この記事は「オーレン小屋編」のつづきです。
一晩ぐっすり眠って体力回復!
…といいたいところだけど、テントの結露が気になって眠りが浅かった気がする。
「寝返り打った時にテント触ると『冷てっ!』ってなるっぺよ…」
「これは今後の課題だね」
最終日、今日は麦草峠へ戻るだけだ。
まだひっそりとしているオーレン小屋を発って、まずは天狗岳を目指す。
小屋の前では小屋番さん(もしかしたらオーナー?)が登山者一人ひとりに声をかけてアドバイスなどをしていた。
毎朝ああしているのかなぁ。
「ありがたいことだっぺ」
「蕎麦焼酎!」
「雲海~♪ って、このCMは今でもオンエアされてるんだろうか」
朝もやが晴れて天狗岳が姿を現した。
今日も空気中の水分は多めのようだが、天気はどうだろう?
まだ寝ぼけたままの頭で岩場に突入。
うっかりルートを外れそうになった。
疲れも溜まってきているのだろう。
気を引き締めねば!
日が昇ってきたらガスも晴れてくるのかと思ったが、今日のはなかなかしつこい。
その代わり…というわけでもないが、久々にブロッケン現象を目撃することができた。
長い事登山しているが、そうそう頻繁にお目にかかれるわけでもないので嬉しい。
昨日は大勢の登山者で賑わっていた天狗岳だが、早朝ということもあって貸切だ。
天狗岳からの下りは黒百合ヒュッテ経由の道を進む。
地図によるとヒュッテ経由のほうが少々なだらかに思えたからだ。
「小屋番さんも天狗岳の下りは気をつけてって言ってたっぺ」
陽光とガスが一進一退の攻防戦を繰り広げている
もちろん、ここからガスが晴れていくのを期待したのだが…
なんか風が強くなってきた…。
下から吹き上げてくる風には水分がたっぷり含まれている。
あらら、ガッスガスだ。
昨日までも晴れたり曇ったりだったから、また晴れることもあるだろう。
そう期待したのだが、結局この日は最後までガスガスの天気で、二度と青空を拝むことはなかった。
視界の無い中、ひたすら大岩の間をすり抜けながら下る。
期待したほどには楽な道ではなかった。
重い荷物を背負って狭い岩の隙間を縫うムーブは地味に体力を削ってくる。
いいかげんウンザリしかけた頃、ガスの中から黒百合ヒュッテが見えてきてホッとした。
ヒュッテの庭には二羽の二羽鳥が。
ウソ~ん。
黒百合ヒュッテの可愛いマスコットが疲れた我々を出迎えてくれた。
…が、
「いやぁぁぁ! カフェが営業時間外!!!」
「残念、我々は招かれざる客だった」
残念ながらヒュッテのカフェには立ち寄れなかった。
「いっつもコレだっぺ(怒」
「はいはい、行くよー」
中山峠で主稜線の縦走路に再合流。
さすがメインルートは道が良い。
でも昨日の大雨で濡れて滑る。
なかなかの雨量だったようで、あちこちに水たまりができていた。
中山のピークは例によって樹林帯に囲まれて何も見えない場所だった。
それではと展望台に回ってみるも…
「虚無…」
「ですよねー」
中山からの下りは倒木を切り転がした丸太がゴロゴロ転がっている。
まるで障害物競走の様相だ。
延々と続く障害物競争に足が音を上げ始めた頃、高見石小屋に到着。
高見石小屋には名物の揚げパンがある。
「もちろん食べて行くっぺ!? な!? な!?」
ツートンの圧がすごいので、ここは「食べる」の一択だ。
ところが繁忙期は5個セットでの販売のみ、なのだとか。
「揚げパン五個はさすがに食べ切れん…」
泣く泣く揚げパンはスルーして最後のピーク丸山へ向かう。
「うぐっ、うぐっ…、どうやっても何も食べられない運命なんだっぺ(涙」
「最終日だし、下山したら美味しいものたべよう」
丸山のピークに到着。
今回の山行では数え切れないほどのピークを踏んだ。
それもここが最後となる。
地味な山頂だが、最後と思えば感慨深い。
丸山からの下りは洗掘が多く地形図から想像していたよりハードだった。
最後の最後で転んで怪我しても馬鹿らしい。
あえてゆっくりゆっくり下りていく。
それでも標準コースタイムより10%程度押した程度で無事に下山することができた。
これにて4日間に渡る北八ヶ岳逍遥は終了である。
出発時閑散としていた麦草峠は、嘘みたいに大勢の観光客で賑わっていた。
喧騒の中へ入っていくと、外界に下りてきた実感が湧いてくるのであった。
4日間で50km、標高差プラスマイナス3700mを歩ききることができたのは感慨深いです。
まだテントを背負って山歩きできるくらいには体力が残っていたようでした。
丸三年のブランクで色々心配でしたが、テント泊登山、再開できそうです。
予約制のテン場ができたり、料金が高くなったりとコロナ前とは勝手が違うことも多々ありますが、これはなれていかなければならんのでしょうなぁ。
おしまい
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。