この作品は例によってインターネットでミステリー小説を検索した結果です。
そして西村京太郎さんの作品を読むのはこれが初めてです。
これを読む前は、恥ずかしながら西村さんの印象は、十津川警部のトラベルミステリーの印象しかありませんでした。

 

そして読んだ感想は・・ど真ん中の正統派社会派ミステリー小説であり、しかもものすごく面白いミステリー小説でした。

 

 

なおこの作品は1971年に発表されたそうです。それにもかかわらず、現代でも通用しそうなトリックだと思いました。

 

 

ちなみにこれと同じ印象を赤川次郎さんの「マリオネットの罠 」でも受けました。

 

大御所と呼ばれる人たちの名作は30年や40年くらい後に読んでも違和感なく楽しめるということですね

 

クローズドサークルにする方法も、現代で携帯電話があってもかなりの奥地のホテルには届かないでしょうし、ポツンと離れたホテルの通信線はおそらく電話線と同じルートを通っているので、この物語同様に線を切られたら終わりですから。

 

スキーも雪上車も壊されたら現代でも何もできませんし。

 

冒頭に「双子が犯人で替え玉トリックを使っている」と宣言しているので、読んでいる最中はホテルにいる誰かが双子であり犯人だと考えながら読んでいました。

 

早川が怪しいと思っていましたが、理由までは分からなかったため、終盤の謎解きを読んで、「そう言われればそうだよね!!」と納得しました。

 

そして東京と宮城の事件が並行しているものがどう絡むのか想像もつきませんでした。

 

終盤に2つの事件が結ばれるとなるほどと思いました。

 

それと同時に東京の強盗事件はやる意味あったのかな~と思えます。

 

親が死に嘆き悲しんでいるところを嘲笑する方が、助けない無関心より悪質に思えますので、強盗なんかさせずにホテルに小柴兄弟を呼んでおいて、殺すこともできたのではと思います。
そうすれば流れ弾で女の子が死ぬこともないし・・

 

なので東京の強盗事件は必然性が弱く双子のトリックは1組だけではないと言いたいがための「物語上のトリックのためのトリック」だったのでは思ってしまいます。

 

 

また犯行動機も弱いうえにあまりに逆恨み的で身勝手でした。

 

お母さん思いなのはいいことなんですけどね。
電車で乗り合わせて、倒れるところを目撃して何もしなかったのもどうかと思いますが、近距離だからって乗車拒否した田島はいけませんね。

 

そして他にも疑問も浮かびます。

 

 

・本物の拳銃をどうやって手に入れたのでしょうか。

 

 

・私は近距離でタクシーを使ったことはないんですが、東京じゃ乗車拒否はそんなに多いんでしょうか?

 

 

・免許証を取ったら指紋も採られるでしたっけ・・それとも受け取りで拇印を押す時ってあったんでしょうか・・覚えていません。

 

 

・矢部の密室での首吊りはやっぱり自殺で、第一のカードは入ってきたときに壁に貼ったのんでしょうか。

 

 

・五十嵐は本当に京子を手篭めにするつもりだったのでしょうか。京子を呼び出すために鍵を開けていたのに、犯人に入られそして殺されるのはタイミングよすぎな気がしました。

 

もし早川が鍵のかかっていない部屋を探してたまたま開いていた五十嵐の部屋で凶行に及んだとすれば、ずいぶん行き当たりばったりですね。そうだとすれば京子に見られなかったのはラッキーだったのでしょう。

 

・病院で母親が死んだとき(たぶん)西崎は大きなマスクをして偽名を使っていますが、マスクは風邪だったかもしれないと書かれていますが、偽名の使用は明らかに不自然であることからこの時から復讐を考えていたのでしょうか。

 

冒頭を読みなおすと、母親の死亡から少し経ってから兄弟で犯行を決意しているように感じますが。

 

・物語中で双子のどちらが実行犯か分からないため逮捕できない事が幾度も続いて、読んでいても小柴兄弟と西崎・早川兄弟にムカ~ときましたが、現代なら何かいい方法で特定できないものなんでしょうか。

 

 

今なら早川の部屋で髪の毛を採取してDNA鑑定をして・・とありそうですが、結局どっちかもしくは2人のDNAが検出されても「入れ替わった後に自分の髪の毛が落ちたのだろう。私はやっていない」と言えばどっちが実行犯かわからないか・・

 

 

・そもそも20歳過ぎた大人の双子が全く見分けがつかないと言うことはあるのでしょうか・・と思いインターネットで「双子 見分けがつかない」と検索して画像を見ました。

 

 

大人の双子であれば二人で並んで注意深く見れば判別できそうですが、パッと見ただけとか、片方だけしか見ていないと分からないかもしれません(笑)

 

 

・・と相変わらずしょうもないツッコミを入れましたが、面白い作品である事に変わりはありません。

 

 

最後に全くどうでもいいことですが、私が最もよかったと思ったことは・・

 

アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった 」を先に読んでおいたことです。
インシテミル 」でも「そして誰もいなくなった」がネタにされていましたが、この物語ではもろにネタバレしています。オチまで語っています。


もしも「そして誰もいなくなった」をそのうち読もうと思っていた人が先に「殺しの双曲線」を読んだら「おいおい!そりゃないぜ!!」と思うかもしれませんね。

 

(個人的評価)

 

 

ミステリー         ☆☆☆☆☆
双子トリック        ☆☆☆☆☆
犯人へのムカツキ度 ☆☆☆☆☆
双子犯罪万能説   ☆☆☆☆