!!」を求めて食べてた牛丼が、今では小奇麗な店でチェーン展開して老若男女問わず24時間食べれるようになった歴史を俺に感じさせた。
そんな風に俺がボンヤリしている間に、大予算をかけたゾンビ映画が遂に誕生した!
去年だけど!!
その名も「ワールドウォーZ」。
そして、製作・主演はブラッドピット!
ゾンビ映画に大予算をかけるとは、中々決断できるものではないわけだが、
そこはブラッドピット。
なんと2億ドルもの予算をかけてゾンビ映画を製作。
ジョリ姐を妻に持つ男にしか出来ない決断としか言いようがない 。
まさにハリウッドが放つ全力の牛丼!!
で、最近DVDを鑑賞したわけだが、何というか牛丼頼んだと思ったら牛すき鍋がきた、みたいな印象を俺に与えたのだった。
いい加減、牛丼の話は置いとくとして。
公開当時、「ゾンビを隠した宣伝問題」が賛否両論を呼んだわけだが、今考えれば無理もない。
ゾンビといえば人を食う模写がこってり描かれるわけだが、このワールドウォーZに関しては、そうした模写はない。
作中、ゾンビと呼ばれる人たちが、江頭2:50のように奇怪な動きを見せてから、元旦の福男選びの如く走り、大木金太郎ばりの原爆頭突きやら、ビルゴールドバーグばりのタックルを人や車問わずに仕掛ける という、プロレスラーのような症状を見せる。
しかし、書いていて思ったが、ある意味ゾンビよりも怖いと言えなくもないな!!
というわけであらすじ。
元国連職員のジェリーは家族とともに平和な日常を過ごしていた。
朝からパンケーキを焼き、そろそろ子犬でも飼うか~などと絵にかいたような良いパパっぷりを披露。
嫁さんと娘2人を学校まで送迎していると交通渋滞に巻き込まれ、ダークナイトのバットマンばりにすり抜けしてきた白バイに車のサイドミラーを破壊される 。
ただならぬ雰囲気を感じたジェリーを横目に車を放棄して逃げ惑う人々。
そこには人々を猛烈なタックルやら頭突きで襲うゾンビたちの大運動会 が繰り広げられていた。
猛烈な勢いで車に頭突きをかますゾンビから、命からがら逃げるジェリーと家族たち。
逃げる途中、長女が喘息の発作を起こし、薬をゲットするためショッピングセンターへ向かうと、人間同士の略奪行為が行われ、無法状態となっている光景を目の当たりにするのだった。
すったもんだの挙句、意味ありげに登場する銃を片手に持った、やたら顔色の悪い不審なニィちゃん(以後登場なし)から親切に薬をゲットしたジェリーは、ボロいアパートへ逃げ込み、かつてのコネで政府のヘリコプター救助を待つ。
ラジオをつけると、どうやら世界中で狂暴化した人々がタックルやら頭突きをかます、プロレスゾンビウィルスが蔓延しているらしい。
一夜明け、ついにボロイアパートにもゾンビが押し寄せたものの、政府の救助ヘリに間一髪救助された一家+ガキ1人は、安全な空母へ向かう。
しかし、「タダメシは食わせん!!」という軍のお偉方の意見により、ジェリーは家族を置いてウィルスの原因と対策を探るミッションへの参加を余儀なくされるのだった。
どうやら最初にゾンビが現れたのは韓国らしい。
この情報を頼りに、ハーバード大出身のウィルス学者(天パ)、コマンドー冒頭の護衛のような数名という、どう考えても全滅しそうなチームと韓国の軍事基地へ向かうジェリー。
「そんな奴らで大丈夫か?」という俺の感想とは裏腹に、よりにもよって夜、豪雨という最悪なタイミングで基地に到着する。
慎重に降り立つ調査チームだったが、案の定、闇に紛れて襲い掛かるゾンビたちが襲い掛かる。(タックルで!!)
