Accounting, Tax and M&A -11ページ目

Accounting, Tax and M&A

会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。


塩野義製薬が大阪国税局から税務否認を受けたようです。

国税に事前照会していたにも拘らず現物出資が非適格と認定されたとのことで、しかも更正所得は405億円と巨額です。

もしやヤフーに続く組織再編の行為計算否認?

ということで、まだ詳細わからないところが多いですが、有報等をベースに初期的なまとめを。

・・・

まず、事案の概要を整理します。

①塩野義は、英国ViiV社との50%:50%出資のJVであるShionogi-ViiV-Healthcare(以下、JV)を保有していました。JVは2001年に設立されたケイマンのパートナーシップです。

②2012年10月、塩野義はJV持分50%を英国の100%子会社Shionogi Limitedに現物出資しました。

③そして、おそらく②と同時に、英ShionogiはJV持分を英ViiV社に現物出資し、対価として英ViiV社株式10%を受領しました。

結果、塩野義の100%子会社である英Shionogiが英ViiV社の10%株主になったわけです。

・・・

ちなみに2013/3期の連結会計上、塩野義は持分法を適用していたJVの簿価73億円と、受領した英ViiV株の公正価値との差額404億円を利益として計上しています。

今回、更正された金額と近いですね。(ここは後でちょっと触れます)

・・・

さて、塩野義のプレスリリースによれば、②の英Shionogiへの現物出資が非適格と認定されたように思われます。

塩野義と英Shionogiは100%親子関係にありますので、適格現物出資の要件は、その完全支配関係の継続が見込まれることだけです。おそらくこの点について疑義はないでしょう。

但し、外国法人への現物出資なので、現物出資財産が国内の事業所の属する資産(国内資産)でないことも要件として必要となります。

25%以上保有している外国法人の株式は国内資産の定義から外れますので、もしJVが外国法人であれば、この要件もクリアすることになります。

しかし、JVはケイマンのパートナーシップなので、本邦税務上、法人扱いなのか、組合扱いなのか、疑義があるところです。

国税当局としては、ケイマンのパートナーシップについても法人扱いと認定するのではないかと思われる一方、今回の更正所得が連結決算上の利益とほぼ同額であることからすると、おそらくパートナーシップ持分は単体決算上も持分法に近い処理をしており、特に税務調整がなされていないのではないかと推測されます。

(ここら辺はまだしっかり確認できていないのですが)

なので、もし税務上JVが組合扱いだとすると、現物出資したのは外国法人の株式ではなく、JVが保有している資産ということになります。

これが国内資産に当たるかどうかは、基本的に国内で帳簿計上されているか、国内で管理されているか等によると思われます。JVの保有資産はドルテグラビルというHIV関連の薬に係る権利のようですが、国内資産と認定されうるのか、ちょっとわかりません。

とはいえ、本件は塩野義が国税に事前照会して適格との回答を得ていたことからすると、この国内・国外判定の事実認定で否認されたという可能性はあまり高くない気がします。

・・・

もし適格要件を形式上満たしているにも拘らず否認されたとすれば、組織再編に係る行為計算否認(法人税法132条の2)の可能性も出てきます。

おそらく③の英Shionogiから英ViiVへの現物出資について、現地では非課税になっていたのではないかと思います。

2013/3期の塩野義の連結財務諸表を見ると、税前利益583億円に対し、税効果の注記で組織再編による税率への影響が▲26.6%とあり、税額ベースで155億円相当です。これを法人税率38%で割り戻すと税前利益で408億円。ほぼこの再編の利益に相当する感じなのです。

税効果会計適用後の実効税率が下がるということは、英国において、課税繰り延べではなく、非課税でステップアップしているということでしょう。

とすると、塩野義は400億円の含み益を有するJV持分を②の適格現物出資で英Shionogiに移転し、③で英ViiV株式と非課税で交換されたことになります。日本の国税からすると、本来、課税取引であるはずの③が英国現地で非課税となり、②は日本では適格なので、JVの含み益どこでも課税されないような印象を持ったのかも知れません。

