Vanilla Ice 番外編 ~約束~ #2 | UNION Hey! Say! JUMP×妄想小説

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JUMPくんに癒されている毎日です。
9人が好き!大ちゃんが好き!!
いのありコンビも好きなNatsukiが
JUMPくんの妄想小説を書いています。
登場人物は実在の方とは一切関係ありません。
ご理解いただけた方のみご覧ください。

『ほい、これ。』


楽屋のテーブルにあごを乗っけて携帯をいじっていた俺の前に一枚の紙が差し出された。


『この地域のスイーツの店、まとめといたから。』


あごを乗せたまま視線だけ上へやるとステージ衣装に着替えた薮くんが立っていた。


『一応この会場から近い店をセレクトしといた。』


「あ、ああ、・・・。ありがと。」


『なんだ?その気持ちのこもってない返事は?ま、いいや。大ちゃんにはいつも世話になってるから。』


薮くんはあのクシャっとした笑顔で俺にそう言い楽屋を出て行った。



その後ろ姿がなくなったとき、あきらめムードで店にいるはずの莉夏さんの番号をタップした。



・・・、RRR、・・・、


・・・、RRR,・・・、


・・・、RRR、・・・、



-留守番電話サービスに接続します。-



やっぱり。


何度目かのコール音のあと聞こえてくる無機質な声。


昨日から今日にかけて、もう何度も聞いてるその無機質な声に言いようもない不安がまた俺を襲う。




莉夏さん、何してるの?


昨日は遅かったから出てくれなかったの分かるけど、でもあとで折り返してくれることはできたよね?


今日も花の仕入れとか配達とかで忙しくて直接話すことが無理だったとしてもメールくらいできるよね?



昨日の夜の莉夏さんと光くんの会話。



-覚えてます?約束?-


-こっちは全然かまいませんから。-



一体なんの話だ?


一体何を約束した?



幸せだった俺を不安にさせた言葉。


一体何を莉夏さんと約束したのか、リハーサルが再開されても気になって仕方なかった。


でもやらなきゃならないことはちゃんとやらなきゃなんなくて、当たり前だけどリハーサル中、このことについて光くんと話すことはできなかった。


だったらリハーサルのあと、ホテルの光くんの部屋に押しかけてって聞き出そう。


こう思っていたのにそれができなかった。



光くんは別の仕事でリハーサルが終わったあとすぐ会場をあとにして一晩中ホテルに戻って来なかったんだ。



だったら莉夏さんに聞こう。


当たり前だけどこう思った俺は莉夏さんに電話をかけた。


だけどコール音と無機質な声が聞こえるだけで、愛しい莉夏さんの声は聞こえなかった。


それはもう夜が遅く、花屋の仕事で朝早い莉夏さんは俺の電話に気付いてないんだと思ってた。


だけど、今朝になっても莉夏さんの声は聞けず、莉夏さんからのメールもなかった。



お互い見えないカゲに怯えながら愛し合ったあの夜約束してくれたよね?


これからもずっと俺のそばにいてくれるって。



昨日の夜、光くんとの会話を聞いたあとしぼんでった幸せ。


その幸せは今朝から不安に変わっていき、もうすぐ本番が始まろうとしてるのに、今じゃその不安が俺をすっぽり包み込みそうになっていた。





信じてる。

 

俺は莉夏さんを信じてる。


今朝からずっと自分に言い聞かせてるけど、気持ちが上がることはなく、今こうやって楽屋のテーブルの上にあごを乗せた状態でボンヤリしていた。



『あれ?大ちゃん、まだ着替えないで何やってんの?もうすぐ本番だよ?』


薮くんが出てったあと、次に楽屋に入って来たのはいのちゃんだった。



『早く着替えてステージ下に行かなきゃ。』


「帰って来た?」


『え?』


「光くんだよ。昨日から出てったまんまだだったけど、帰って来た?」


『あ、うん。ついさっきね。いつの間にか衣装に着替えてて、もうステージ下にいるよ。』


「じゃ、無理だな。」


『何が?』


「いや、なんでもない。」



もう無理だ。


当たり前だけど本番が始まってしまうと、話をしてる時間なんかない。



これからは今日来てくれた人たちのため、


今日を楽しみにしてくれてた人たちのために最高のパフォーマンスをしなきゃ。



これでも一応プロなんだ。



莉夏さんと何を約束したのか、光くんに聞きたい気持ち、山々だけど、今からの数時間は来てくれたみんなのための時間。



ぶんぶんと頭を横に振り、急いで衣装に着替えた。


そして不思議そうな顔をしてるいのちゃんと一緒に楽屋を出た。



-盛り上がってこーぜ!-


-元気だせーっ!-


-もっと叫べーっ!-



会場内に鳴り響く大きな音と、俺たちの声と、大勢の人たちの大きな声。

 


歌い、踊り、走り、ジャンプする。


不安が包み込んでるけど、そんなこと顔にも態度にも出さず、メンバーといつものようにステージに立っていた俺。



いつものようにステージに立ってる俺の隣にこの公演で何度目だろう?


光くんがまた俺の腕を取り、メインステージの上手へ走る。



メインステージ。


センターステージ。


エプロンステージ。



どの曲で誰がどのステージに立つか。


どう移動するか。


一応決まってる。


けど、決められてない、自分たちが自由に動ける部分もあって、光くんはその自由に動ける部分で必ず俺の手を引き、または肩を組み、上手へ誘った。



もうさっきから何だって言うんだ?


今夜みたいなことこれまでしてこなかっただろ?



あ、あれか?


光くんの強引な誘い。


何度目かの誘いで俺は気付いた。



”光くん 大好き”


”八乙女 LOVE”



うちわに書かれてる文字が今夜は自分のが多いって見せたいのか?



それとも、あれか?


強引な誘いで今夜何度も同じ場所へ行くからイヤでも目につくあのうちわをまた見せたいのか?



”安定の八乙女 不安定の有岡”


光くんと俺が行くと大きく振られるそのうちわ。



はいはい、もう分かったって。


おっしゃるとおりです。



こっちに向かって振られるうちわに心でこう答え、それでもそれに向かって手を振る。




『大ちゃん、あっち。』


イヤモニが付いてない方の耳に光くんの声。


『あっちに手を振って。』


「は?」


思わず声が出る。



ソロパートが美声の持ち主、薮くんに移ったときでよかったよ。


じゃないと今の声、ぜったいマイクが拾ったはず。




『ほら、何やってんの?あっちだよ。』



俺と肩を組み、ステージの上手、そこから見える上の方へ向かって手を振る光くん。


だからさ、なんだよ?



思いっきり手を振る光くんを横目に俺もまた光くんと同じ方に向かって手をあげた。



・・・、とそのとき、・・・。



「うそ、だろ?」


また声が出る。


だけど、その声もマイクが拾うことはなかった。


薮くんのソロパートのあとに続くサビを歌うのは山田だったから。




『ほら、もっと手、振って。』


びっくりしてる俺なんかお構いなしで隣で光くんが手を振る。



うちのエースがしっかり仕事、・・・、きれいな声で歌ってるのが背中に聞こえる俺は自分の目に映るもの、・・・、じゃない、人に心臓が飛び出そうなくらいびっくりしてた。



「莉夏さん、・・・。」


光くんが思いっきり手を振る方向。


そこには今頃いろんな花たちに囲まれ、アレンジメントやブーケを作ってるはずの莉夏さんの姿があった。