「葉桜の季節に君を想うということ」は今まで読んだ中でもタイトルのキレイさは最高だと思っています。
そして何かとても深い意味がこめられているようで大好きなタイトルです。

さっそく内容はと言うと、叙述トリックで有名な本作だけあり、驚きがありました。

読んでるときにはトリックを見破ってやるという気持ちでいたのですが、登場人物の年齢や物語の時間軸など気がつかず完全にだまされました。

麻宮は完全に若い姿を想像していましたし、麻宮=古屋も気づかず、妹の綾乃も20歳くらいと思いながら読んでました。

物語としてはいろいろなエピソードが最後に一つになって、これまたキレイにまとまっていると思います。

しかしこの物語・・世間では賛否両論のようです。アマゾンのレビューではキレイに評価が分かれています。このような作品も珍しいのではないでしょうか。

私も面白いと思いましたが、だからといって手放しで人にオススメできるかと言うと微妙なところです。

なぜかと考えてみると、個々のにエピソードがドラマチックではないからかと思います。
2件のヤクザの殺人事件やヤバい会社のインチキ商売と保険金殺人はホントなら重大な事件ですが、なぜかあまり印象的でないのです。

また探偵役の将虎が「何でもやってやろう」という元気なおじいちゃんなのに、なぜかあまり魅力的に感じないのも原因なのかもしれません。

しかし物語の中での人の心の機微については上手に書かれていたと感じます。
特に安さんとのエピソードは必要ないという意見もありますが、安さんの悲哀がとても印象的で、救いがありませんが私は好きです。娘探しには将虎は私の出身の愛知県にきていますし(笑)。

ただこの作品を受け入れられない方もいるようで、検索サイトでは「葉桜の季節に・・」と入力すると検索候補に「嫌悪感」と出るあたりがそれを物語っています。

タイトルにある「葉桜の季節」は、この物語の主題でもある青春を過ぎた高齢者達の生きている今を表しているかと思うと、なかなか考えられたタイトルではないでしょうか。

(個人的評価)
だまされた度    ☆☆☆☆
人生について    ☆☆☆
蓬莱倶楽部のその後 ??? 
タイトル      ☆☆☆☆☆☆