Accounting, Tax and M&A -16ページ目

Accounting, Tax and M&A

会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。

日本ハムが300億円のCB(転換社債)を発行しました。

開示資料が面白かったので、ちょっと纏めておきます。

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このCB発行の動機は中期経営計画にあるようです。

日本ハムの中計における来期(2015/3期)の目標はROE7.0%です。

2014年3月に満期を迎える既存の第5回CBが、この2月、3月に転換が進み、株主資本が300億円増加してしまったわけです。

株主資本が増加するとROEが低下してしまうので、自己株取得の資金調達を目的として、新たなCBを発行したというわけです。

・・・

ということで、先に日本ハムの財務状況を見てみましょう。

日本ハムの2013/3末の株主資本は2,934億円。当期の純利益は会社予想で170億円、配当の支払いが49億円、OCIの変動(主に為替換算調整勘定。取り敢えず第3四半期末時点)が54億円ということで、2014/3末の株主資本は3,111億円と予想されます。

ちなみに、第3四半期までの累計純利益で既に192億円出ており、年間予想170億円は超えてきそうですが、日本ハムは例年第3四半期にかなり利益が集中することもあり、取り敢えず170億円前提にしておきましょう。

また、2015/3期の純利益計画は220億円。また配当性向30%ということで配当予想を51億円、OCIは変動なしの前提で2015/3末の株主資本予想は3,280億円。期首期末の平均で3,195億円です。

さて、この場合のROEは220億円÷3,195億円=6.9%。

円安効果でOCIが悪さをしたこともあり、会社目標の7.0%にはやや届きませんが、まあ実際には7.0%に届く予算を作るのでしょう。

・・・

重要なのは、ここでCBの転換により株主資本が300億円増加して2014/3末を迎えてしまうと、ROEは6.3%(220億円÷3,495億円)に低下してしまうところ。純利益を25億円増加させないとROE7.0%に届きません。

けっこう影響が大きいですね。

ということで、今回の新CB発行につながったわけです。

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では、漸く新CBの概要を見てみましょう。

額面300億円(払込価額301.5億円)、利息なし、満期2018年9月、転換価格2,289円、転換権は社債から分離不能、転換権行使時には社債額面による払込みとなります。

この転換価格2,289円は、発行公表日の3月7日終値1,659円に35%のプレミアムです。(第5回CBの転換価格は1,309円でしたので、株価上昇もあってかなり高くなりましたね。)

また、時価を下回る価格での増資が行われた場合等の一定の場合には、転換価格の調整条項が付されています。

さらに、転換権の行使には、行使前の一定期間(30取引日の内の20営業日)、市場株価が転換価格の120%を上回る必要があります。

また、2018年6月以降の3ヵ月間は会社による取得条項が発生します。この取得条項は額面現金決済型というもので、額面300億円までは現金、転換価値が額面を上回る部分は株式で支払われます。まさに今回のように、満期直前に転換による株式発行が進むのを防止するための条項ですかね。

尚、CBを引き受けるのは三井住友銀行が普通株式100%を保有する英国子会社のSMBC Nikko Capital Markets Limitedです。(さらにケイマンのWessex Limitedに譲渡されるようです)

この払込は3月26日に実行済み、また、300億円の自己株式の取得も3月に完了していますので、会社の予定通りのようです。

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そして、本題の会計処理の話です。

日本ハムは連結決算に米国会計基準を採用しています。

転換社債の処理は、米国基準やIFRS、日本基準等で差異のある領域です。

米国基準では、社債部分と転換権が密接に関連する場合は、転換権がin the moneyでなければ、基本的に払込価額の全額が負債として計上され、転換権は分離処理されません。(もちろん今回の転換権はin the moneyではありません)

この場合、払い込まれた300億円は全額負債として計上されます。そして表面利率は0%ですし、実効金利法による利息も発生しませんので、今後、PL上の利息費用は発生しないものと思われます。

