米国のバーガーキング(Burger King Worldwide Inc.)がカナダでドーナツ・コーヒーチェーンを展開するTim Hortonsを買収するそうです。
最近話題のインバージョンという指摘もあるようですが、どんなディールか見てみましょう。
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まず、バーガーキングの時価総額は買収公表前の8/22終値ベースで96億ドル(約1兆円)の会社です。ファンドの3Gキャピタルが70%程度の持分を保有しているようです。案件公表後の8/26時点では時価総額109億ドルに上昇しています。
一方、Tim Hortonsは同じく案件公表前で米ドル換算で時価総額83億ドル(約0.9兆円)の会社です。こちらも案件公表後に株価が上昇しており、8/26時点では108億ドルになっています。
時価総額はほぼ同等の2社という感じですね。
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今回の買収により、バーガーキングとTim Hortonsはカナダの新設親会社の子会社になり、カナダ親会社が米国とカナダで上場します。
Tim Hortonsの株主に支払われる対価は、1株当り65.5カナダドルと新会社株式0.8025株です。新会社株式1株はバーガーキング株1株と同等に設計されます。
これを元に8/26時点で計算すると、現金は米ドル換算で59.8ドル、株式はバーガーキング株価31ドル×0.8025=24.9ドルで合計84.7米ドル相当になります。一方、Tim Hortonsの株価(米ドル)は81.05ドルです。
ぴったりと鞘寄せしているわけではないようです。もしかすると、今回の再編は両社の株主に課税が伴うディールなので、それによる影響なのかも知れません。
尚、Tim Hortons株主は、上記に代えて、買収対価として全て現金88.5カナダドル(≒80.9米ドル)、又は全て新会社株式3.0879株(≒8/26時点で95.7米ドル)を選択することも認められています。バーガーキングの株価が上昇しているので、現時点では株式を選択した方が有利になっています。
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買収対価が標準ケースの場合、バーガーキングではTim Hortonsの発行済株式数133百万株×65.5カナダドル÷為替レート1.09≒79億米ドルの買収資金が必要になります。
更に、Tim Hortons株主の全員が現金を選択した場合、最大で133百万株×88.5カナダドル÷為替レート1.09≒107億ドルの資金需要になります。
この買収資金の手当てについては、バーガーキングはDebtで95億ドル(JPモルガン、ウェルズファーゴ)、優先株で30億ドル(バークシャーハザウェイ)の合計125億ドルのコミットを得ているとのことです。
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株主構成については、標準ケースの場合、バーガーキングは発行済株式数352百万株、Tim Hortonsは133百万×0.8025=107百万株ということで、旧バーガーキング株主が相対的に77%程度の比率になります。
こちらも、仮にTim Hortons株主が全員現金を選択すれば旧バーガーキング株主が100%になりますし、逆に全て株式を選択すれば旧Tim Hortons株主が54%と逆転することになります。
万が一逆転した場合には、会計上、どちらが買収した扱いになるか微妙になってきます。相対的にはTim Hortons株主の方が大きいですが、バーガーキングの70%株主である3Gキャピタルが最大株主としては残りますし、時価ベースでプレミアムを払ったのもバーガーキングですので、悩ましいかもですね。
一応、以下はバーガーキングがTim Hortonsを会計上買収したという前提で続けることにします。
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ちなみに両社のBSを見ると、バーガーキングは総資産58億ドル(内、のれん6億ドル)、有利子負債30億ドル、純資産15億ドルという感じです(2014/6末)。
一方、Tim Hortonsは米ドル換算で、総資産22億ドル、有利子負債12億ドル、純資産4億ドルです。純資産4億ドルに対して時価総額が100億ドルを超えてるわけです。すごいですね。Tim Hortonsはかなりの規模の自己株取得を行ってるようです。
とすると、標準ケースでの買収価額は113億ドルなので、投資差額(無形資産とのれん)が109億ドルになります。また資金調達として有利子負債/優先株の増加が79億ドル、資本の増加が33億ドルです。
すると、新会社は総資産194億ドル(内、のれん等115億ドル)、有利子負債/優先株121億ドル、純資産48億ドルという会社になります。これはなかなかハイリスクな構成です。
更に、もし全て現金対価になった場合、買収価額は107億ドル(のれん等103億ドル)で、全て有利子負債/優先株での調達になります。
すると、新会社は総資産189億ドル(内、のれん等110億ドル)、有利子負債/優先株149億ドル、純資産15億ドルになります。
こう見ると、財務安全性の観点から、バークシャーハサウェイから優先株のコミットを得ているのは非常に重要ですね。
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最後に米国税務の話題です。
バーガーキングは今回の件がコーポレートインバージョンだと叩かれているわけですが、新会社がTim Hortonsの事業実体のあるカナダに所在しますので、仮に旧バーガーキング株主の持株比率が60%や80%を上回ったとしても、いわゆるIRC§7874のインバージョン対策税制の発動はないものと思われます。
一方、バーガーキング株主は、国内株式と交換で海外株式を獲得し、相対としておそらく議決権/持分の50%超を獲得するので(Tim Hortons株主の大半が株式のみを選択しない限り)、IRC§367によりキャピタルゲイン課税の対象になるようです。
しかし、今回のスキームでは、バーガーキング株主は、1株当り新会社株式1株か、新会社株式1株と交換可能な新設パートナーシップ持分1株相当(議決権あり)のいずれかとの交換を選択できることになっています。詳細は不明ですが、このパートナーシップ持分を選択した場合、米国でのキャピタルゲイン課税の繰延べが可能だそうです。(但し、パートナーシップ持分を得られる部分には上限があるとのこと)
大株主の3Gキャピタルは全てパートナーシップ持分を選択することを表明しています。
一応、これが§367を回避するスキームだそうですが、何故これで繰延べが可能なのか、これ以上の解説は正直無理です。
米国税務、難しいですね。。
ちなみに今回ブログ記載に当たって、色々とtwitterでご教示頂きました。ありがとうございます。