ちなみに③については、この現地で非課税となる所得によって英Shionogiの実効税率が下がり、日本のタックスヘイブン税制の適用も考えられますが、英Shionogiに事業実態があれば適用除外が取れるでしょうから、これも難しいのでしょう。

但し、この②が適格であれば課税繰り延べなので、JVの含み益は英Shionogi株式の含み益になるわけで、日本の当局として永久的に課税権を失うわけではありません。

さて、これで法人税が不当に減少したと言えるのでしょうかね。

・・・

塩野義が②を行わずに③を行っていた場合(或いは②の前に③を行った場合)、もちろんこの現物出資は非適格になります(第三者への現物出資。共同事業要件を満たす可能性もゼロではないかもですが)。

なので、③の前に②を行った事業上の目的がどう説明されるのか、気になるところです。

この点、③の必要性は、税務的には、日本から直接10%出資だと海外配当益金不算入も享受できませんし(要件軽減されてたっけ?)、ビジネス上、英Shionogiが現地で英ViiV株式を保有し、関与した方が望ましいということでいくらでも説明できそうです。

②との前後関係としては、別にどちらでも構わないでしょうけど、特段の差異がないのに、敢えて課税される順番を選ぶわけないですし、それが租税回避行為とも思えません。

・・・

いよいよ考えられるのは、ヤフー判決に沿った「組織再編税制の趣旨に照らして」という議論です。


組織再編税制の趣旨に照らし、移転資産(JV)に対する支配の継続が塩野義グループとして見込まれないにも拘らず、外国法人を経由させることで適格要件を満たす帰結となることは不合理、といったことを国税が主張しているのでしょうかね。

英Shionogi株式の含み益として残っているにも拘らず、という気もしますが、もしこういうことなら、ヤフー判決の影響力恐るべし。。

・・・

さて、今回はここまでです。

あまり調べられないまま書いたので、論点が明らかになったら全然違う可能性も否定できませんが、ご了承ください。

塩野義は遅滞なく異議申し立て等するそうなので、続報を待ちます。



(9/13追記)

Twitterで指摘頂いたところ等を踏まえての追記です。

まず外国事業体の取り扱いについて。

ケイマンの特例リミテッドパートナーシップについては、過去の判例で組合扱いとされた事例があります(最高裁の不受理で確定)。

ただ、ケイマンと類似するバミューダのLPSでは引き続き訴訟中ですし、現在の国税当局のスタンスについてはよくわかりません。

とはいえ、仮に国税当局が法人扱いを主張すると現物出資は適格になりますし、また、有報から察するに塩野義側がケイマンのPSを組合扱いしていることから、国税は敢えて法人該当性については争っていないのではないかと推測します。

とすると、ケイマンのパートナーシップが保有する無計資産の国内外判定の事実認定が争点となっている可能性はあります。

ちなみに本日の日経記事はこのように報じています。

『塩野義側はJV持ち分の現物出資について、海外同士の資産移転などの一定条件を満たせば簿価で譲渡したものとして算定できる「適格要件」に当たると判断』

「海外同士の資産移転」という言葉を使っている当たり、やはりこの論点なのかな、と思いました。

とすると、直接的には132条の2ではないかもですね。


アリババのIPOの仮条件が9月5日に公表されました。

折角なので、これを踏まえてソフトバンクのみなし売却益の試算のアップデートをしておきます。

・・・

まずIPOの仮条件ですが、株価は60ドル~66ドル、IPO株数は新株発行が123百万株、既存株主による売出しが197百万株です。また、株数についてオプションとして新株発行で26百万株、既存株主売出しで22百万株、各々増加する可能性があります。

アリババとしての調達額は74億ドル(123百万株×60ドル)~98億ドル(149百万株×66ドル)となります。

アリババの発行済株式総数は2014/6末時点で2,341百万株ですが、ソフトバンクのIFRSにおける持分比率計算上、IPOに際して普通株に転換される優先株91百万株を差し引いた2,250百万株を起点とします。

