Accounting, Tax and M&A -17ページ目

Accounting, Tax and M&A

会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。


ソフトバンクが子会社ソフトバンクBBのコマース&サービス事業を分社化し、この間買収した米ブライトスターに売却するようです。

ちょっと開示資料を見てみました。

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ソフトバンクBBはソフトバンクの100%子会社で、そのコマース&サービス事業(IT関連のソフトウェア、ハードウェアの販売等)を会社分割(単独新設分割)により切り出します(承継会社名はソフトバンクコマース&サービス(SBCS)です)。

ちなみにこの事業はソフトバンクの創業事業だそうです。

このSBCS株式はソフトバンクに分配されるということで、いわゆる分割型分割ですね。

分割の対象は資産694億円、負債522億円で純資産172億円相当です。

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その後、ソフトバンクはSBCS株式100%を、米ブライトスターが日本に新設するSPCに譲渡します。譲渡の対価はブライトスター(の米国持株会社)の株式です。

譲渡の結果、ソフトバンクのブライトスターへの持分比率は57%から62%に高まるとのことです(ワラント行使後ベースでは、70%から73%になる)。

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この会社分割の税務上の取扱いです。

この単独新設分割は、分割後の株式譲渡を考慮しても、引き続きソフトバンクが株式の50%超の支配する関係にあります。従い、分割するコマース&サービス事業の継続、従業者の引継ぎ、事業の主要な資産・負債の引継ぎといった要件を満たせば、適格分割になるものと思います。

50%超の関係は株数ベースで判定されますので、ブライトスター(の持株会社)が優先株をパートナー株主に発行していれば、50%超の支配関係を満たさない可能性もありますが、これまでの開示資料からすると、おそらくそのような事情はないように思われます。

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次に譲渡価額を見てみましょう。

元々、ソフトバンクはブライトスターの57%(ワラント行使後70%)を12.6億ドルで買収しています。

これをわかりやすく発行済株式100株として計算すると、現時点でソフトバンクの保有株は57株(57%)、ワラントが行使されると、分子・分母ともに43株増加し、発行済143株の内ソフトバンクが100株(70%)保有する関係にあるものと推測されます。

そして、今回の譲渡対価となるブライトスター株式は、ソフトバンクの出資比率が、ワラント行使前で57%から62%、ワラント行使後で70%から73%への上昇に相当する株数になります。

これを逆算すると13株相当になります(60株/113株=62%、113株/156株=73%)。

70株の取得価額が12.6億ドルだったので、13株相当の価額は2.4億ドル程度になります。240億円くらいですね。

分割対象の純資産は172億円なので68億円の譲渡益ということになります。

但し、ソフトバンクはIFRSを採用しており、このコマース&サービス事業はブライトスターを通じて引き続き子会社に該当しますので、この譲渡益は会計上利益としては認識されないものと思われます。

とはいえ、税務上は株式譲渡益に対する課税は発生するのでしょうね。

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最後に、株式譲渡の対価として、日本の子会社から、親会社(ブライトスター持株会社)の株式を受け取るというのは、何となく不思議です。

組織再編でもないのに子会社が親会社株式を一旦保有するということですので、会社法上問題がないのか気になりますが、ここはあまり深入りせずにいきましょう。

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今回はこんな感じです。

ではまた。

日立マクセルが再上場するそうです。

面白そうなので、有価証券届出書等を元に、過去の経緯を少し追ってみました。

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日立製作所(日立)は2009年10月に53%出資の上場子会社だった日立マクセルにTOBを行い(TOB後出資比率94%)、2010年4月に株式交換により6%の端数株主を追い出して完全子会社化しました。

株式交換の対価は日立株式でしたので、おそらく税務上はグループ内の適格株式交換でしょう。従い、日立マクセルは日立の連結納税グループに加入しましたが、資産の時価評価課税は行われていないものと思われます。

TOB/株式交換は単価1,740円ベースで実施され、非支配株主からの取得に要した総額は795億円程度でした。

一方、日立マクセルの2010/3末の純資産ベースの非支配株主持分(NCI)は732億円。

日立は米国会計基準を採用していますので、取得価額795億円とNCI732億円の差額63億円は、子会社の追加取得の差額として、暖簾ではなく、資本剰余金のマイナスとして認識されたものと考えられます。

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その後、日立マクセルは、2012年4月にマクセルスリオンテックとの合併、2013年1月に日立マクセルエナジーとの合併、2013年7月に日立コンシューマエレクトロニクスからの会社分割により、新株を発行しています。

