※※ この本を読んで一言 ※※

前の2作品よりパワーダウンした感じもありますが、この作品で「死亡フラグ」シリーズ以外の世界(七尾ワールド)の広がりを感じました。

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今回は七尾与史さんの死亡フラグシリーズの第3弾「死亡フラグが立つ前に」を読みました。

この本を選んだ理由は、ひとつ前に読んだ宇佐美まことさんの「少女たちは夜歩く」がダークな雰囲気の作品であったため、気分転換に明るい話が読みたかったからです。

 

そして読み終わって、短編としてはそれぞれ味があって面白かったのですが、死亡プラグシリーズとしてだいぶパワーダウン・・というかネタ切れしているのかな~という印象です。

それはこの本のメインであるはずの「死亡フラグが立ちましたのずっと前」が正直この短編がパワーダウンしたと感じる原因な気がします。

 

私が前作「死亡フラグが立ちました! カレーde人類滅亡!?殺人事件」の感想で”本宮が人類滅亡の危機から救った設定が追加されている”と事を書きました。

 

そしてこの短編でその真実が語られているのですが・・

アクション性の高い展開は「死亡フラグが立ちました! カレーde人類滅亡!?殺人事件」に近いですし、本宮と陣内の性格も前の2作品でよく分かっていますし、肝心の「死亡フラグ」はもうほとんど出てきませんし、どんなにピンチになろうとも最終的には本宮も陣内も生きて人類を救っている事が分かっているので緊迫感がないですし・・など気になる点が目立ちます。

 

こうして3作品を読みおわると、個人的には最初の死亡フラグが立ちました!が一番「死亡フラグ」的であったな~と思います。

 

ただしこの感想はこの作品の一面でしかないことを、この本を全部読み終わって最後の七尾さんの作品の宣伝のページを見て悟りました。

 

この作品は七尾ワールドの交差点というべきなのでしょう。七尾ワールドの別作品のキャラクターが登場しているのですね。

 

それを知ったのは巻末の本の宣伝のところで「殺戮ガール」が単発で発売されているのを発見しました。

調べていくとこの本に収録されている「ドS編集長のただならぬ婚活」は「殺戮ガール」の後に書かれているようですね。

七尾さんは「殺戮ガール」と「死亡フラグ」の世界観をこの本の中で交わらせたかったのでしょう。

 

そうすることで七尾さんは自分の作品の中にいろいろなキャラクターを産み出し、それぞれのキャラクターの世界観を交わらせて、それぞれのキャラクターの視点で物語を広げていくやり方なのかなと思いました。

 

これは面白いし、ネタ切れにもならないと思うので上手いやり方だと思います。

こう思うと、ネタ切れでパワーダウンしたと思っていた短編がガラリと評価が変わります。

 

「死亡フラグが立つ前に」は話としてはそんなに面白くないと思いましたが、「狩猟者」という存在を産み出し、本宮や別シリーズのキャラクターと絡ませれば面白くなるかもしれません。

 

「キルキルカンパニー」の個性的な殺し屋と、強運(?)のために死なないターゲットの話はコメディとして、この本の短編の中では一番面白いと思いました。

 

ただ個性的な殺し屋の話だと伊坂幸太郎さんの「グラスホッパー」の殺し屋シリーズを思い起こさせます。

しかしこれは死亡フラグシリーズや他のシリーズとクロスさせることで展開が格段に広がるので、面白いシリーズになる可能性は高いと思います。

 

ちなみに「ドS編集長のただならぬ婚活」に出てくる主人公の財前の話も探偵物語と独立してシリーズ化されているのでしょうか。

また殺戮ガールである天王寺は支離滅裂なキャラクターですが『殺戮ガール』の中での彼女はどういう描かれ方をしているのか気になります。

 

さてここでどうでもいい感想を2つ書きます。

 

一つ目がこの死亡フラグシリーズに出てきた、陣内トオルや「ドS編集長のただならぬ婚活」に出てくる主人公の財前は「そこそこのイケメン」という表現がされています。

そして「キルキルカンパニー」の山道も、「死亡フラグが立つ前に」の冬馬もきっと「そこそこのイケメン」だと思われます。

 

これは七尾さんが男性キャラクターを描く時の常套手段なんでしょうか。

きっと七尾さんがドラマ化になるのを意識して、若手イケメン俳優が演じても違和感がないようにそういう設定にしているのではないかと思います。

 

もう一つは最近YouTubeで七尾さんがチャンネルを持っていることを知り、見てみました。

主に映画やドラマのレビューや考察をしていらっしゃるようです。

私は映画もドラマもアニメも見ないので結局七尾さんの動画を見ることはありませんでした(汗)。

 

七尾さんのチャンネルは投稿本数も多かったので、映画やドラマが大好きでかなりご覧になっているのでしょう。

執筆業や歯科医業もしているのに、あれだけの数の映画等を視聴して動画を投稿しているバイタリティには頭が下がりますし、私も趣味をもっと頑張らなければと思った次第です。

 

さて七尾さんの作品ではいろいろな作品のキャラクターが出てくる事が分かったので、今後七尾さんの作品を読むのが楽しみです。

 

(個人的評価)

面白さ    ☆☆☆

登場人物   ☆☆☆☆
死亡フラグ的 ☆

今後の展開  ☆☆☆☆☆