これが上場による新株発行と優先株の転換により、2,464百万株~2,491百万株に増加することになります。

ソフトバンクの保有株数は798百万株で、IPO前の持分比率が35.5%、IPO後の持分比率が32.0~32.4%になります。尚、ソフトバンクの2014/3期の有価証券報告書では、(3ヶ月の決算期ズレを踏まえた)2013/12末の持分比率が36.26%と開示されていました。その後の株数の変動を踏まえても35.5%とやや平仄が合わない印象もありますが、取り敢えずこのまま行きます。

・・・

次にIPO前のソフトバンクのアリババ株の連結簿価の推定です。

ソフトバンクのアリババ株の連結決算上の簿価は、2014/3末で1,311億円です。単純なIFRSベースの純資産に対する持分が1,317億円で、のれん等による調整が▲6億円です(本来ののれんと2012年6月のAlibaba.comの非上場化(Alibaba Holdingsによる子会社株式の追加取得)による資本剰余金の減額が±約500億円相殺され、結果的にほぼ純資産ベースとなっている状況)。

これが2014/6末は、アリババのIPO時に普通株に転換される優先株(IFRS上は負債)の時価評価損の持分損失▲1,030億円を含めて、アリババの持分法損益が▲653億とのことなので、期末簿価は658億円になります。

そして上場前を2014/9末とすると、ソフトバンクが2014/9期第2四半期に、3ヶ月遅れで取り込むアリババの2014/6期第1四半期の純利益は実績1,990百万ドル×持分比率35.5%×為替105円=741億円の持分利益になります。(転換優先株の時価評価を除く)

この持分利益を認識した上で、上場直前の連結簿価は1,399億円となります。

・・・

ここからがみなし売却益の計算です。(累積OCI等の細かい影響は無視)


【ケース1:IPO株価60ドル×123百万株発行】

まずケース1ですが、みなし売却の譲渡原価は、1,399億円(35.5%)の内、持分比率の減少分(▲3.1%分)で▲122億円。

一方、譲渡対価は、新株発行による74億ドルと優先株の転換による純資産の増加51億ドル(2014/6末ベース)の合計125億ドル×新持分比率32.4%×為替105円=4,247億円になります。

なので、みなし売却益は4,125億円になります。

尚、転換優先株について、上場直前までの追加の時価評価損(株価60ドル前提)とみなし売却益の両建てとして計算すると、持分法利益が136億円減少し、みなし売却益が同額の136億円増加することになります。

ちなみに株価60ドルでのソフトバンク保有株の時価は5兆258億円、含み益で4兆4764億円になります。


【ケース2:IPO株価66ドル×149百万株発行】

次にケース2です。みなし売却の譲渡原価は、1,399億円(35.5%)の内、持分比率の減少分(▲3.5%分)で▲135億円。

一方、譲渡対価は、新株発行による98億ドルと優先株の転換による純資産の増加51億ドル(2014/6末ベース)の合計150億ドル×新持分比率32.0%×為替105円=5,031億円になります。

なので、みなし売却益は4,896億円になります。

また、転換優先株について、上場直前までの追加の時価評価損(株価66ドル前提)とみなし売却益の両建てとして計算すると、持分法利益が340億円減少し、みなし売却益が同額の340億円増加することになります。

株価66ドルでのソフトバンク保有株の時価は5兆5284億円、含み益で4兆8989億円になります。

・・・

さて、ということで、今回のIPO仮条件に基づくみなし売却益はざっくり4,100億円~4,900億円(税効果前)という感じですかね。

9月中にも上場ということになれば、これがソフトバンクの第2四半期決算に計上されることになると思います。

ソフトバンクとしても適時開示とかするのかな?とも思いますが、実績が出たら確認してみましょう。(全然違ったらすいません)


(9/20追記)

