塩野義製薬が大阪国税局から税務否認を受けたようです。
国税に事前照会していたにも拘らず現物出資が非適格と認定されたとのことで、しかも更正所得は405億円と巨額です。
もしやヤフーに続く組織再編の行為計算否認?
ということで、まだ詳細わからないところが多いですが、有報等をベースに初期的なまとめを。
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まず、事案の概要を整理します。
①塩野義は、英国ViiV社との50%:50%出資のJVであるShionogi-ViiV-Healthcare(以下、JV)を保有していました。JVは2001年に設立されたケイマンのパートナーシップです。
②2012年10月、塩野義はJV持分50%を英国の100%子会社Shionogi Limitedに現物出資しました。
③そして、おそらく②と同時に、英ShionogiはJV持分を英ViiV社に現物出資し、対価として英ViiV社株式10%を受領しました。
結果、塩野義の100%子会社である英Shionogiが英ViiV社の10%株主になったわけです。
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ちなみに2013/3期の連結会計上、塩野義は持分法を適用していたJVの簿価73億円と、受領した英ViiV株の公正価値との差額404億円を利益として計上しています。
今回、更正された金額と近いですね。(ここは後でちょっと触れます)
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さて、塩野義のプレスリリースによれば、②の英Shionogiへの現物出資が非適格と認定されたように思われます。
塩野義と英Shionogiは100%親子関係にありますので、適格現物出資の要件は、その完全支配関係の継続が見込まれることだけです。おそらくこの点について疑義はないでしょう。
但し、外国法人への現物出資なので、現物出資財産が国内の事業所の属する資産(国内資産)でないことも要件として必要となります。
25%以上保有している外国法人の株式は国内資産の定義から外れますので、もしJVが外国法人であれば、この要件もクリアすることになります。
しかし、JVはケイマンのパートナーシップなので、本邦税務上、法人扱いなのか、組合扱いなのか、疑義があるところです。
国税当局としては、ケイマンのパートナーシップについても法人扱いと認定するのではないかと思われる一方、今回の更正所得が連結決算上の利益とほぼ同額であることからすると、おそらくパートナーシップ持分は単体決算上も持分法に近い処理をしており、特に税務調整がなされていないのではないかと推測されます。
(ここら辺はまだしっかり確認できていないのですが)
なので、もし税務上JVが組合扱いだとすると、現物出資したのは外国法人の株式ではなく、JVが保有している資産ということになります。
これが国内資産に当たるかどうかは、基本的に国内で帳簿計上されているか、国内で管理されているか等によると思われます。JVの保有資産はドルテグラビルというHIV関連の薬に係る権利のようですが、国内資産と認定されうるのか、ちょっとわかりません。
とはいえ、本件は塩野義が国税に事前照会して適格との回答を得ていたことからすると、この国内・国外判定の事実認定で否認されたという可能性はあまり高くない気がします。
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もし適格要件を形式上満たしているにも拘らず否認されたとすれば、組織再編に係る行為計算否認(法人税法132条の2)の可能性も出てきます。
おそらく③の英Shionogiから英ViiVへの現物出資について、現地では非課税になっていたのではないかと思います。
2013/3期の塩野義の連結財務諸表を見ると、税前利益583億円に対し、税効果の注記で組織再編による税率への影響が▲26.6%とあり、税額ベースで155億円相当です。これを法人税率38%で割り戻すと税前利益で408億円。ほぼこの再編の利益に相当する感じなのです。
税効果会計適用後の実効税率が下がるということは、英国において、課税繰り延べではなく、非課税でステップアップしているということでしょう。
とすると、塩野義は400億円の含み益を有するJV持分を②の適格現物出資で英Shionogiに移転し、③で英ViiV株式と非課税で交換されたことになります。日本の国税からすると、本来、課税取引であるはずの③が英国現地で非課税となり、②は日本では適格なので、JVの含み益どこでも課税されないような印象を持ったのかも知れません。
ちなみに③については、この現地で非課税となる所得によって英Shionogiの実効税率が下がり、日本のタックスヘイブン税制の適用も考えられますが、英Shionogiに事業実態があれば適用除外が取れるでしょうから、これも難しいのでしょう。
但し、この②が適格であれば課税繰り延べなので、JVの含み益は英Shionogi株式の含み益になるわけで、日本の当局として永久的に課税権を失うわけではありません。
さて、これで法人税が不当に減少したと言えるのでしょうかね。
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塩野義が②を行わずに③を行っていた場合(或いは②の前に③を行った場合)、もちろんこの現物出資は非適格になります(第三者への現物出資。共同事業要件を満たす可能性もゼロではないかもですが)。
なので、③の前に②を行った事業上の目的がどう説明されるのか、気になるところです。
この点、③の必要性は、税務的には、日本から直接10%出資だと海外配当益金不算入も享受できませんし(要件軽減されてたっけ?)、ビジネス上、英Shionogiが現地で英ViiV株式を保有し、関与した方が望ましいということでいくらでも説明できそうです。
②との前後関係としては、別にどちらでも構わないでしょうけど、特段の差異がないのに、敢えて課税される順番を選ぶわけないですし、それが租税回避行為とも思えません。
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いよいよ考えられるのは、ヤフー判決に沿った「組織再編税制の趣旨に照らして」という議論です。
組織再編税制の趣旨に照らし、移転資産(JV)に対する支配の継続が塩野義グループとして見込まれないにも拘らず、外国法人を経由させることで適格要件を満たす帰結となることは不合理、といったことを国税が主張しているのでしょうかね。
英Shionogi株式の含み益として残っているにも拘らず、という気もしますが、もしこういうことなら、ヤフー判決の影響力恐るべし。。
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さて、今回はここまでです。
あまり調べられないまま書いたので、論点が明らかになったら全然違う可能性も否定できませんが、ご了承ください。
塩野義は遅滞なく異議申し立て等するそうなので、続報を待ちます。
(9/13追記)
Twitterで指摘頂いたところ等を踏まえての追記です。
まず外国事業体の取り扱いについて。
ケイマンの特例リミテッドパートナーシップについては、過去の判例で組合扱いとされた事例があります(最高裁の不受理で確定)。
ただ、ケイマンと類似するバミューダのLPSでは引き続き訴訟中ですし、現在の国税当局のスタンスについてはよくわかりません。
とはいえ、仮に国税当局が法人扱いを主張すると現物出資は適格になりますし、また、有報から察するに塩野義側がケイマンのPSを組合扱いしていることから、国税は敢えて法人該当性については争っていないのではないかと推測します。
とすると、ケイマンのパートナーシップが保有する無計資産の国内外判定の事実認定が争点となっている可能性はあります。
ちなみに本日の日経記事はこのように報じています。
『塩野義側はJV持ち分の現物出資について、海外同士の資産移転などの一定条件を満たせば簿価で譲渡したものとして算定できる「適格要件」に当たると判断』
「海外同士の資産移転」という言葉を使っている当たり、やはりこの論点なのかな、と思いました。
とすると、直接的には132条の2ではないかもですね。