この2012年4月の合併では、合併対価として日立マクセル株式が日立化成という日立の51%子会社に分配されています。

従い、このタイミングで日立マクセルは日立の完全子会社ではなくなり、連結納税グループを離脱したことになります。

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その後、2013年12月に日立マクセルは日立より300億円の自己株取得を行いました。

株数にして30百万株、取得単価は996円/株です。

TOBの単価は1,740円でしたので、随分下がってしまいましたね。

そして、この自己株取得は、完全支配関係を有するグループ内で実施されたものではありませんので、税務上、日立においてはみなし配当及び株式譲渡損益が発生します。

このインパクトの試算は容易ではありませんが、ざっくりやってみましょう。

日立の保有する日立マクセル株式の単体会計上の簿価はTOB/株式交換後の2011/3末で834億円で、2013/3末も変わっていません。

但し、その後の日立マクセルの合併(おそらく適格)により日立は追加で株式を取得しているはずです。もしかすると会計上は減損済みの株式なのかも知れません。

税務上の簿価は不明ですが、仮に合併/分割した会社/事業の資本金・資本剰余金=日立の出資簿価と仮定すると、ざっくり日立マクセルエナジー、日立コンシューマエレクトロニクスの2社分で384億円程度と思われます。

これで日立の株式の税務簿価を合計1,218億円と仮定すると、株数105百万株で単価は1,162円となります。

さらに日立マクセルの税務上の資本金等の額をざっくり会計上の資本金・資本剰余金と仮定すると679億円、1株当りの単価で642円になります。

以上からざっくり計算すると、

自己株取得対価300億円の内、株式譲渡対価は193億円(642円×30百万株)、みなし配当は107億円です。

譲渡した株式の簿価は350億円(1,162円×30百万株)なので、税務上、株式譲渡損失が157億円発生します(193億円-350億円)。

みなし配当は実質非課税なので、この株式譲渡損について税務上メリットがあるわけです。

連結納税から離脱させた上で、おそらく上場前に駆け込みで自己株取得をさせたんでしょうかね。

かなり適当な試算なので、実際の金額は全く違う可能性もありますが。。。

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ちなみに日立の四半期財務諸表を見てみると、

2013年度の実効税率の推移が、Q1で59.2%、Q2で41.6%、Q3で24.1%。この自己株取得を行ったQ3の実効税率が低くなっています。

2012年度の実効税率は、Q1で58.3%、Q2で33.1%、Q3で51.3%、Q4で15.1%です。Q4は税資産に対する評価性引当金の見直しを行っているので税率が低くなっているものと思われます。

ま、これだけで日立の税効果にプラス効果があったと結論付けるのはちょっと無理がありますかね。。。

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本題に戻りますが、日立マクセルが再上場した場合、時価総額は1,000億円~1,100億円だそうです。

2013/3末時点のBSを見ると、関係会社預け金268億円という科目があり、これはおそらく日立グループの金融子会社への預け金と思われます。

2013/12末時点のBSではこの科目がなくなっています。このグループ内預け金を解消した上で、日立の自己株取得に応じたということでしょう。

その結果、日立マクセルのnet debtはほとんどゼロの状態です。

利益水準はあまり安定していませんが、直近期(2014年3月期)の予想ベースで営業利益74億円とのこと(ちなみに前期は18億円、前々期は37億円です)。

過去の減価償却費がざっくり25億円程度なので、直近のEBITDAで100億円程度です。

このEBITDAから計算してざっとEV/EBITDAが10~11倍。市場株価としてはなかなか高い感じでしょうか。

繰越欠損金が税額ベースで106億円(税前利益ベースに逆算すると294億円程度)あり、ほぼ全額に評価性引当が計上されているものの(回収可能性が低いということ)、これがある程度市場株価に反映されるのかも知れません。

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尚、日立マクセルの2013/12末の純資産は1,077億円です。

これは日本の会計基準ベースですが、時価総額と比較して丁度PBRが1.0くらいになります。

日立は今回の日立マクセルの上場に際して売出しを行い、持分比率を30%程度に低下させるようです。

子会社が持分法になるということで、会計上は売却損益及び継続持分の時価評価損益が認識されますが、日立にとっては、おそらく連結決算上の日立マクセルの簿価は純資産ベース程度でしょうから、大きな損益は計上されないものと思われます。

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今回はこんなところです。

色々と歴史があって面白いですね。

楽天がスマホの通話アプリを提供するViber Mediaを9億ドル(約900億円)で買収するそうです。

まだ売上もほとんどない債務超過会社ですので、相当思い切った買い物でしょうけど、ちょっとだけ開示資料確認してみました。

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Viberはまだ設立後2年のキプロスの会社です。

2億8千万人の登録ユーザーを持ち、Viberアプリの利用者は月間1億人だそうですが、2013/12期の売上高は2百万ドル、純利益は▲30百万ドル、純資産は▲75百万ドルです。

