麻耶雄嵩さんの作品を読むのはこれで3作目になります。
麻耶さんの作品と言うだけで、甘い評価をしてしまうのはもうどうしようもないです。
ちなみにこの本の前に読んだ本は読むのに(600ページくらい?を)5日間くらいかけましたが、この本は(500ページくらい?を)1日で読みきりました。
読んだ感想は、「ああ・・麻耶ワールドだ」です。
もちろん褒め言葉です。とにかくいろいろ驚きました。
娘のみかげ(三代目)が2003年に謎を解いて母親のみかげ(二代目)の汚名をそそいで、普通に大団円で終わらせれば、ものすごくキレイにまとまって終われたと思いますが・・それをやらないのが麻耶さんという作家なんでしょうね(笑)
二代目はツンデレ?というよりデレの要素は少ないですから、ドSと言った方がいいかもしれません。
三代目はかわいくて健気ないい子と母娘ともラノベ的です。
しかし静馬と絡むと両方ともいい感じで物語が進むのは麻耶さんの巧さだと思います。
ラストで二代目がただの自己中、というよりはただの殺人狂だったときは普通なら嫌悪感がありそうですが、「まあ麻耶ワールドだからな~」と思うと、むしろ父親の被害者として可哀想に思えます。
前半で、山科が初代みかげの崇拝ぶりが度を超しているのと、二代目に対してしきりに「失敗は許されない」と言っているところで、山科にとって娘の存在価値は、父親の道具で初代の代わりとしか思ってないのではと思いました。
その解釈はあながち間違ってはいなかったようです。
他の方の感想や批評にはミステリー小説への問題提起や挑戦と言う意見もありましたが、私にしてみれば、とにかくラストでいろいろひねりすぎ、そしてぶっ飛んでいる、でもそれが面白いです。
なおこの物語は静馬と三代目みかげがに未来がありそうな終わり方なので後味の悪さは感じませんでした。
ちなみにこの物語において、探偵=犯人であり、二代目が証拠をでっち上げして自作自演をやってました。
自作自演であれば自分の都合のいいように犯行トリックを組み立てることができます。
もしかしたら他の解決したという事件も本当に解決したのか、と疑ってしまいます。
死体と誤認逮捕の山を築いていなければいいのですが・・いえ、みかげを名乗る者は代々頭脳明晰なので、きっときちんと解決しているとは思いますが。
なお推理小説では簾の奥にいるのは本人でない可能性が極めて高い(「鴉」でもそういうのがありました)ので、誰かと思っていたら今度は死体であり、しかも二代目の腹話術だったとは!
さらにそこでオコジョを操って死体を倒れさせたり起爆装置を起動させたり・・
あと冬の夜の雨の中で瓦屋根の塀を渡り、刑事の背後に回り込んで気絶させるのは、昔にプレイステーションでやった忍者ゲーム「天誅」を彷彿とさせるアクション性・・現実味が薄いです。
いろいろあげ連ねましたが、私とってこの物語にはトリックに無理があるとか現実にできるかは関係ありません。
麻耶理論は全てを超越するんですから(笑)
個人的にツボにはまったのが、「1985年当時のゲーム機は一人か二人で遊ぶ」と言う記述です。
懐かしいです(笑)。
その頃はまだファミコンでしょうね。
2003年ならまだWiiもDSもPSPもないですが、今なら複数プレイができますからそれを意識して書いたのでしょうか。
私は今でもゲーム機でパーティゲームもネットゲームもやらず、一人で遊んでいますが。
しばらく隻眼の少女で得た麻耶ワールドに浸りながら他の本を読み、効果が切れた頃に別の麻耶さんの本を読もうと思います。
最後にどうでもいいことですが、もう一人の主人公の種田静馬の名前は、二代目みかげに”種馬”と言わせたかっただけの理由のためだけに決定されたのでしょうか?
だとすると・・VIVA!麻耶理論!ブラボー!!麻耶ワールド!!
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆☆☆
トリック ☆☆
登場人物 ☆☆☆☆
麻耶ワールド ☆☆☆☆☆☆☆☆☆