「要するに
日本料理の名手たらんとする者は、
天然固有の『味』を天分の舌に
認識して、
それを如何に生かすかに
苦心する者であらねばならん。
日本料理は西洋料理の鍋の中で
ゴッタ返す手腕が物をいうのではない。
食品材料の良否を
弁別する事を第一とする。
それが出来得る力こそ、
日本料理の根本を知る者だ。
しかも、その上、
美術鑑賞の可能要素が要る。
それというのは、
よき料理になればなるほど、
料理に関連する食器その他が
美術価値を高めてくるからだ。
日本料理は観る料理ではなくて
観るに足る料理となるわけだ。
暗室で食う料理ではない限り、
盲人の食う料理でない限り、
美を離れて存在する
よき料理というものはないはずだ。」
北大路魯山人(昭和10年)