しかし、さっきまでドヤ顔でウンチクを披露していた科学者がパニックを起こし、足を滑らせ、自分の頭を打ちぬき死亡するのだった。
呆然とするジェリー。
一番呆然としたのは映画を見ている人だったろう。
なんやかんや韓国の米軍も援軍に駆けつけ、何とかゾンビを蹴散らす一行。
「何があった?」と問われ、ジェリーが一言。
「滑って転んで死んだ。」
おそらく、このシーンはワールドウォーZ最大の衝撃シーンだ。
コマンドーの「あれは嘘だ」に匹敵する破壊力。
俺はわざわざ巻き戻しして繰り返して見たのだが、何度見ても質の悪いギャグにしかみえない。
そんな馬鹿な尊い犠牲をしり目に、いざ、報告にあった最初のゾンビを確認する一行。
しかし、ゾンビはバーベキューの炭のようにされ、あまつさえ科学者も滑って転んで死んだため、どうするべ・・・と途方に暮れるジェリーだった。
だが、ここで意味ありげに登場した、牢屋に囚われた元CIAのオッサン(以後登場なし)から「イスラエルは高い壁を築いてゾンビの襲撃を防いでいる。」という情報を得る。
とりあえずイスラエルへ向かう決意をするジェリーたちだが、基地の外にはゾンビがうようよいる。
そして音を出せば奴らは一気に群がってくる。
すると、司令官は基地の奥からチャリンコを引っ張り出して、勇ましく一言。
「俺たちは、このチャリで飛行機を飛ばす!!」
マジかよ!?と俺も我が耳を疑ったが、マジだった。
豪雨の中、プロジェクトAばりにジェリーと軍人がチャリンコで激走するのだった。
このヤケクソに近い作戦を押し通す説得力は男なら是非明日から真似したい姿勢だ。
途中、ジェリーの携帯が鳴ったおかげで司令官を含め多大な犠牲者を出すものの、何とか飛行機に乗り込みイスラエルへ向かうジェリー。
わざわざ電話を掛けなおして「さっきは出れなくてごめん」とか言うのだが、携帯は切っとけよ!というか死んだ奴らに謝れ!! と言いたくなるシーンだ。
これは明日から真似しないようにしましょう。
なんやかんやでイスラエルに着いたジェリー。
元CIAのおっさんの言うとおり、高い壁のおかげでイスラエルは平和を謳歌していた。
不祥事を起こした峰岸みなみのような坊主女兵士の案内のもと、イスラエルのお偉方と会見するジェリーだったが、調子に乗った住民たちが合唱を始める。
しかし、それは間違いだった。
住民の歌声に刺激されたゾンビは遂に壁を超え、年末福男選びのように雪崩混み、イスラエルの街をあっという間に蹂躙する。
99年のウッドストックにおけるレッドホットチリペッパーズの観客が起こした暴動ばりに車やらバスをひっくり返すゾンビたち。
マクロスなんかでは歌が戦争を終結させるが、こちらでは歌が戦況を悪化させている。
途中、女坊主兵士が噛まれるものの、とっさに鉈で手首を切り落とすというファインプレーを見せたジェリーは巻いていたおしゃれなスカーフで止血し、空港へ向かうが、ビビったパイロットが電撃離脱。
ジャンボジェット機に強引に乗り込み、ジェリーが思いついた、ある仮説を証明する為にイギリスのWHOの保健機関へ向かうのだった。
この時、女坊主兵士へ応急処置を施し、あまりの激痛に泣きわめくのだが、隣に座っていた渡辺謙似のおっさんは手伝いもせずに、その後寝ていた。
おそらく死ぬほど疲れていたのだろう。
しかし、安全と思われていた機内にて急にチワワが吠えだす。
その先には、いつの間にか紛れ込んでいたゾンビの姿が・・・
果たしてジェリーは無事にイギリスにたどり着くのか、そして人類の未来はどうなってしまうのか!?
この後、爺やの目を盗んで城を出ようとするバカ殿のコントのような潜入ミッション、ジェリーのカイジばりのあみだくじウィルス注射、どや顔ペプシ などを披露するのだが、そこらへんは是非自分の目で確かめていただきたい。
というわけで、ゾンビ映画か?と言われれば「さあ・・・」としか言いようがない本作。
だが、ゾンビの大運動会、ジェリーの土壇場での逆境無頼、意味ありげに登場して、その後登場しないキャラに見られる伏線の投げっぱなしジャーマンスープレックス、そして科学者の滑って死ぬシーン、決死のヤケクソチャリ激走 だけでもお釣りが来る映画である。
この「冗談のように人が死ぬ」、「ヤケクソ」、「真面目にバカをやる」 という3拍子はコマンドーを彷彿とさせる。
続編も検討されている「ワールドウォーZ」だが、ちょいちょいコマンドー的な絵面が挿入されるもんで、「シュワルツェネッガーが続編に出ないかしら・・・」 などと思っていたら、なんと来年にはシュワルツェネッガー主演のゾンビ映画「magie」が公開されるという。
ストーリーはゾンビに噛まれた娘を救うために奔走する父親役らしい。
・・・というか、あらすじだけ聞くとコマンドーじゃねえか!!
是非、「ゾンビコマンドー」、「ワールドウォーS(シュワルツェネッガー)」 など景気の良い邦題、キャッチコピーをつけて欲しいもんである。
とにかくゾンビの快進撃は、まだまだ留まる気配はないようだ。
ゾンビとは消費社会のメタファーとよく言われるが、かくいう俺も増税で欲しいものを買えず、ゾンビのような顔をして日々生活している昨今。
俺も社会のゾンビなら明日から気合が必要だな!!とりあえず頭突きするとかタックルするとか!!と思わせてくれる、明日から真似したくなる漢の映画である。