※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※
これで麻耶雄嵩さんの作品を読むのは8作目になります。
今まではメルカトル鮎が出てきても、主役でなかったせいかあまり活躍していない印象がありましたが、ここでは探偵らしく、短編全ての事件を推理し、見事に解決しています。
さすがは銘探偵!
私はこういうのを読みたかったのです(笑)。
メルカトル鮎の魅力が存分に味わえると思います。
ただしその分、麻耶ワールド、麻耶理論ともに抑えめです。
もっともさらりと幽霊の存在を受け入れたり、妻の書いた小説を貶されただけで殺人を起こしたりして、開いた口が塞がらないくらいの麻耶ワールドはありますが(笑)
私が読んだ今までメルカトルが出てきた作品では天才的な推理を披露しながらも事件の解決をしなかったメルカトル鮎ですが、これでメルカトル鮎がどういう人物かより多く知ることができました。
なるほど・・奇人変人、自己中心的、冷酷無比、無慈悲、傍若無人など彼を表現する言葉は多々あるでしょうが、美袋を友人と言ったり、事務所を構えるなど、冷血漢ながらも社会性はあるようです。
しかし物語のなかで、自分の都合で事件を起こすのも厭わないダークヒーローであることも分かりました。
そんな長編の推理小説には向かない真の天才と自称し、まさに悪魔の如き頭脳で言葉どおりの活躍をするのに、一作目の「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」でいきなり死んでしまったのは、もったいないの一言です。
メルカトルがどんなに活躍しても、それは過去の話なんですから。
しかし相棒と言うか、友人兼語り部だったんですね。
ただ美袋は全く顔が見えません。どんな顔も想像できません。
それは美袋が語り部なので、語り部が自分の顔の特徴や容姿の説明をしないのは当然なのですから。
読み終わった後に改めて表紙を見直し、白いスーツ姿は実は美袋なのかもと思いました。
メルカトルは黒いタキシードに蝶ネクタイにシルクハットですが、表紙は明らかに違うからです。
実際は誰なんでしょうか。
さてここからどうでもいいツッコミをしていきます。
麻耶理論は抑えめではありましたが、この作品でも麻耶理論を感じるところはあります。
一つ目は甥が伯父の変装をするというのは、血族とはいえちょっと無理があるのではないでしょうか。
ちなみに私は伯父(叔父)の誰にも似てないと思うし、私の親戚を見ても伯父(叔父)と甥が誰も似てる例はありません。
ただ、赤の他人より似ている割合が高いでしょう。
二つ目は拳銃を撃った時の硝煙反応は服全体に出ると言うのを聞いたことがあります。
なので手袋を捨てただけでは不十分で服も処分しなきゃダメだと思います。
ただこの記述が出てくるのはメルカトルの書いた作中作なので、敢えて麻耶さんが分かっていて残した可能性もありますが。
三つ目は「シベリア急行西へ」と言う話の中で唐突に「死兆星」が出てきたのに驚きました。
死兆星と聞いて「北斗の拳か」とツッコんだ人は多いのではないでしょうか(笑)。
なお調べたら死兆星は本当にあるとは知りませんでした。
ただ本来は「死兆星が見えなくなったら死ぬ」らしいですが、私は北斗の拳の「死兆星が見えたら死ぬ」の方しか知りません。
なお同じ「シベリア急行西へ」で「ジェットストリームアタック」という言葉が出てきました。
私より年上の麻耶さんなので、世代的にガンダムや北斗の拳を見ていたのでしょう(笑)。
今回メルカトル鮎についてだいぶ分かってきたので、次にメルカトル鮎が出るときはより楽しめる事でしょう。
(個人的評価)
麻耶ワールド ☆☆☆
麻耶理論 ☆☆
メルカトル鮎 ☆☆☆☆
面白さ ☆☆☆