従い、株主資本を単純に300億円減少させ、純利益には影響しないということで、ROEを高めるという意味では最も有利な処理になります。

尚、米国基準でも、転換社債にcash conversion feature(現金転換特性)がある場合は、社債と転換権の区分処理が必要という規定があります。これは、転換時に株式以外の現金等の資産による支払が部分的にでも発生する場合が該当します。

本件の新CBは、転換時に現金が支払われることはありませんが、取得条項が行使された場合は額面部分が現金で償還されますので、もしこれが現金転換特性に当たるのであれば、会計処理が変わってきます。

ここの取り扱いはちょっと自信がないので、実際に期末の財務諸表が開示されたら確認してみることにしたいと思います。

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ちなみに、IFRSでは、CBを発行した場合、社債と転換権は区分処理が求められます。

本件の転換権は、行使した場合に発行される株式の数が固定されていますので(fixed to fixed)、おそらく資本の要件は満すものと思います。つまり、今後の市場株価の変動のリスクをOption holderが負担しているというわけです。従い、社債としての負債と転換権という資本に区分して計上されるわけです。

但し、転換価格の調整条項もあり、場合によっては資本に該当しないという判断もあるかもしれません。この当たりは、日本ハムが早期にIFRSに移行しない限り判明しませんね。

転換が資本の要件を満たすとすると、社債と転換権への簿価の配分については、まず負債に計上する社債の価額を決定します。このCBは転換権があるが故に表面利率は0%なわけですが、仮に転換権がない場合の実効金利を2.5%として4年6ヶ月後に償還される300億円を現在価値に直すと268億円と試算されます。

この場合、負債としては268億円が計上され、残りの32億円は資本に計上されるイメージです。

そして、その後のPL上、社債部分については、268億円×2.5%=7億円(税後4億円)の利息費用が毎期計上されます(満期時点で社債簿価は額面の300億円になります)。

ということで、IFRSの場合は、社債に対する利息費用がちゃんとPL認識されるわけですね。

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仮に米基準の元、純利益224億円、平均株主資本3,195億円でROE7.0%を計画していたとすると、IFRSでは純利益220億円、平均株主資本3,227億円でROE6.8%になってしまいます。

これでROE7.0%にするには、さらに6.5億円の純利益の上乗せが必要になってしまいます。

ということで、米基準では転換権を区分処理せずにCB全額を負債に計上でき、その後の利息費用も発生しないということで、IFRSよりもROEが高くなるわけです。

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ちなみに日本基準では、転換社債型の新株予約権付社債の発行者は、区分処理と一括処理で選択可能です。

なんか、一番ポリシーがない感じ?

さらに日本基準では、区分処理する場合でも新株予約権は、資本または負債に区分するルールがなく、株主資本に含まれない純資産という特殊な位置付けになります。

仮に区分処理を選択したとすると、32億円の新株予約権が純資産に計上されます。その後の転換権の価値変動が起きても再評価はされず、PLにもBSにもインパクトはありません。

そして、転換権が行使されれば新株予約権は株主資本に振り替えられ、一方、転換権が失効すれば、新株予約権を取り崩してPL上利益認識されます。

ま、実際には一括処理が選択されるケースがほとんどでしょうけど(その場合は米基準と同じ処理)。

・・・

ということで、今後の開示資料を待ちつつ、今回はここまでです。

資本と負債って、会計基準差異の中でも難解な分野なんですよねぇ。。



(3/30追記)
IFRSの処理の記載で恥ずかしながら誤りがあったので修正しました。
ヤフーがソフトバンクからイー・アクセスとウィルコムの合併会社を3,240億円で買収するそうです。

このブログでも以前から追いかけてたネタですが、その集大成といった感じです。

さっそく開示資料を見てみましょう。

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まずおさらいですが、イー・アクセスは2013年1月にソフトバンクが株式交換で100%子会社化した後、株式を無議決権のA種と議決権ありのB種に分割し、B種の2/3を売却して議決権を33%に下げつつ、持分は99.6%を維持していました。

