赤川次郎さんの小説は初めて読みます。

 

ものすごくたくさんの作品を出されてるんですね。そしていろいろなジャンルに挑戦されている意欲的な作家さんというイメージがあります。

 

その中でマリオネットの罠を選んだのは例によってインターネットでどんでん返し系の物語と紹介していたからです。

 

物語を読み進めてきて、雅子が死んでもうページ数がなくなってきて何がどんでん返しなんだろうと思ってきたところで、そこからまさか修一が黒幕だったことが判明し、とても驚きました。

 

いつもながら全く気づくことができませんでした。

 

読んでいてとても面白かったです。

 

そして驚くべきは内容に全く古さを感じさせないことです。
この作品は1977年(昭和52年)に発表されたそうです。
この物語が2017年が舞台でもあまり違和感がないと思います。

 

私は珍しく解説を読んで、そこに書いてありましたが、赤川さんは「流行を取り入れない。取材をしない」とあり、それ故にこの作品も古くさくならないのだと納得しました。

 

 

それにどんでん返し系も昔からあったのだと当たり前のことに気がつきました。

 

私が今読んでいるミステリー小説は「綾辻以降」がメインですから、ついついどんでん返しも叙述トリックも最近の物だと思いがちですが、アガサ・クリスティとかが昔からやってたでしょうからね。

 

さて内容に古さを感じさせないとかきましたが、文章に古さを感じるのは私の赤川さんに対する先入観でしょうか。


そして今風の小説であれば、修一の黒幕であることに対して、それを示す伏線がさりげない記述が何箇所かあると思いますが、この作品にはそれがありません。

 

 

 

 

といろいろ批判めいたものを言っていますが、私は赤川さんのような文章も好きです(笑)。

 

そしてこれも私の感覚的な問題ですが、展開が今風でないというか・・いろいろ都合のいい人物、都合のいい展開が目立ちます。

 

 

特に「園編」では警察が一般人の美奈子を潜入捜査に送り込んだり、ブローチ型の発信機が出てきたり、日本の療養所の庭に逃走防止のためにドーベルマンを放していたりと、スパイ小説的であり、リアル志向の現代ではなかなかお目にかかれない展開やアイテムが出てきて楽しませてくれます。

 

 

登場人物としては上西が物語にとってとても都合のいい人物ですし、少女の雅子が訓練もなく一撃で人間の急所を突いて殺すことができたり、何ヶ月も警察から逃げ回れたりと、小説ならではな気がします。

 

これが極端になると「トンデモ本」になるんのでしょうか。

 

しかしこれも面白さをスポイルするものではないので、スルーすれば気になりません(笑)。

 

 

後はこれは時代の影響ではなく赤川さんの書き方の問題かも知れませんが・・

 

登場するメインの女性が無理してがんばっている感じがします。そして男性はみんなセックスしか頭にないのかと思えてきます。

 

特に美奈子は美しく聡明で健気で一途でそれでいて危険を顧みない、そして機転の利く強い女性です。女性の描き方は時代的に日本のウーマンリブ運動などの影響ででしょうか?

 

男性は高度経済成長でイケイケだったから?それともまだ男性優位が根強く残っていたから?それとも赤川さんがそういうのが好きだから(笑)??

 

ただし私はこれが赤川さんの作品の1つ目なので、他の作品を読めばまた違う印象を持つと思います。


最後にちょっと脱線しますが、作家による文章の書き方に関したちょっとしたマイエピソードがあります。
私がよく本を借りる読書の先輩に「
〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」を貸したところ、その本を読んだ先輩は文章に関して”書き方が今風だ”と評しました。

 

 

 

高齢の大御所作家と新進気鋭の若手作家では考え方や言葉遣いの違いが、自然と文章に表れるので、文体が同じではないのが当然であると改めて思った次第です。

 

 

 

(個人的評価)

 

面白さ    ☆☆☆☆
どんでん返し ☆☆☆☆
修一の腹黒さ ☆☆☆☆
雅子の狂人度 ☆☆☆