霊獣化できるようになってから三日。
僕らはいつものように修行場に足を運んでいた。
ここ数週間、規則的な生活を送っていたためか、すっかり身に付いてしまった。
朝は修行、昼からはフリータイムということにしていた。
自分のもう一人の人格を出す霊獣化のコントロールはなかなか難しい。
今まで知らない知識もポンポンしゃべるし……霊獣化した感覚としては、きっと戦隊ものの巨大ロボットの操縦席にいる感じに近いと思う。乗ったことはないけれど。
もうコクヨウの姿はない。
朝の修行の際は、飛び回っている最中に霊獣化が解けることを危惧して、水萌に付き合えってもらっていた。
そして、今日も朝の修行を終え、昼からのフリータイム。
僕と日和とユイの三人で里の探検だ。
「わんわん!」
僕らが里を歩いていると、犬がシッポを振ってやって来た。
「こんにちわ、ポチタマ」
近所で放し飼いされているらしい、と水萌情報。
「ほらほら、今日もこしょこしょしてやるぞー」
日和がポチタマの頭をガシガシ撫で、喉元を優しく撫でる。
ポチタマは嬉しそうにシッポをブンブン振った。
「ほらほら」
頭から順にシッポの方へ。
「わんわん……わんわぁ……わんにゃ……ふにゃにゃぁー」
日和が背中を撫で続けると、ポチタマのふさふさの犬のシッポが細くなり始める。
マズルも少し短くなり、体全体も二回りほど小さくなる。
茶色い毛色が白色に変わっていき、秋田犬の姿だったポチタマはみるみるうちに白猫に変身した。
「にゃぁん、にゃぅぅん」
くねくねと曲がるシッポで甘えるポチタマ。
僕も初めて見たときは驚いたが、ポチタマは気分によってイヌとネコどちらの姿にも変身するペットなのだ。
しかし、考えてみれば不思議なことはない。
僕らが動物に変身できるということは、動物が他の動物に変身できてもおかしくはない
だろう。
不来方の里ではこういった、┌(┌^o^)┐を初めとして、不思議な生き物を時々見か
けることがあった。
だから、里を歩いているだけでもいろんな発見があって楽しいのだ。
「それじゃまたね、ポチタマ」
「にゃーん」
僕らはポチタマをみんなで撫でた後、里の探索を続ける。
「ナイショナイショ ひみつのはなし♪ 見たこと、聞いたこと、誰にも言うな♪ 言ってはならぬ
ぞ もののけの 夜の宴を 視た者は♪」
「あやしあやかし 幽世の祭り♪ 幸か不幸か 視た者は 誰も信じぬ 魅入られよ♪ オキテ
破りは 食い付くぞ オキテ破りは連れ去るぞ♪ 」
どこからか子供達の歌が聞こえてきた。
わらべうたのようだ。
里を探索するようになってから時々聞こえてくる。
「あ! 日和姉だ!」
「日和姉だ!」
子供達が集まって何やら地面に絵を描いていた。
その中から見知った声がする。
カッパの勘太郎と、ハーピーの音菜だ。
最初は勘太郎に舐められていたものの、付き合っていくうちにすっかり仲良くなった。
この年頃特有の意地っ張りだったようだ。
「何しているの?」
ユイが二人に聞いた。
「お絵描き!」
「お絵描き!」
二人は木の棒を持って嬉しそうに言った。
一緒に遊んでいる子供達は全部で六人。見たことある子もいれば、初めて目にする子も
いた。外見からじゃ性別は判断できない。みんな人間の姿はしていない。一言で言えば妖
怪そのものだった。
「日和姉も遊ぼう!」
「遊ぼう!」
「んー、しょうがないなぁ、どれどれ、日和さんの絵の実力を見せてやろう」
僕らは里の子供達と遊ぶことになった。
「ほら、できた!」
「なにこれー?」
「……」
ズバリ言うと、日和は作家ではあるが、絵はかなり下手な部類だった。
「何って、犬じゃない」
「きゃははは、見えないー」
「見えないー」
気を使うことを知らない子供達はズバズバ正直な気持ちを言っていくので、僕はハラハ
ラする。
「うるせー、絵は下手でも物語が書けたらいいんだよ」
ケモノ姿の日和はシッポで、うりうりと批判した子供達に攻めていく。
きゃーきゃーと逃げ回る子供達。
まったりとした空間だった。
「ほら、できたよー」
「キリンだ!」
「すごーい!」
一方、ユイは絵がものすごくうまかったりする。
子供達はキリンの存在を知っているらしく、ユイの絵を見て、楽しそうにしていた。
「もっともっと!」
「ジャガルンダー描いて!」
「よーし、書いちゃうぞー」
ユイがさらさらと地面を木の棒で掘る。
「いいなぁ、ユイ……」
ユイの絵を描く速さと上手さに、日和は羨望のまなざしを送っていた。