プレスリリース出ましたね。持分変動利益約5000億円。ほぼドンピシャです。

新株発行価格68ドルで為替109円で上の試算に当てはめると、5180億円くらいになるかな。まあ簿価が正確にはわからないので何ともですが。

ちなみに、このみなし売却益は新株発行価格がベースなので、90ドルを超えた実際の市場株価とは連動しません。ただ、含み益は市場株価ベースで考える必要あります。

まあ、しかし、アリババもソフトバンクもすごいね。



株主優待のIFRS上の取扱いの続きです。

もう少し調べてみたのですが、

KPMGのガイダンスに次のような記載がありました。

「4.2.430.50 In some cases, discount vouchers may be distributed to customers on a discretionary basis rather than as part of a sales transaction. Because the discretionary vouchers were not granted as part of a sales transaction, no liability is recognised for the vouchers distributed because there is no performance obligation; the voucher requires customers to make a purchase in order to obtain the discount. Therefore, the vouchers are treated as discounts against revenue when the vouchers are redeemed by customers.」

企業が(販売の一環としてではなく)任意で割引利用券を顧客に交付した場合、もちろんIFRIC13(カスタマーロイヤルティプログラム)は適用されないし、更に、企業が履行義務を負うわけではないので、負債計上も不要だということです。

つまり、将来、割引券が利用された際の収益が小さく計上されるに過ぎないと。

「However, the entity should assess whether the level of discounts awarded could have resulted in one or more onerous contracts in accordance with IAS 37 (see 3.12.630).」

但し、これが「不利な契約」に当たる場合は、IAS37に基づき不利な契約としての引当は必要だとされています。

これはちょっと意外でした。

不利な契約というのは、契約上の義務を履行することで損失が発生する場合を指しますので、例えば、割引券の内容が食事代の30%割引で、これが粗利率を超えるような場合は、その損失分(原価割れ部分)を引き当てるイメージなんでしょうか。

なので、将来の利用を見越した粗利益の減少分の引当が求められるわけではない、という立場です。

一方で、例えば優待券の内容がとにかく食事券2000円分とかであれば、2000円(の原価相当)を引き渡す義務があるので、こういう場合は負債を認識するんですかねぇ。

なるほどー。

・・・

但し、当然ですが、これは割引券の交付相手が「顧客」という前提であり、「株主」ではありません。

もしこれが「所有者(株主)の立場(capacity as owner)」で交付を受けているということであれば、資本取引として処理すべきではないか、という議論は依然としてあると思います。

しかし、もし、そもそも負債計上しないのであれば、資本取引として処理するものも何もないことになります(要するに仕訳なし)。

で、実際にその割引券が利用された際の割引分を資本取引(収益の増加と資本の減額)として認識するか?と考えると、さすがにそれは怪しいですよね。

一方、不利な契約として負債認識する(引当を行う)場合はどうでしょう?

いやいや、引き続き悩ましいな、という感じです。


すかいらーくの株主優待を見て、急に気になってきたので少々。

すかいらーくでは100株以上保有する株主に系列レストランで使用できる2000円分の食事券を株主優待として付与するそうです。

これって、IFRS上、どう会計処理するんでしょう?

・・・

考え方としては、①売上高から控除、②費用、③資本取引(配当)の3つが考えられます。

①は、これをIFRIC13のカスタマーロイヤリティプログラムに準じて処理するものです。但し、IFRIC13は企業が「販売取引の一部として」顧客に付与するポイント等が適用範囲なので、株主に付与する優待券についてはIFRIC13では処理されないと思います。

顧客に対する売上が計上されてないのに売上から控除するのも変ですし。

なので、①は不採用。

次に②を検討します。

公認会計士協会が公表している「我が国の引当金に関する研究資料」によれば、株主優待は、会社法の配当の手続きに依らず、所有株数に完全に比例しないことが一般的なので、配当ではなく費用処理するのが妥当とのこと。

そして、企業に費用負担が生じるもので、内容が期末日以前に公表され、利用実績等に基づいて費用を合理的に見積もることができる場合は、引当金計上すべきとされています。

なるほど。

またIFRS上の取扱いにも言及し、非現金資産を全ての株主に平等に分配する場合はIFRIC17「所有者に対する非現金資産の分配」に従って配当となるが、優待内容が所有株数に完全には比例しないので、やはり配当ではなく費用とするのが妥当と。(尚、IFRIC13には触れられていません)