議決権は33%ですが実質支配ということで、ソフトバンクはイー・アクセスをIFRS上子会社として連結しています。

そしてこの株式交換は、100%支配関係の継続が見込まれないことから、税務上、非適格株式交換でした。

この当たりは以前の記事に纏めている通りです。

「ソフトバンクによるイー・アクセス買収 ~非適格株式交換による営業権の時価評価課税まで推定 」

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また、ウィルコムはソフトバンクの100%子会社で、2013年7月の会社更生が完了により会計上連結が開始されました。出資簿価3億円に対し、IFRS上の支配獲得に伴う公正価値評価益が1,038億円計上されています。

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さて、今回、6月1日にイー・アクセスが存続会社としてウィルコムを吸収合併します。

そして翌6月2日にヤフーがソフトバンクの保有するイー・アクセスの株式を3,240億円で買収します。

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税務上の取扱いはどうなるのでしょうか。

この合併は、ソフトバンクの子会社同士の兄弟合併ですが、ソフトバンクによる支配関係の継続が見込まれません。

ヤフーも会計上はソフトバンクの子会社となっていますが(議決権42.2%で実質基準により連結)、税務上の支配関係はあくまで持株比率で判定しますので、ヤフーに株式を譲渡する以上、支配関係は断たれることになります。

そして、支配関係の継続見込みのない会社同士の合併の場合、いわゆる共同事業要件を満たせば適格合併になります。

しかし、本件では、被合併法人(ウィルコム)の株主であるソフトバンクが、合併の対価として受領するイー・アクセスの議決権株式の継続保有が見込まれませんので、共同事業要件を満たすことができません。(正確には、今回の合併の対価はすべてイー・アクセスの無議決権株式(A株)のようですので、この点からも株式継続保有要件は満たせません)

なので、この合併は税務上、非適格合併になります。

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イー・アクセスとウィルコムの合併が非適格になる場合のインパクトについて、以前、別の記事で記載していました。
「イー・アクセスとウィルコムの合併 ~税制適格か非適格か」

この時は、まさか本当に非適格合併にするとは思っていませんでしたが、一部アップデートもあるので、改めて記載しましょう。

ウィルコムは税務上、保有資産・負債を時価でイー・アクセスに譲渡し、対価として取得したイー・アクセス株式を株主であるソフトバンクに分配することになります。

保有資産・負債の簿価は、会計上の数値で代用すると、2013/3末の純資産で561億円。その後、2014年1月に558億円の配当を実施しているので、これを差し引くと3億円です(期中の利益は考慮外)。

一方その時価は、2013年7月のソフトバンクによる時価評価ベースで1,041億円、配当控除後で483億円です。

従い、この計算では、譲渡益となる含み益は480億円(正確には譲渡益に対する課税を差し引いた税後で480億円)です。ウィルコムに繰越欠損金があるのかわかりませんが、それなりの課税インパクトです。

但し、この譲渡益は、イー・アクセスにおいて税務上暖簾(資産調整勘定)となり、5年償却で損金算入されますので、実質的にはここで取り返すことができます。(ちゃんと課税所得が出れば)

次に、ウィルコムは合併対価を100%親会社のソフトバンクに分配します。分配される株式の時価483億円の内、ウィルコムの資本金等の額を上回る部分はみなし配当になります。資本金等の額はわかりませんが、従前のウィルコムの資本の部から推測するに100億円程度と思われます。

すると、みなし配当は383億円。これはソフトバンクにおいては益金不算入で非課税となり、イー・アクセス株式の簿価に算入されます。この部分は、その後の株式譲渡時の課税を圧縮させる効果があるわけです。

また、資本金等の額100億円とウィルコム株式の税務上の簿価3億円との差額は、100%親子会社間の取引なので株式譲渡益課税の対象とはならず、ソフトバンクの資本金等の額に計上されます。

なので、この非適格合併は、ソフトバンクにとってはかなりオイシイ感じでしょう。

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ところで、イー・アクセスとウィルコムの合併比率は公表されていませんが、合併後にソフトバンクが有するであろうイー・アクセス株式の数が公表されていることから、合併比率を間接的に割り出すことができます。