楽天はViberの株式100%を900百万ドルで買収しますので、投資差額は975百万ドル(約1,000億円)になります。

楽天はIFRSを採用していますが、会計上の無形資産の評価額は未定とのこと。

この買収の目的はViberの顧客基盤の獲得にあると思いますが、この登録ユーザーやアプリ利用者が現時点で全く収益化していない以上、これらを巨額の無形資産として評価・計上するのは難しいように思います。

とすると、この975百万ドルの大半はそのまま非償却の暖簾になるのでしょうか。

この暖簾を買収したViber事業に配分した場合、今後、いわゆる減損テストに耐えられるとは到底思えません。むしろこの暖簾は、既存事業のシナジー等として、既存事業にかなりの金額を配分し、既存事業の収益に基づき減損テストをクリアしていく(いかざるを得ない)という感じですかね。

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また、本件の公表後、楽天の株価は終値ベースで1,657円から1,499円に減少しました。

投資家の皆さんはこの買収に懐疑的ということでしょう。

楽天の発行済株式総数は約13億株なので、この株価158円の下落で約2,000億円の時価総額が失われたことになります。

買収価額全額が損失になったとしても900億円なのに大変ですね。(その後、やや株価は持ち直しているようですが。)

今後も更に無駄遣いするに違いない、ということなんでしょうか。。

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ちなみにキプロスの法人税率は10%で、いわゆるタックスヘイブン国ですね。

まだViberが収益化していないので当面は問題ありませんが、利益が出てくれば日本で合算課税の対象となることも考えられます。もちろんキプロスで事業の実体があれば問題ないわけですが。

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ということで、今回はほとんど大した情報もない記事になってしまいました。

すいません。



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法人実効税率の引下げに向けた議論が加速しています。

政府税調では6月に結論を得るべく、議論を開始するようです。

税率引き下げには、税収減を懸念する財務省が難色を示しており、何らかの課税ベースの拡大がセットとなる可能性が高いようです。日経の報道では、繰越欠損金の控除制限の強化や、子会社等からの配当に係る課税強化、租税特別措置法の廃止等が挙げられています。

税率引下げのインパクトは1%で4,700億円らしいので、例えば現在の実効税率36%を25%~30%に引き下げると3~5兆円の税収減になるそうです。

とはいえ、税率を引き下げることによる海外投資呼び込み効果や足元の景気浮上による所得の増加等も考えられ、そんな単純に税収減になるとも思えませんが。。。

一方、その課税ベースの拡大がどれほどのインパクトなのか、国税庁が公表している統計データ(会社標本調査)を元にちょっと試算してみました。

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まずは繰越欠損金の控除制限の強化です。

会社標本調査(最新版で2011年度のもの)によれば、2011年度の黒字法人の所得は繰越欠損金1兆8,000億円を控除した上で33兆9400億円です。また、欠損法人については7兆9,000億円の繰越欠損金が控除されています。

この欠損法人における繰越欠損金の控除は、控除の結果として所得がゼロになった法人と思われます(用語の定義から)。

2011年度時点では現在の繰越欠損金の80%控除制限がありませんでしたので、100%ベースで合計9兆7,000億円の欠損金が繰越控除されたわけです。

今後、ここに所得の80%制限が生じますが、この制限を50%に強化した場合、ざっくり30%分の欠損金が控除できなくなります(実際には黒字額が大きい法人なら全て控除できてしまいますが捨象します)。

そして、税率引下げ後の法人税率を30%(地方税含む)と仮定すると、9兆7,000億円×制限30%×税率30%=年間8,700億円の税収増になります。

繰越期限の延長とセットであれば、あくまで税収の前受けになるだけですが、現在の年間の税収という意味ではかなり効きますね。

尚、アベノミクス効果で景気が回復し、そもそもの所得水準が増加する点は、本質的には非常に重要だと思いますが、取り敢えず今回の試算には含めません。

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次に、子会社等からの配当に対する課税強化です。

受取配当金は、払い元の企業において法人税負担後の利益の分配であり、受取側で課税されると二重課税になるとの理屈から、原則として非課税になっているわけです。

この非課税になっている金額は、また2011年度の会社標本調査によれば、国内の会社からの配当で5兆7,800億円、海外の関係会社からの配当で3兆9,400億円です。

但し、この内、法人税を支払っている黒字法人が受け取っている金額のみを抽出すると、国内配当で2兆5,600億円、海外配当で1兆7,600億円に減ります。

国内の場合、出資比率25%以上等の基準を満たす関係会社からの配当は、(金利見合いを除き)100%が非課税、その他の会社からの配当は50%が非課税です。また海外の場合、受取配当金の95%が非課税です。

