古武術の大家、甲野善紀先生が、弟子ともいうべき介護士の岡田慎一郎さんとつづった、「斜め上からの」お役立ち本。
特に、とぼけた甲野先生の記述に引き込まれましたが、このコラムは絶品。
見つからないものを探す方法です。
先生が鍵の行方に悩み、ネットなどで調べてみると。
一つ目は「耳のそばで鋏をパチパチ開閉させながら探す」。探しものはそれに集中せずに、探すのが鉄則なので、鋏を耳のそばでパチパチさせると、ひやっとする危険もあり、意識がその探しものからそれて見つかる……?
と思った先生ですが、もっと効果のありそうな方法を見つけます。それは「たぬきがこけた」という呪文です。
これだ、と思った甲野先生は「たぬきがこけた」を唱え、「ある独特の集中感というか「もう一人の自分が引っ張り出されてきた感じに入った時間」は2分くらいだそうですが、
それは「ピントのぼけたレンズの焦点が合ってくるような感じ」で脱ぎ捨てていた作業時のポケットにふと手が行って、鍵を発見したのでした。
「きつねがこけた」ではダメな理由もおかしいです。
「たけやぶやけた」に似た魔術的な響き。そしておかしみ。
おかしみこそ、身体をリラックスさせ、発動させるコツではないでしょうか。またひとつミラクルな場所から、ミラクルを発見しました。
たぬきがこけた
(ついこけしが……となまってしまいそうです。でも、これは効きそうです。)