地元の中学に通っていたA君は、中学2年生の頃からうちの塾に通い始めて
大阪市内の公立進学高校に合格しました。
大学生時代の4年間は、うちの塾講師を続けてくれて子どもたちに大人気の
講師でした。
この春、IT系の会社に就職、プログラマーとして社会人一年目の忙しい
日々を過ごしていたようです。
ある日、A君と親しい講師仲間から「最近、職場で悩んでいるそうです」と聞いたので、
息抜きにでもと、行きつけの焼き鳥屋に誘ったところ、「僕、学校の先生になりたい夢が大きく
なってきて。まだ、親にもだれにも言ってないんですが」と明かしてくれた。
私は「人生は一度きり。抑えきれずに大きくなってきた熱い想いに正面から向き合って
自分自身の感情のままに進めばいいんとちゃうか?熱い想いに蓋をして生きて行けば、俺くらいの歳になった時に、取り返しのつかないほどの後悔が襲ってくると思うよ。まだ若いんやから、途中で方針転換を繰り返したって、いくらでもやり直せるしな」
と昔から変わらぬ自身の生き方と本音を伝えました。
すると、しばらく黙っていたA君は「そうですよね!僕決めました。会社辞めて教職の資格を大学の通信で取ります。塾長の今の言葉もそうですけど、さっきの塾生たちの反応を見て背中を押されたような気になり、腹を決めました」と、何か吹っ切れたような清々しい笑顔を見せました。
A君の言った「さっきの塾生の反応」というのは、焼き鳥屋に行く前に待ち合わせ場所にしたうちの塾での出来事でした。
この日、A君が塾に入ってくると、中学生の塾生を中心に彼の名前を呼び始めて駆け寄り、みんな大喜び。
「何してんの?元気?」「前に塾で教えてもらった数学の角度の問題、期末テストで出来たで!」「暇なときは塾に顔出してや」と教室内に声が飛び交うのです。
中には、事前にA君が来ることを私から聞いていた女子は授業が終わったのに、A君に会いたくて半時間も塾に居残るほど。
後日、塾の子どもたちにA君が中学校か高校の先生を目指して、今の会社を辞めることを伝えると、異口同音に「いいやん。すごーい。きっとええ先生になるやろなあ」と大歓迎していました。
うちの塾に中学2年生から通っていたA君が、高校大学と、そして、うちの塾での講師経験を通して、教壇への道に踏み出そうとする現実を目の当たりにして、何とも言えぬ嬉しさというか、塾という教育の場に携わる充足感と責任の重さを感じた2023年の師走でした。