すると、1株ではなく時価総額ベースで、ウィルコム1:イー・アクセス3.6くらいの計算になります。

一方、イー・アクセスの時価は、買収時の時価(≒買収価額)2,183億円にその後の増資490億円を加算して2,673億円程度と思われます。

しかし、ウィルコム483億円、イー・アクセス2,673億円とすると、比率はウィルコム1:イー・アクセス5.5になってしまいます。

この当たり、もう少し相対的にウィルコムが高く評価されているのでしょうか。もしかするとみなし配当の金額は400~500億円程度あるかもしれません。

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今回のヤフーの株式取得価額は3,240億円。これで合併後イー・アクセスの99.7%を取得します(議決権は33.3%のまま)。

これによるソフトバンクの単体会計上の売却益は557億円。差し引きの譲渡原価は2,683億円。これは、イー・アクセスの取得価額が2,678億円、ウィルコムの取得価額が3億円なので、ほぼピタリ計算が合います。

一方、税務上は、これに先ほどのみなし配当400~500億円程度がウィルコムの簿価に加算されますので、譲渡原価は合計3,150億円程度になり、株式譲渡益は90億円程度まで圧縮されます。

この株式譲渡益課税の圧縮の効果は、合併が適格だと生じていなかったわけです。

もし仮に今回の取引が、先に株式譲渡が行われ、ヤフーの支配下で2社が合併していたら、この合併は適格合併になっていたと思われます。

まあ、もちろん税務目的のみで取引の順番を決めているわけではないでしょうけど、なるほど、という感じですね。

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しかも、もっと言うと、イー・アクセスの株式交換が非適格ではなく適格だったら、イー・アクセス株式の税務上の簿価も1,000億円以上低かったはずなのですが、この件はこの辺にしておきましょう。

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次にIFRS上の取扱いです。

本取引は、会計上はソフトバンクの共通支配下の取引になります。

ソフトバンクはヤフーの議決権を42.2%保有しており、過半数には届いていませんが、実質基準により連結子会社として取り扱っています。

従い、今回の取引は子会社を他の子会社に売却し、引き続き子会社(孫会社)として維持される形なわけです。

なので、IFRS上は資本取引となり、損益は計上されません。

但し、IFRS上のイー・アクセス、ウィルコムの簿価は、イー・アクセスは取得価額の2,673億円、ウィルコムは時価評価額から配当を控除した483億円の合計3,156億円。これに期中の利益が加算されているにしても、ヤフーへの譲渡価額3,240億円とあまり差はなさそうです。

従い、資本取引として非支配持分/資本剰余金にチャージされる金額も大したことはなさそうです。

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今回はここまでです。

イー・アクセスの非適格株式交換に始まり、ウィルコムと非適格合併させて株式譲渡。

話題満載の一連の取引が完結した感じですね。



(5/22追記)

一応追記しますが、ヤフーか爆速で買収を中止しました。ビジネス面もさることながら、IDCの件の地裁判決が影響したところもあるのかな、なんて邪推してみたり。

売却前提じゃなければ適格合併でしょうね。

今後も引き続き注目します。

中国のE-Commerce最大手のAlibaba(アリババ)グループがNY市場で上場するようです。

上場時の時価総額は少なくとも1,000億ドル(10兆円)、ロイターの調査では12の金融機関の予想値の平均で1,410億ドル(14兆円)だそうです。

とんでもない金額ですね。

これでソフトバンクが巨額の含み益を抱えるらしいですが、Alibabaの業績とかって、どうなってるんでしょう。

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今回上場すると言われてるのはAlibaba Group Holding Limitedというケイマンの持株会社(以下、Alibaba)です。

この会社の傘下に中国のAlibaba.comやTaobao.com等がぶら下がっている構造と思われます。

Alibabaの株主としては、ソフトバンクで36.7%(内、24.1%は間接保有)、米Yahooで24%等の名前が挙がっています。

ということで、米Yahooのannual report(10-K)を見ると、Alibabaの業績等が記載されていました。

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それによると、過去3期(2011年9月期、2012年9月期、2013年9月期)の売上高で、23億ドル、41億ドル、67億ドルと急成長しています。利益を見ると、営業利益で3億ドル、7億ドル、31億ドル、当期純利益で3億ドル、5億ドル、28億ドルとこちらも急成長です(ちなみに2010年9月期はまだ赤字)。

直近期の売上高利益率はめちゃくちゃ高いです。

また、税前利益と税後利益で比べると、法人税がほとんど発生していません。

これって、Alibaba本体はケイマンなので法人税はないんでしょうけど、その傘下の中国企業はどうしてるんですかね。可能な限りケイマンの親会社に利益を寄せているのでしょうか。。それか優遇税率とか?