ということで、③の資本取引も否定され、結局は②の費用処理が妥当なんですかね。

もちろん株主優待にも色んな類型がありますが、食事券は、企業からすると利用された際に費用が発生しますので、いわゆる鉄道会社の追加コストの掛からない乗車券等とは違って、費用処理するのが妥当ということでしょう。

・・・

しかし、本当にそうでしょうか。

個人的な意見としては、費用か配当かについては議論があると思います。

会計士協会資料にもある通り、IFRIC17が全ての株主を平等に扱う場合のみを適用対象としているのはその通りですが、だからといって、平等に扱っていないケースが資本取引ではないという結論にはなりません。IFRIC17は別に資本取引の範囲を定めた解釈指針ではないからです。

だって、例えば自己株式を特定の株主から有利又は不利な価格で取得しても、それは資本取引でしょう。全株主平等の取り扱いは資本取引の要件ではないのです。

IFRSでは、所有者の立場で(capacity as owner)行われた会社との取引であれば、資本取引として扱われます(IAS1)。

ただ、何をもって「所有者の立場」というかについての詳細なガイダンスはありませんが、株主優待は、株主であることを理由に無償で会社から受けるベネフィットなので、これに当たる可能性は十分にあるのではないでしょうか。

会社法上配当の手続きに依っていないという指摘もありますが、IFRS上の処理は経済実態に即して決定すべきですし、会社法的には、株主優待で資産を分配する場合は本当は現物配当に当たるのではないかという議論もありますし、株主平等原則違反という議論もあります。

軽微だから株主平等原則に反しないという立場もありますが、だとすれば、これって軽微とはいえ株主優待が株主への分配であることを自認しているとも言えるのでは?(株数に応じて株主を平等に扱わなかったとしたら、会社法違反ではあるが、配当は配当なのでは?)

ということで、企業にコストが発生する株主優待=費用処理(引当金)が通説で実務上も一般的なのかも知れませんが、IFRS上、資本取引(株主への分配)としてPLに計上しないという会計処理にも一定の合理性はあるような気がします。

生煮えですが。。

さて、ようやくすかいらーくの有価証券届出書を見ました。

前回は届出書公開前に決算公告ベースでいろいろ書きましたが、改めて届出書で判明した点を中心に補足しておきます。

・・・

まず、すかいらーくの業績についてです。

すかいらーくは上場に際してIFRSを適用しましたが、初度適用日は2012年1月1日です。

すかいらーくがベインに買収されたのが2011年11月で、IFRS3号(企業結合)の移行日前への任意の遡及適用も行っていませんので、買収に係る会計処理にIFRSは適用されていません。

従い、移行日時点の日本基準におけるのれんの残高を引き継いだ上でその後非償却とし、本来なら求められたはずの無形資産の認識は行っていません。

個人的には、業績管理やIRの観点から、敢えて遡及適用してブランドや顧客関係等の無形資産を認識した方がよかったんじゃないかという気がします。もちろん手間とコストが掛かりますが。

ちなみにのれん残高は1463億円ですが、主要ブランド別に区分されており(ガスト760億円、バーミヤン161億円等)、減損テストもこのブランド単位で行われています。

2013/12期の減損テストでは、将来CFの割引率は7.26%とのこと。

金利上昇の可能性もあり、今後の減損リスクはどうでしょうね。

・・・

この減損リスクとの関係で借入金を見てみましょう。

2014/6末の残高で1533億円。半期毎に返済するFacility Aと2019年6月に一括返済するFacility B(1050億円)で構成されています。

この借入の財務制限条項に、連結純資産の前期末比75%維持というのがあります。

2013/12末の連結純資産で740億円程度ですので、25%というと185億円。のれんが減損するとヒットしそうな感じですが、まあ当面は大丈夫なんでしょうかね?

