「見るだけ」こんなに役に立った本はない————『ねこ背は治る』の小池義孝さんの「体の意識」 | hermioneのブログ  かるやかな意識のグリッド(の風)にのる

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バシャーリアン。読むことで意識が変わるようなファンタジーや物語に出会ってゆきたい。

 人間はまったく、身体の図式イメージで、体を動かしている! 

 最近「呪文」や「魔法の言葉」がマイブームですが、まさに「魔法のイラスト」。

 

 ベストセラー『ねこ背は治る 知るだけで体が改善する「4つの意識」』(自由国民社 2011)の著者小池さんのセルフ整体法は、どれもいたってシンプル、しかも「体について自分がもっているイメージを変える」だけです。

 たとえばねこ背は一瞬で治った状態を体験できます。それは膝立ち姿勢で床に膝をつくだけ。その姿勢だと、ねこ背になれないのです(細かいパーツを筋トレする必要なし)。これを思い出せばよく、もう目から鱗です。

 

 整体関連ではほかにも、耳ひっぱりに加えてイメージワークを使う藤本靖さんや『イメージだけで「らくな体」をつくる本』のさかもとはるゆきさんとか、「七つの身体意識」の高岡英夫さんとか、「楽して治せる」愛読の著者さんたちがありますが、小池さんの提唱する「イメージ」は、

 見た目の身体の分節と、解剖学的な中身は違うよ、というところから、骨格や筋肉の本来の姿を図解し、そのうえで意識を変えると、動かす部位が変わって楽になる、

 という、一番シンプルな仕組みです。

 

 本書はその最新刊で、これまでのイメージ書き換え路線の集大成で、ほんとうに「見るだけ」。

 

 筋トレしなくてもいい!(この点が一番私に向いています。) しかも次の瞬間から、体の使い方が変わる。「イメージ=意識」を体に入れるだけで、あっというまに身体にアセンションが。

 

 上の図は首の後ろつけね。頸椎のごつごつした突起部分が頭骨とぶつかっているところが、首のつけねではなく、実際の骨を見ると、もっと前の位置で、首の骨が頭骨に接続しています。そこに頭の重みをのせる。いきなり楽になります。

 その下の図は眼球のうしろの眼筋のところを意識するだけで、そんなものないと思っていたパーツによって、目の負担がふっと落ちます。さわれる、写真に写る、という外部的な身体イメージは、本来の骨や筋肉からすると、実はまちがい。

 

 ↑解剖学的な説明は特になくても、力のかけかたをこのようにイメージするとまったく違う、という「魔法のイラスト」もあります。楽器と違い、声楽関連は体の内部のことなので、多くの教則本が本ごとにさまざまなイメージを駆使しています。声楽をならっているので、かなり読みました(いくつかヒットしたものもあり)が、これはその中のひとつ。しかし、一番シンプルです。「地を這う」のは初めて見ました。これは高音が出るというより、腹筋が、がしっと使える(授業に活かせます)。

 

 ↑これは首の付け根(大椎のところの骨)から首を動かすのではなく、筋肉から言えば、もっと下から始まっているので、そこから動かす、というもの。なるほど楽に動かせます。

(『奇跡の30秒背骨ストレッチ』(小池義孝 王様文庫 2013)にも、椎骨は後ろ半分だけを動かして回す、とか、体をねじるときは体幹ではなく背骨だけをねじるイメージとか、足は「みぞおち」から始まっていることを理解して歩くとか、解剖学的な真理を、イメージに落とし込んで描き直してくれる指摘がたくさんあります。)

 

 つくづく思うのですが、動物はそんな「自己の身体イメージ」などもたない(「鏡像段階」がないから?)のに、人間は自意識とともに、身体のイメージを写真やイラストなどから幼児期にうけとり、それにもとづいて手をあげたり、走ったり、曲げたりしている、というのがおもしろいところです。動物の動きはとても無駄がなくしなやかなのに、人間はすごく人工的な動き(軍隊の整列行進のような)に自分を馴らしてしてしまうこともできます。

 

 日常生活そのものずばりに役立つイメージでは、(小池さんに限らず多くの本にある指摘ですが)腕は、背部は肩胛骨から、前は鎖骨から始まっている(!)、と思い直す(実際に筋肉がそこからつながっている)だけで、肩や上腕があっというまに楽になります。

 人間はつくづく「意識」で体を把握し、動かしている。だから、それを逆手にとり、本書のように「意識するだけ」で新しい図式に書き換えると、体はすぐそれに従って動き、これまでのしんどさから一瞬にして脱することもできる。

 

 新しい身体図式のイラストを「見るだけ」で、体が納得する。意識はほんとうに偉大で不思議です。

 

 

 

 小池義孝『見るだけで体が変わる魔法のイラスト』自由国民社 2017.12

 

 スポーツ科学者の高岡英夫さんには、イチローはじめ多くのスポーツ選手を研究した山のような著書がありますが、『身体意識メガ・トレーニング 「軸」と「ハラ」を鍛えれば必ず強くなる!』青春出版社 2006 は最多16の身体イメージがのっていて、これを一番よく見ています。

 さかもとはるゆきさんの『イメージだけで「らくな体」をつくる本』(サンマーク出版 2006)には「サプリ飲まない、ジムにも行かない」のコピーもついていますが、この本は完全にイメージだけなので(頭を熟したトマトとイメージし、それがオリーブオイルののった皿の上を転がる、とか)、若干、身体そのもののイメージ図式への還元力が弱いかもしれません。

(藤本靖さんの、椅子に座るときにイメージでティッシュ一枚おいて座るとか、本と目のあいだに棒をおくとか、NLP的なディソシエイトのイメージも役に立ちます。これらは氏の複数の本にあります)