この本を読むに当たって本当に残念な事がありました。
それがなければ、この作品の個人的評価はもっと高い位置になっていたのではないかと思うくらい残念な事でした。

それはハサミ男を読む少し前に、ある本(ハサミ男ではない本)を読み終わるといつもどおり他の方のその本についての感想、解説、ネタバレのサイトを見にいきました。

そこでハサミ男とは関係のない書評の掲示板の投稿者の感想で、「ハサミ男が女だったように・・」のような記載がありました。
ハサミ男とは関係ない書評の中でそれをさらりと書いちゃあダメでしょ!と思っても後の祭り・・

ここで読む前に1番のトリックのハサミ男は女と言うのを知ってしまいました。

そんな訳で当初は叙述トリックやどんでん返しの小説として有名なこの作品を楽しみにしていたのですが、読むときはテンションが下がり気味で読んでいました。

ハサミ男のパートはともかく、警察パートはとても面白かったです。

結果、堀之内が模倣犯だったのは全く想像していなかったのでビックリしました。

堀之内を追い詰めるための目黒西署の刑事達の動きにも隠された意味があったと知ったとき、本来であればこの作品はハサミ男に対しての叙述トリックと、刑事が模倣犯を追い詰めるトリックが並行して進行していくところを、私は半分楽しめなかったのが残念です。

全編を通して気になったのは、安永知夏の女っぽさを隠すためなのか、男か女か分からなくさせている口調がものすごく不自然に感じます。
しかしところどころハサミ男が女であることが分かる記載があるので、そのへんは作者の気遣いでしょう。

安永知夏や樽宮由紀子は共にすごく美人で聡明な女性ですが、人間的にどこか欠落している設定で読んでいて気分のいいものではないです。
それでも樽宮はかわいそうな被害者ですが、安永は不確実な自殺方法しかとらない自殺未遂常連の隠れかまってちゃんで、それでいてこれからも犯行をしそうな終わり方だったので、後味はよくないです。

それに比べたら堀之内もクズ人間でしたがまだ人間味があったと思います。

これまでいろいろ推理小説を読んできて、堀之内のような礼儀正しい警察エリートのような、立ち位置が犯人から最も遠いと思われる人物が犯人と言うのは多い気がしますね。
そのうち今まで読んだ本で、犯人一覧を作成したら、推理小説において、どういった者が犯人かその傾向が分かるかも知れません。

(個人的評価)
安永知夏  ××
樽宮由紀子 ×
堀之内   ☆
署の刑事  ☆☆☆