※※ この本を読んで一言 ※※
質の高いミステリでいつも私を驚かせてくれる歌野さんの作品です。
久しぶりに「ミステリ小説」を読んだ気がします。
今回も「こう来たか!」と驚かせてくれます。
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歌野晶午さんの作品は5冊読んでいて、これで6冊目になります。
そして「密室殺人ゲーム」シリーズの第3弾。
今回はどんなふうに驚かせてくれるのか楽しみにしていました・・と同時にそろそろネタ切れになって苦しい展開になってやしないか心配にもなりました。
そして読み終わって・・
まず思ったのは、上でも書いていますが、久しぶりに「ミステリ小説」らしい作品を読んだ気がします。
殺人事件があり、トリックがあり、登場人物の一つ一つの発言に後々意味がある事が判明する・・等、ミステリ小説要素てんこ盛りです。
もっとも正統派ではない超・変化球的なミステリなんですけどね(笑)。
この作品では題名に「マニアックス」とあるように、当時の最新技術である「マニアックなネタ」をトリックに使用して、今までにない方法で殺人を行っています。
また2000年以降、一気に世の仮名に広まった動画配信を題材にしています。
インターネットから家庭用Wi-Fiを経由してロボットの遠隔操作したトリック&アリバイ工作、FMトランスミッターで飛ばした音声をラジカセで再生させるなど、今の技術で可能な方法を示していて、よくこんなことを考えついたものだと感心します。
さしずめ「ぼくのかんがえたあたらしいトリック」を披露するための作品だったと思います(笑)。
この作品は最新技術(?)を用いたトリック、動画配信を利用して一人で最大5役を同時に演じていたこと、動画配信を利用して劇場型犯罪を演出し、視聴者を巻き込んだ事、殺人事件の動画配信により世の中が不安になるなど、新たな犯罪の手口や展開に驚かされました。
そしてこの作品のもう一つの特徴として、敢えて結論まで明かしていないことが多いことでしょうか。
大学院生の溝口の殺害の手口はメタマテリアルによる透明マントを利用した、で止まっていて正解は語られていません。
またラストの東堂のこのゲームをした動機も最後まで語られないまま途中で終わっています。
世の中というのは分からないことの方が多いという事を示しているのでしょうか。
しかしさすがに密室殺人ゲームも3作品目になると、刺激になれた私にはちょっとパンチが足らなかったように思いました。
もっとも「密室殺人ゲーム」を「発明」したこと自体が歌野さんのすごい事なんですけどね。
さてここからどうでもいい感想を書いていきます
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1
物語中に、登場人物に世の中の世相を長々と語らせるシーンは萎えます。
この作品では、頭狂人が今の世の中では隣人や他人には関わらないようになっていることを長々と語っています。
作者が思っていることを登場人物に語らせているのでしょう。
実際にみんなが分かっていることを長広舌をふるっていたらさぞかしウザいことでしょう(汗)。
2
作中では殺害現場の写真等を写真投稿サイトに投稿して画像をメンバー間で共有しています。
これは物語の中だけでなく実際に殺害現場の写真とかが投稿サイトにありそうだから怖いです。
死体の写真でなくても、見る人が見ればかなりヤバい写真もありそうです。
しかし作品でも言及されている通り、運営側のプログラムや人の目で全部チェックはできないでしょうし、疑わしい画像というだけでは閲覧停止や投稿禁止にできないでしょう。
そうなるとどんな画像があるのやら・・もう野放し状態でしょうね。
3
これは一つ前に読んだ高里椎奈さんの「銀の檻を溶かして」でも言っていますが、パソコン、スマホや最新ガジェットの使い方や動画投稿、配信の生中継などは、これを刊行した2011年なら目新しかったと思います。
しかしもう12年も前のことであり、現在これらの描写を読んでいても当たり前に感じてしまいます。
こういう作品は出てすぐに読めば新鮮に感じるのでしょう。
もしこれを2050年に読んだらかなりレトロな技術と思うのかもしれませんし、一周回って新鮮に感じるのかもしれませんね。
4
私が読んだ「葉桜の季節に君を想うということ」「密室殺人ゲーム王手飛車取り」「ずっとあなたが好きでした」の感想でも触れていますが、この3作品と今回の作品に共通していますが、歌野さんは愛知県にゆかりがあるのではないでしょうか。
今回は愛知県の千種警察署とその周辺が出てきました。
歌野さんは千葉県出身で東京農工大学卒業だそうですが、過去に愛知に住んでいたと予想(笑)。
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もうさすがにこれ以上は密室殺人ゲームシリーズは続かないかもしれないですが、もし新作が出たら必ず読みたいと思っています。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆
驚き ☆☆☆
登場人物 ☆☆
新しさ ☆☆☆☆☆