仮にこの非課税の割合を20%引き下げた場合、非常にざっくりですが、(国内2兆5,600億円+海外1兆7,600億円)×引下げ20%×税率30%=2,600億円程度の税収増になります。

欠損法人の受け取っている配当金についても、繰越欠損金の控除制限との相乗効果により税収に寄与する部分もありそうですが、一方、課税強化に伴い、配当を控える会社も増えるでしょうから、実際の税収へのインパクトは更に小さいようにも思えます。

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この2つを合計しても、税収の増加は1兆1,000億円程という感じでしょうか。

法人実効税率を25%~30%に引き下げる財源としては全然足りませんが、財務省はこれでOKとするのでしょうかね。

是非とも財務省には英断を期待したいですが。

さてさて、この議論が今後どう動いていくのか、注目しましょう。

米グーグルがモトローラを売却するようです。

日経等の記事によれば、2012年に125億ドルで買収したモトローラを29億ドルで売却するようですが、そんな短期間で巨額損失??ということで、ちょっと開示資料をちょっと見てました。

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まず、グーグルがモトローラを買収したのは2012年5月。買収対価は現金で124億ドルです。

会計上の買収対価の取得資産への配分(PPA)としては、現金29億ドル、特許等55億ドル、顧客関係7億ドル、暖簾25億ドル、その他8億ドルで合計124億ドルとのこと(2012年度の10-Kより)。

ここで後ほど重要になるのは、買収したモトローラはMobile事業(携帯端末)とHome事業(セットトップボックス)の2つのセグメントとして認識したものの、主にシナジーとして説明されている暖簾はGoogleセグメントに配分されている点です。

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その後、グーグルは2013年4月にモトローラのHomeセグメントを米通信機器のArrisグループに現金24億ドル、同社株式2億ドルの合計26億ドルで売却しました(案件は2012年末に公表され、2012年度末時点でHomeセグメントはdiscontinued operationに分類されています)。

この時、Homeセグメントでは約8億ドルの売却益が計上されています。

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そして今回、2014年にモトローラのMobileセグメントを中国レノボに29億ドルで売却します(対価は現金、株式、手形の組合せ)。Mobileセグメントは2012年度4億ドル、2013年度10億ドルの赤字で、新聞記事によれば投資家からの売却圧力も強かったそうです。

但し、売却後もモトローラの特許のほとんどはグーグルが継続保有し、レノボにライセンスする形態をとります(もともとのモトローラ買収の主目的も特許の取得にあったようです)。

モトローラの特許は2012年の取得時点で55億ドル相当です。その後償却も進んでいますが、単純に計算すると、グーグルは124億ドルで取得したモトローラについて、Home事業を26億ドル、Mobile事業を29億ドルで売却し、55億ドルの特許を継続保有するので合計110億ドルを保有・回収していることになります。

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更に、上述の通り、モトローラ買収時の暖簾25億ドルは、Googleセグメントに計上されています。

あくまでGoogleセグメントの暖簾であれば、モトローラ売却後も減損/除却されることなく認識される可能性があります(モトローラ特許の継続保有により、シナジーも維持できると)。

そうすると、グーグルは先ほどの110億ドルに暖簾25億ドルを加えて135億ドルを保有・回収しているとも考えられます。この場合、会計上は今回のMobile事業の売却によっても損失はほとんど計上されないかも知れません。

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まあ、暖簾の扱いはちょっとわかりませんので今後の開示資料を待ちたいと思いますが、少なくとも僅か2年で100億ドル近い損失、というわけではなさそうですね。

Arrisへの売却をセットで報じないのはちょっとミスリーディングではないでしょうかね。

今回はここまでです。


(4/18追記)

Googleの2014年第1四半期の決算が発表されました。

予想通りモトローラの売却に係る損失はほとんど発生していません。

モトローラ事業はdiscontinued operationとして売却予定資産に分類され、関連する損失はわずか2億ドルです(といっても巨額ではありますが)。

売却予定資産に分類する際に公正価値が簿価を下回っていれば評価損を計上するはずなので、要するに売却損は発生しないということでしょう。

ちなみに暖簾の金額は、2013/12末の115億ドルから2014/3末で142億ドルと、27億ドルの増加です。おそらくNest Labs社を32億ドルで買収した影響と思われます。

とすると、やはりモトローラの買収によってGoogleセグメントに計上した暖簾(25億ドル)は取り崩していないものと思われます。

10-Q等が公表されないと詳細は確認できませんが、概ね当初のブログエントリーで予想した通りな感じです。

まあ、所詮は会計処理の話ですが。