また、Alibabaの純資産は2013年9月末で37億ドル、その内、優先株が17億ドルという感じです。

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ちなみに、Alibaba傘下のAlibaba.comはかつて2007年11月に香港市場に上場しましたが、2012年6月にAlibabaによって非上場化されています。

Alibabaは米国会計基準を採用していますが、上場した際にAlibabaは子会社持分27%相当の売却益をPL計上し、約18億ドルの税後利益となっていました。当時の米国基準ではまだ子会社の一部売却もPLだったわけです。

これにより、ソフトバンクは572億円の持分利益、米国Yahooも8億ドル程度の持分利益を認識したようです。

その後、2012年6月の非上場化においては、AlibabaはAlibaba.comの持分を25億ドルで買い戻しています。おそらくこれに相当するAlibaba.comの非支配持分は4億ドル程度で、差額の21億ドルはAlibabaの資本剰余金のマイナスとして計上されています(改正後の米国基準ベース)。

そしてソフトバンクはその持分512億円をソフトバンク自身の資本剰余金の減額として認識しています(ソフトバンクのIFRS移行後も修正なし)。

この持分法投資先の資本剰余金の変動を投資元でのIFRS上の会計処理については必ずしも明確ではありませんが(まさに今IASBで議論中)、ソフトバンクはそのまま資本剰余金で受け入れる処理を選択しているのでしょう。

結果として、上場時の売却益をPL認識し、非上場化においては資本を直接減額させる処理になっているわけです。おいしいですねぇ。

尚、米Yahooは若干異なる処理をしているようです。

Yahooは希薄化後ベースで40%のAlibaba株式(合計1,047百万株)を保有していましたが、Alibaba.com非上場化後の2012年9月、保有株の半分をAlibabaに譲渡(自己株取得)しています。

譲渡価額は1株当り13.54ドルで総額71億ドル相当。その内、63億ドルを現金で、8億ドルをAlibabaの優先株で受けています。これにより税前46億ドル、税後28億ドルの連結利益を計上したようです。

売却価額71億ドルで利益46億ドルということは、譲渡原価は25億ドルです。

一方、YahooのAlibaba株式簿価(連結ベース)は、譲渡前の2011年度末で25億ドル、譲渡後の2012年度末で3億ドル(この他に優先株8億ドル)と、22億ドルの減少になっています。保有株の半分の売却なのに22億ドルも簿価が減少している理由は、非上場化に伴う資本剰余金の変動を含めてPLで認識していることによるものと思われます。

実際、AlibabaはYahooからの自己株取得時に、第三者割当増資を行っています。詳細は不明ですが、Alibabaの連結純資産の異動等から推測するに、おそらく普通株の発行で約190百万株程度、金額にして29億ドル程度と思われます。(また、50億ドルを超える資金を借入によっても調達しているものと思われます)

そうすると、YahooのAlibaba持分の連結簿価の変動は、2011/9末のAlibaba純資産44億ドル×持分42%+暖簾6億ドルで約25億ドルだったのが、2012/9末ではAlibaba純資産▲14億ドル(=前期末44億ドル-Alibaba.com非上場化21億ドル-自己株取得71億ドル+増資29億ドル+純利益5億ドル)×持分24%+暖簾6億ドル=3億ドルということで、うまく説明が付きます。(2012/9末時点ではAlibabaは債務超過だったんですね。)

従い、YahooはAlibabaによる子会社持分追加取得による資本剰余金の変動に対する持分も含めてPLで認識したものと推測できるわけです。

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尚、このAlibabaの自己株取得と増資により、YahooのAlibaba持分は42%から24%に減少、ソフトバンクのAlibaba持分は32%から37%に上昇しました(但し、ソフトバンクは増資は引き受けていません)。おそらくAlibabaの発行済株式総数で22億株の内、ソフトバンク保有が8億株くらいかと思います。

