マインドフルネスが「一体感!」を発動させる————「今ここ」=「前後裁断」の歩行禅 | hermioneのブログ  かるやかな意識のグリッド(の風)にのる

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バシャーリアン。読むことで意識が変わるようなファンタジーや物語に出会ってゆきたい。

 

 大嶋信頼心理学のあれこれのメソッドはみんな、意識→無意識 へ回帰することを目指しています。

 意識は「万能感!」(あれこれ判定、判断して、ビリーフ眼鏡で世界をデザインしている・わかっているというルーティンな感覚)。でも、無意識は「わからない・ただ、〈見て・聞いて・感じて〉いると、凪の一体感に入っていく」

 ことに最近よく出てくる「スクリプト」は一瞬、一瞬を一歩、一歩歩くように描写してゆくことで、相手を無意識に入れてしまう……

 

 これ、いまの新しい瞑想「マインドフルネス」とも近い。

 

「客観的って何よ!」というのは「無意識さん」の本にも書いていたけど、学生時代に教授が金魚鉢をドンと机に置いて、その中に泳いでいる一匹の金魚を観察して「客観的な情報をレポート用紙10枚」という感じ。

 

「金魚が気持ちよさそうに泳いでいる!」❌

「金魚が口をパクパクしてるので苦しそう」❌

 

何度も10枚を書かさせられました。

 

「金魚がヒレを左右におよそ2.5秒ごとに動かしています」⭕

「金魚が1分間におよそ45回口を上下に動かした」⭕

 

勝手に金魚の気持ちを考えちゃダメで、客観的というのは、実際の動きでドライなデータなんですね。

 

でも、客観的なデータを10枚書き上げた時に「あ!金魚と一体感が!」となったんですね。

 

苦しみも辛さもない喜びの世界に金魚と共にいた。(12月3日の「緊張しちゃう人たち」)

 

 判断や常識的な反応(レコードのどこかの溝に針がはまったまま回る感じ)をしないで、ただ真っ白の状態で、金魚を観察していると、逆に「一体感」が生じてくる。

 この「自分がない」状態。「一瞬一瞬しかない」。これが無意識に入っていく……

 

☆上の写真の本は精神科医で、そのあと禅の修行をして、住職になった著者のもの。

ひじょうにわかりやすく書いてありますが、とにかく一瞬、一瞬にだけ集中するのが、(ウツ)などにならず)心を保つ極意。

 

 そしてこれをあらわす「前後裁断」という項目が出てきました。

 

今、この瞬間に集中する」とは、過去や未来に惑わされないということでもあります。禅の世界では、これを「前後裁断」と表現します。

 前後裁断、つまり前も後ろも断ち切ってしまう。ここには「未来と過去にとらわれているうちは、今、この瞬間に集中できない」というメッセージが込められています。

 要は、マインドワンダリングをやめなさい、と言っているのです。(p.214)

 

 マインドワンダリング。最初のほうでは「脳のアイドリングを止めよう」という項目もあります。マルチタスクや「ながら活動」でいつも脳を稼働させていて、アイドリング状態。

 心は休まらず、ウツやパニック障害など、多くのメンタルな問題が生じています。

 

 そんな現代人の心を癒やし、取り戻すために、この本では「歩行禅」を勧めているのですが、「脳のアイドリング」「マインドワンダリング」「前後裁断」と的確な言葉があちこちにちりばめられていて、おおっ、と感動。

 

「今、ここ」(here and now)は前世紀からインド哲学やあるいはヒッピーの世界で流行りだした言葉。禅の世界ではこれを「前後裁断」として知っていたのですね。

 ひとつひとつの動作や観察に無心につきあってゆくと————波立ち、揺れてやまなかった意識の嵐が消え、大嶋語では「無意識さん」の海に沈んでゆく。

 

★大嶋心理学では、いろいろなメソッドや呪文を使っています。しかしそれらは、従来の自己啓発の手法のように、「いま困っていること」を同じ意識レベルで「うまく行っている」と上書きするイメージングや、アファーメーションとは違う。まず意識を鎮め、消すのです。

(スクリーンからはなれ、映写室にもどる感じです)

 

 頭=意識の「万能感!」の活動を何とかスルーして、無意識の一体感・凪の海へ入ってゆくために、

①イミフな呪文(「愛される姿」「沈着冷静と瞬発力」「孤独の色を識別する」ほか)があり、

②ひたすらオウム返しにする「御意!」(そだねー)や、機械的に相手の反応を見る「イエスセット」があります。(金魚観察の思い出は、一番最初の本にも出てきますが、日常の主観判断を投げかけずに、ただ一瞬一瞬に存在することで、無意識が発動することに気付いたエピソード)

 

イエスセット」を使う重要な目的は「わからない!」なんですね。

 

「イエスセット」で相手の気持ちは「わからない!」となった時に無意識が起動して「おー!面白いようにイエスがいただけるようになった!」となり、相手との一体感が生まれるんです。(上の引用の続き)

 

 無意識の海に安らぐには————

 

★上の『悩みの9割は歩けば消える』が推奨する「歩行禅」はいつでもどこでもすぐでき、いい方法だと思います。一瞬、一瞬をただ感じるだけ。

 何かをしていても、ふだんは他のことに頭がワンダリングしているので、

「あっ、さっき使っていたもの、どこへ置いたっけ」

 となっています。「心ここにあらず」

 大嶋信頼先生も、毎日サーフィンに通っておられるらしい。

 

(これと、思考を変えて「いい気分を作る」エイブラハムのあいだには、一見質の差があるようなのですが、そうではない……と思えます。なぜなら、思考を動かすことで感情をナビゲートし、けっきょくはfeel well (いい気分・いい感じ)だけを目指している。この「いい気分・感じ」はemotionとは違い、かなり根源的な生命感情で、説明できない、無意識的な何か。

 あれこれを達成しよう、と使命感に燃えている感情、興奮して昂揚している感情、とは違い、ただ「安心感」に近い、外界に働きかけなくてもいいもの。

 感情の、と訳されている部分も、原書では、feelingであることが多い)

 

★けさのソースチャンネル瞑想は、Happyさんがすごいところに入ってしまったようで、わたしは「浴びながら準備」という状態で聞いていたのですが、それでも何千人かがしんとなった心の波動エネルギーは、深いところに響いて、ずーんと下へ意識を持っていってくれます。

 

※川野泰周『悩みの9割は歩けば消える』青春出版社 2017

 

 この本の後書きには、村上春樹の、ディテールに集中する文章は、マインドフルネスそのものだ、と書かれています。昔から思っていましたが、彼の、脈絡なくディテールだけを追う意識の動きは、確かにその心地よさに満ちています。