評価方法についても、多くの方法が考えられる。健常者で用いられるスポーツの評価を当然用いることは可能である。また、リハビリテーション体育独自の評価方法も存在するが統一されたものが少ないのが現状である。一方、理学療法や作業療法の評価に用いるMMTなど、他職種で使用される評価方法の使用も対象者を把握する上でかかせない。今後リハビリテーション体育を確立していく上でも統一した評価方法の確立は大きな課題といえる。ただし、評価は、あくまでリハビリテーション体育の効果を客観的に示すための指標であり、評価のための訓練等にならないように注意しなければならない。


リハビリテーション体育に携わる者の多くは、現場で経験を積みながらリハビリテーション体育の専門家としてその理論と実践を構築している。平成13年に日本リハビリテーション体育士会が発足し、リハビリテーション体育に携わる者のつながりを強化するとともに、その資質の向上と将来的には専門職としての地位確立に向けて動きだしたところである。リハビリテーション体育に携わる専門職の養成校は、現状では国立身体障害者リハビリテーション学院リハビリテーション体育学科1校のみであるが、毎年卒業生を全国各地に送りだしており、徐々にではあるが各地域で活躍の声が聞かれるようになってきている。


健康増進や保健だけでなく、病気や外傷の回復、運動障害の治療としておこなわれてきた運動は、既にギリシャ時代からおこなわれていたが、近代(19世紀初期)に入り、ティソットやリングこれら各種の運動を集大成し、体系化した治療的な体操を確立した。この治療体操の流れは、20世紀初頭に大きく次の二つに分かれた。


リハビリテーション体育が実践される場面には、リハビリテーション病院・各種社会福祉施設・スポーツ施設・地域・個人生活の場所等、さまざまな場所で、さまざまな目的を持った取り組みがある。病院や施設などでは、運動学や神経学的な観点にたって、体育・スポーツの特性を用いて治療・訓練として基本的な身体づくりをめざして行われている。また、スポーツ施設や地域社会などでは、スポーツすること自体を楽しむため、あるいは健康づくりのために行われている。


さまざまな領域でさまざまな取り組みがあるとはいえ、それがまったくかけ離れて存在するのではなく、医学的な配慮を多く必要とする段階から徐々にその必要がなくなっていくという障害者の総合的なリハビリテーションの連続的な流れの中で理解する必要がある。


中途の肢体不自由者の場合について、これらの関係とそれぞれのリハビリテーションの流れにおける内容を一例として表1に示してみた。表の縦軸は上から下に向けて受傷後の時間的経過、および医学的は配慮のウエイトを示している。対象者のリハビリテーションの段階に応じて、リハビリテーション体育の関わりも変化していることが理解できるであろう。リハビリテーション体育に関わる者は、体育・スポーツの持つ特性を理解し、対象者の目的に応じて柔軟に処方できる力が必要となる。


心筋梗塞や狭心症(きょうしんしょう)の治療を病院で受けた後は、心臓や体の機能を回復して、再発を予防するために、「心臓リハビリテーション」を行います。心臓リハビリテーションとは、運動療法や食事療法、禁煙などの生活面や精神面などを多方面からサポートするものです。社会や職場に復帰し、さらに心臓病の再発を予防し、快適で質の良い生活をすることを目指します。

 

冠動脈バイパス術を受けた方は、冠動脈インターベンションを受けた方よりもリハビリ期間は長くなります。どちらも、医療スタッフや栄養士、健康運動指導士など様々な人からのサポートを受けて、体力の回復をしていきます。病院のリハビリで体を少しずつ動かして、退院できるまでに回復しても、それでリハビリが終わりというわけではありません。退院後も、再発防止のために通院や自宅で運動や食事など生活習慣に注意して、リハビリを続けていく必要があります。

 

退院後は、3ヶ月間、通院によりリハビリを行います。回数はだいたい週1~3回ぐらいで、体操や自転車こぎ運動をします。通院によるリハビリに来ない日には、自宅で運動療法を行っていきます。