Vanilla Ice 番外編 ~約束~ #1 | UNION Hey! Say! JUMP×妄想小説

UNION Hey! Say! JUMP×妄想小説

JUMPくんに癒されている毎日です。
9人が好き!大ちゃんが好き!!
いのありコンビも好きなNatsukiが
JUMPくんの妄想小説を書いています。
登場人物は実在の方とは一切関係ありません。
ご理解いただけた方のみご覧ください。

-少し休憩にしまーす。-


スタッフさんのこの声でステージに立ってた俺はタオルをひっかけ楽屋に戻った。


汗を拭きながら楽屋に置いてた携帯を手に取り、関係者専用扉から外に出る。



外に出た俺を迎えてくれたのは満月から少し過ぎた月明り。


その月を見て愛しい人を想う。



「莉夏さん、・・・。」



-銀河にきらめいてるあの月のようにずっとそばにいて-



自分たちの曲のあるフレーズが浮かぶ。


そして次に浮かんだのはこの前、抱きしめたまま莉夏さんに言った言葉。



「莉夏さんにも約束してほしいんだ。あの月のように俺のそばにずっといるって。」



この言葉のとおり莉夏さんは俺のそばにいてくれる。


こうやってライブで地方に来ててもあなたを感じる。


月を見ると莉夏さんがすぐ隣にいてくれる感覚になるんだ。




月明りの下、周囲を見回すとちょうどいい場所が目についた。


ライブの機材や衣装なんかを運ぶ大きなトラック。



行儀よく並んでる数台のトラック。


出入口からじゃ見えない一番奥に停まってるトラックの荷台にもたれ、きっと今頃店の片づけをしてるだろう莉夏さんの番号をタップする。




・・・、RRR、・・・、


・・・、RRR、・・・、



『・・・、大ちゃん?』


「こんばんは、って言うかお疲れさまって言った方がいいのかな?店の片づけしてたんでしょ?」


『うん。』


空に浮かぶ月を見ながら愛しい人の声を聞く。


『大ちゃんは?リハーサル、まだ終わってないんでしょ?』


「さっきまでうちのエースと並んで歌ってたよ。で、今は休憩中。」



満月より少し欠けた明るいが俺を照らす。


その月を見ながら莉夏さんを想う。



「店の片づけで忙しいのは分かるけど、今少しだけ店の外に出られる?」


『え?うん。ちょっと待ってて。』



・・・、カラン、・・・。


携帯の向こうで聞こえる店の扉に付けられた鐘の小さな音。



『きれいね。』


俺が話す前に莉夏さんの声がする。


『月がすごくきれいよ。』


「うん、そうだね。」


『大ちゃん?』


「あはは、・・・、まいったな、莉夏さんには。」


『え?』


笑う俺に莉夏さんの不思議そうな声。


「きれいだね、って俺の方から言いたかったのに。俺もさ、莉夏さんと同じ月を今見てる。」


『・・・、ごめんなさい。』


「はは、・・・、なんで謝るの?」


『だって、・・・、好きな人が言いたかったこと先に言っちゃうなんて可愛げがないもの。』


少し口を尖らせてる莉夏さんの姿が見える。



まったくもう、・・・、莉夏さんったら。


胸の奥がキュンとなる。





大好きだよ。


もうあなたのいない毎日なんて考えられない。


あなたへの想いが体中から溢れ出す。



「俺との約束守ってくれてうれしい。」


『約束?』


「今莉夏さんと俺が見てる月。その月のようにいつも俺のそばにいてくれて。」


『大ちゃん、・・・。』



そう、これ。


俺の名前を呼ぶこの声もずっと聞いていたい。



『そっちは海に近いから冷えない?』


「あ、うん。少しね。」


『体調崩さないように気を付けて。』


「ん。分かってる。」



いつでも、どんなときでも俺を気遣い、優しく見守ってくれる莉夏さん。


ありがとう。



「あ、そうだ。さっきさ、物知りの薮くんに聞いたんだけど、この場所、最近スイーツ作りに力入れてるらしいよ?だからお土産は、・・・、」


『もう、何度言ったら分かってくれるの?何もいらない。』


「でもさ、これまでのツアーじゃなかなか来れない場所に来てるんだよ?せっかく来たのに、莉夏さんに何もなしじゃ、・・・。」



ここ数年、もう何度同じ会話を繰り返してるんだろう?



-何かほしいお土産は?-


-何もいらない。-


ツアーが終わるまでこの言葉の繰り返し。



けど、これなんだよ。


これが幸せってヤツなんだよ。


うん、間違いない。


今の俺は超幸せだ。



自分を包む莉夏さんの優しさと莉夏さんのあったかさ。


莉夏さんを思わせる月を見て全身で幸せを感じながら、そのあとも他愛のない話を続けた。



しばらく話を続けてたらトラックの向こうから人が来るのが見えた。



スタッフさんの誰か?


いや、違う。


あの背格好、あの歩き方、そんで、あの髪の色は、・・・。






『お疲れ~。』


俺の前にムダに陽気に現れたのは光くんだった。



『何?大ちゃん、電話?』



見りゃ分かるだろ?


ニコニコ笑う光くんに心で突っ込む。



『あーっ!莉夏さんだな?』


「ああ、そうだよ。」



ったく相手が莉夏さんだって分かっててワザと聞いてきたな?



『ちょうどよかった。話したかったんだ、久しぶりに莉夏さんと。』


「はぁ?」


『貸して。』


変な声をあげた俺の手から携帯をスッと取り上げた光くん。



『あ、もしもし?莉夏さん?俺です。』


「おい、ちょっと、・・・、」



素早く携帯を取り返そうとしたけど、光くんはさらにその上を行く。


クルっと背を向けてトラックの反対側へ歩き出す。



「おい、光くん。」


『お久しぶりです。え?いつだろう?えっと、・・・、部屋で育ててた観葉植物が元気なくなって、それを見てもらったときだから、・・・、三ヶ月ぶり?』



ウソつけ。


三ヶ月じゃないだろ?


たった一ヶ月だろうが。



仕事終わり、莉夏さんの店に行く俺にくっついて来たのは確か一ヶ月ほど前だったはず。


いくらついて来るのをやめろって言ってもそうしなかっただろ?




『覚えてます?約束?・・・、はい、こっちは全然構いませんから。』



何?


約束?


全然構わない?



『もう、気にしないでください。俺も楽しみにしてますから。』



待て待て。


一体なんの話だ?



「ちょっと、光くん。」


『じゃ、そう言うことでよろしくお願いします。はい、じゃまた。』


俺が携帯を取り返す前に光くんは電話を切り、携帯をポンと俺に投げ返した。



『さて、行きますか。』


おいおい、ちょっと。


『休憩そろそろ終わるよ。早く戻んなきゃ。』


そう言って光くんはたった今自分が歩いて来たところを通ってライブ会場の方へと行ってしまった。



「待てよ!」


こう言ったってもう光くんには聞こえない。



なんだ?


莉夏さんと光くんの約束ってなんなんだよ?


たった今まで超幸せだったのに、その幸せが今少しずつしぼんでくのが分かった。



-あ、有岡さん、こんなところにいたんですか?探したんですよ。-



なんの話だったのか、光くんに聞こうか、莉夏さんに聞こうか、迷ってた俺はスタッフさんの一人に見つかって会場へと連れ戻された。



あの空に浮かぶ月のように俺のそばにいってって俺との約束のほかに何を光くんと約束したの?


会場へ連れ戻される途中、空に浮かぶ月にこう尋ねた。