・・・

次にベインについてです。

ベインキャピタルパートナーズLLCとすかいらーくのマネジメント契約により、ベインは年間7億円、上場に際しては40億円の報酬を得るそうです。

しかも、事業リスクの開示によれば、その報酬の一部が税務当局から否認されており、上場に際しての40億円も損金処理するものの税務リスクありとのことです。

ここまで生々しい開示が求められるんですねぇ。

ちなみにベインの投資額は、どうやら950億円程度のようです(2011年11月)。

その後、2013年6月に278億円を資本剰余金からの配当で回収、そして今回2014年10月に上場となります。

上場時の株価を想定価格の1450円として保有株の時価2756億円でIRR計算すると52.3%になります。

ただ、実際にはこのタイミングするのは、保有株190百万株の内、66百万株だけです(国内売出し43百万株と海外売出し23百万株。別途オーバーアロットメント枠7百万株)。

66百万株だと、想定価格の1450円で売却して964億円ですね。

通常、キャッシュ回収が遅れると、その分株価が上昇しないことにはIRRは低下していきますが、この時点で964億円回収できれば投資元本は全額回収でき、大幅なIRR低下は起こらなくなりますね。

引き続きベインはすかいらーくの60%超の親会社なわけで、Exitも容易ではないでしょう。この先どういうExitを考えるんでしょうかね。

・・・

さて、そのベインのタックスプランニングについてです。

決算公告からも、ベインの買収SPCだったBCJH6が2012年6月にすかいらーくを吸収合併したことはわかっていましたが、届出書によれば、更にその親会社のBCJH5によって2014年7月に吸収合併されていたことがわかりました。

つまり旧すかいらーくは、2007年に野村のSPCに、2012年にベインのSPC(BCJH6)に、そして2014年にベインのSPC(BCJH5)に吸収合併され、そのたびに存続会社(SPC)が商号をすかいらーくに変更してきたわけです。

その結果、現在のすかいらーくの親会社は日本法人ではなく、香港法人(Bain Capital Skylark Hong Kong Limited等)となりました。

届出書では、この合併により税効率面の不利益が解消されるとしています。

これはおそらくキャピタルゲイン課税の軽減を指しているものと思われます。

まず、BCJH5とすかいらーくの合併は、親子間の適格合併で、課税関係は特に発生しないものと思われます。

そして、これにより上場によるキャピタルゲインが発生する主体が日本のBCJH5ではなく、香港法人になります。日本だと高率の法人税が発生するところ、香港ではおそらく非課税になるものと思われます。

また、日本では、海外株主が一定の日本法人株式の譲渡を行った場合には源泉税を徴収しますが(不動産化体株式、事業譲渡類似株式)、日香租税協定により(不動産化体等のケースを除き)源泉税は免税となります(主目的テストの条項もあるようですが)。

これによりベインはキャピタルゲイン課税の軽減を実現しているのではないかと推測されます。

・・・

最後にValuationです。

前回は決算公告をベースに、連結営業利益150億円、のれん償却74億円、減価償却費66億円でEBITDA290億円と仮定していましたが、実際にはもう少し大きかったみたいです(特に減価償却費は150億円近くあった模様)。

直近の2014/6末時点のLTMでEBITDAは383億円程度です(届出書に合わせ、マネジメントフィー等も加算)。

そしてnet Debtは借入1,533億円、リース債務114億円、現預金155億円でnet1,491億円。株式価値が仮に想定価格1450円だとすると2,756億円。企業価値ベースで4,247億円です。

これでEV/EBITDAにすると11.1倍。前回の試算よりはマシですが、それでも高いですよねぇ。

マルチプルを8.0倍にすると、EVで3,066億円、net Debtを引いた株式価値で1,575億円、株価で829円になります。

ハイレバレッジな会社なのでPERで評価するのはイマイチだし、まあこんなもんなんじゃないの、、とも思いますが、どうでしょうかね。

・・・

ということで今回はここまでです。