そして、この増資におけるAlibabaのValuationは100%ベースで400億ドルでした(これはAlibabaの開示資料にも記載されています)。

その増資から1年半くらい経った今、その時価総額は1,000億ドルとか1,410億ドルとかになってるというわけですか。直近期の純利益28億ドルからするとPERで36倍~50倍ですが、まあ成長率がかなり高いので十分説明できる範囲かも知れません。

ソフトバンクの保有株の含み益も勿論すごいですが、2012年当時に増資を引き受けた方々のリターンもとんでもない水準でしょう。Yahooはちょっと売却のタイミングを早まった感じなんでしょうかねぇ。

もはや計算しても仕方ありませんが、ソフトバンクのAlibaba持分36.7%の時価は3.7兆円~5.2兆円、おそらく連結簿価は1,000億円もないくらいでしょうから、ほとんどそのまま含み益です。

気が遠くなります。

ただ、ソフトバンクの会計方針からすると、Alibabaの上場によるみなし売却益はPL認識されないのかも知れません。そうすると、PLで認識するには、保有株の一部を売り出す必要があるのかもですね。

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ということで、今回は全くとりとめのない内容になってしまいましたが、ここまでです。

Yahooの10-Kから、けっこうAlibabaの数値関係を読み取れましたが、例によって、かなり推測を含んでますのでご了承ください。


すき家のゼンショーが関東地場のスーパーを展開するマルヤを株式交換により100%子会社化した上で、連結納税を開始するそうです。

なかなか面白そうなので、開示資料を見てみました。

ちなみにゼンショーの企業理念は「世界から飢餓と貧困を撲滅する」です。

壮大ですねぇ。

ゼンショーは日本ですき家やなか卯、ココス、はま寿司、ビッグボーイ等を運営しているわけですが、世界の飢餓に立ち向かうのはなかなか難しいような。。

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早速ですが、マルヤは、ゼンショーが2012年11月にTOBを実施して子会社化しています(現在は上場維持)。

当時はTOB単価150円で株式の78.7%を取得。TOB総額は27億円でした(これに取得費用を加算した28億円が株式簿価)。

この時点のマルヤの時価純資産は45億円。ゼンショー持分の35億円と出資額との差額8億円は、ゼンショーの連結会計上、負の暖簾として2013/3期に一括利益認識されています(尚、ゼンショーは日本基準採用)。

業績不振のマルヤはその後も赤字が続き、2012年度Q4に▲4億円、2013年度も▲7億円の純損失の見込みとなっています。

ちなみに、この2013年度の業績予想は、もともと▲14億円の赤字でした。それが、この後の株式交換によりゼンショーの100%子会社となり、更にゼンショーが連結納税を開始することを見込み、税資産を7億円計上することにより改善したようです。

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では、その株式交換を確認しましょう。

この株式交換は、効力発生日を2014年3月26日とし、ゼンショーの100%子会社である日本リテールホールディングス(日本リテ)が完全親会社としてマルヤの全株式を取得し、ゼンショーを含むマルヤの旧株主には対価として1株当り200円が支払われます。

TOB以降も赤字続きのマルヤですが、株式評価額としては50円増しになっています。

そして、現金対価なので税務上、非適格株式交換になります。

この非適格株式交換の税務上のポイントは、まずゼンショーがマルヤ株式と交換で現金を受け取ることによる株式譲渡益課税の取扱いと、マルヤ自身における資産の時価評価課税です。

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まず、ゼンショーは株式交換の対価として36億円の現金を取得し、税務上の株式譲渡益は9億円になります。

但し、おそらく本件の株式交換によるゼンショーの株式譲渡は、ゼンショーと日本リテという100%グループ内で実施されることから、グループ税制の適用により、この株式譲渡益9億円は課税繰延べになるものと思います。

