※※ この本を読んで一言 ※※
児童向けに書かれた作品のようですが、大人でも十分に楽しめます。
180ページと薄いですが(汗)、読みごたえは十分で、独特の味わいのある殊能さんの世界観を堪能できます。
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殊能将之さんの作品を読むのは「黒い仏」「ハサミ男」「美濃牛」に続き4作品目になります。
殊能さんの作品は少ないのでこの「子どもの王様」も大切にとっておいたのですが、ついに読むことにしました。
読んでいる時は作品の舞台に「歪んだ世界観」を感じました。
団地の閉鎖性を感じますし、その外側の地域の事をよく分からないものとして描写は少なく、口うるさく意地悪に見える大人たちなど・・
それは子どもの視点からすれば団地と学校で世界は完結するために、他の地域の事はよく分からないでしょうし、ルールなどを守らせるために子どもたちを注意する大人は怖くて理解できない存在でしょう。
しかし大人であれば何でもないことも、経験の少ない子どもからだと「よく分からないけど何かヘンだ」と思うのはある意味当然なのでしょう。
その子供の視点を見事に表現した作品が、この「子どもの王様」なのだと思います。
ショウタが大人の世界を垣間見て
『大人になんか、なりたくない!!
ショウタは心のなかで叫ぶ。
いつまでも子供でいたい』
と思っていたのが、ラストでトモヤ見送った後には
『大人になりたいな』
となり、ショウタは何かを学んで一つ大人に近づいたようで、私が感じた「歪んだ世界観」が消失し、私でも理解できる世界になりました。
しかし改めて思い返してみたら、作品の中の文章に最初から歪んだところなど何もなく、ショウタたち子ども視点で見た世界が淡々と描かれているのを私が「歪んだ」と感じただけでした。
結局歪んでいたのは私の方でした(笑)。
私も子ども時代を経験しているのに、子どもの感覚を理解できなくなるのは何か寂しいものです。
そしてショウタも経験により一つ大人になったという事で、一つ何かを失ったのかもしれません。
最後になりますが、この作品は麻耶雄嵩さんの「神様ゲーム」と同じく、児童向けに書かれた「ミステリーランド」のレーベルから出ています。
そして「子どもの王様」は記念すべき第一回目に発売されています。
ミステリーランドの作家陣をみると錚々たる方たちが執筆されています。
「子どもの王様」も「神様ゲーム」もおよそ児童向けとは思えないので、他の作品もそうなのでしょうね。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆☆
独特さ ☆☆☆☆
ミステリ ☆☆
児童向け ☆