この点、やや自信ありませんが、100%グループ内で資産の譲渡が行われた場合の課税繰延べの規定では、対象資産の範囲には株式が含まれますし、株式交換による旧株と交付資産の交換が「譲渡」の範囲から特に除外されていませんので、おそらく繰延べ対象になるものと思います。

間違ってたらすいません。。

尚、同額が単体決算上も株式譲渡益となりますが、連結決算上は内部取引として消去されます。

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次にマルヤの時価評価課税の影響はなかなか難しいですが、試算してみましょう。

まず、株式交換価格に基づく時価総額は46億円です。

一方、純資産は2014/3末の予想で34億円。これに税務調整の残高として、税効果の注記における税資産の金額(評価性引当考慮前、繰越欠損金除く)を税率で割り戻した一時差異の金額として39億円を加算し、この2014/3末に追加計上される税資産7億円を減算すると66億円と試算されます。

税務上の純資産が時価評価額を20億円程上回っている状況です。

従い、いわゆる自己創設の営業権の時価評価課税は生じないものと思われます(尚、マイナスの営業権(負の暖簾)は時価評価対象の資産ではありません)。

その他に時価評価されるものとしては、固定資産(土地、建物)が考えられます。この固定資産については、税務上認容されていない減損損失累計額が28億円程度あり、これらが時価評価損失として顕在化する可能性があるものと思います。

その場合、マルヤは2013/3末時点で92億円程度の繰越欠損金を有していますが(税効果の注記より逆算)、ここに2014/3期の欠損及び固定資産の時価評価損失が加わり、100億円を超える繰越欠損金になるものと思われます。

・・・

そして、ゼンショーは2015/3期より連結納税を開始します。

連結納税は国内100%子会社が対象ですので、日本リテもマルヤも連結納税の対象になります。

従い、連結納税開始直前の2014/3末時点において、ゼンショーの100%子会社では原則として資産の時価評価課税及び繰越欠損金の切捨てが発生します。

この時価評価と繰越欠損金の切捨てには一定の例外があり、長期間(5年以上)100%子会社の関係にある子会社や、適格株式交換により100%子会社になった子会社は対象外となります。

しかし、マルヤは非適格株式交換で100%化しており、5年も経過していません。時価評価については非適格株式交換で時価評価済みなので実質影響はありませんが、時価評価で更に膨らむと思われる繰越欠損金は切捨てになります。

これは勿体ないですね。

マルヤの業績予想では、連結納税の開始を見込んで税資産7億円を計上するとのことですが、この元になる一時差異は何なのでしょうか。

100億円を超える繰越欠損金は切り捨てられますので、時価評価後も残ると想定している固定資産の減損による一時差異くらいしか考えられませんが、これも時価評価がどうなるかという不確実性を有しているように思います。

・・・

しかし、何故ゼンショーはわざわざ非適格株式交換を選択したのでしょう。

株式交換の対価をゼンショーの株式にしておけば、おそらく問題なく適格株式交換になっていたはずです(要件はマルヤの従業者の引継ぎと主要な事業の継続のみ)。

そうすれば、マルヤにおいて時価評価や繰越欠損金の切捨てを回避できたはずです(繰越欠損金は連結納税開始後も引き続きマルヤ単体の所得により活用可能)。

みなし配当等によりゼンショーでメリットが生じるわけでもありませんし、敢えて非適格株式交換を選択したエコノミクスがちょっとわかりません。

・・・

最後に会計の話です。

この株式交換は、連結会計上は、子会社の追加取得になります。

日本の会計基準でも、子会社の追加取得は資本取引として処理される方向で改正が入りますが、適用は2015年4月以降(早期適用でも2014年4月以降)の開始事業年度なので、本件については現行基準が適用されます。

従い、株式交換による追加取得額(非支配株主への対価支払額)10億円と、2014/3末の非支配持分(2013/12末のマルヤ純資産38億円にQ4の予想損失▲4億円を減じ、非支配株主の比率21.3%を乗じると7億円)の差額3億円は、子会社の追加取得に係る暖簾になります。

ただ、Q4の予想損失▲4億円は、通常損失▲11億円と税資産の計上+7億円からなります。この税資産7億円は、マルヤが100%子会社となりゼンショーの連結納税グループに含まれることを前提としたものなので、株式交換前の利益として非支配株主持分にも割り振るべきなのか、やや疑問ではあります。

あくまで100%化後に計上する利益だとすれば、7億円×21.3%=1.5億円程度については、暖簾が増加し、ゼンショーの連結利益が増加することになるかも知れません。

尚、改正基準の適用に当たっては、遡及適用が原則とされており、この場合、この3億円は暖簾から資本剰余金のマイナスに振り替えられることになりますが、遡及適用しないことも認められています。どちらを採用するかは、実務負担も踏まえた上でのゼンショーの判断になります。

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今回はここまでです。

いや、しかしなぜ非適格株式交換にしたのか不思議です。公募増資との関係上、株式の交付が難しかったりしたんでしょうかねぇ。

何か非適格の方がよかった要因があるのか、もう少し考えてみたいと思います。


(追記)

株式交換の開示の中で、株式を対価にすると、単元未満株主が多くなってしまうことの配慮したという説明があったのを思い出した。

とはいえ、もう少しやりようがありそうなもんですけどねぇ。

しかし、純資産30億円、時価総額40億円の会社が100億円の繰越欠損金を持ってるって、すごいね。

FacebookがWhatsAppを160億ドルで買収するようですね。

既に色々報道されてる通りですが、会計的な部分をちょっと見てみました。

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まずストラクチャーです。

facebookが直接間接に100%保有する子会社Rhodium Acquisition SubII(以下、RASII)を設立し、更にその100%子会社としてRhodium Acquisition Sub(以下、RAS)を設立します。

RASII、RASともにデラウェア州のCorporationです。

1stステップとして、RASとWhatsAppが合併します。存続会社はWhatsAppですが、これによりWhatsAppはRASIIの100%子会社になるという逆三角合併です。

そして2ndステップとして、RASが100%子会社となったWhatsAppと合併します。おそらくRASが存続会社と思われます。

なぜわざわざ二段階の合併を行うんでしょうねぇ??

合併契約の開示の関係とかでしょうか?それとも税務的な理由?

残念ながらちょっとわかりません。

おそらく税務上は、WhatsApp自身は課税繰延べ、株主は現金部分は課税、株式対価部分は課税繰延べではないかと思います。

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次に買収価額です。

合併の対価としてWhatsApp株主に支払われるのは、現金40億ドルとfacebook株式184百万株です(もちろん通常の議決権を有するclassA株です)。

2月25日の終値69.85ドルで換算すると128億ドル相当の株ですので、買収対価は合計168億ドルです(約1兆7,000億円)。

すごい金額ですね。

WhatsAppの財務データ等は未確認ですので何とも言えませんが、おそらく大部分はいわゆる暖簾なのでしょう。

よくアクティブユーザー当り◯◯ドルみたいな評価を見ますが、逆にそれくらいしか評価のしようがないってことなんでしょうか。

本件ではこれに加え、WhatsAppの創業者及び従業員にRestricted stock unit(RSU)としてfacebook株式46百万株分が交付されるようです。現在の株価で換算すると32億ドル相当です。

ここまで含めると買収対価は200億ドルのようにも思えますね?

この点、facebookは米国会計基準を採用していますが、このRSUは4年後に権利が確定するようなので、創業者及び従業員の今後の労働に対する対価としての性格を有し、買収時の会計処理には反映されないのではないかと思われます。

買収の処理に反映されないということは、暖簾にはならず、買収後に費用として計上されていくということです。

確かIFRSはこんな感じの規定だったと思いますが、米基準も同じかな?

この辺り、ちょっと自信ありませんが。

尚、当然ながら、実際の買収価額は買収時点のfacebookの市場株価をベースに算定されることになります。

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ちなみに、今回WhatsApp株主に発行されるfacebook株(RSU含む)は、facebook全体(希薄化後)の7.9%になるようです。

また、この買収契約の詳細は、次の10-Qで開示される予定とのことで、楽しみにしましょう。

ということで、今回はここまでです。