- 失われた町/三崎 亜記
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家も食事もそのままに、人間だけがある日突然消えていく…
そんな不可思議で、深刻な現象の起こる世界。
人々が消える現象を止めようと奮闘する人々の物語。
どSF。
日常生活の、なんでもないシーンの描き方が上手いので、自然に読めるけれども、
非常に良く練られた世界観が面白い。
細かなお茶の種類から、特殊な音楽について。
しかし、世界観、ストーリー、人物、どれも非常に練られすぎて、
詰め込みすぎ、消化不良の感。
メインは、大切な人が失われたとき、ひとはどうするのか、といった
普遍的な感情についての物語なのだけど、
そこに付随するものが多すぎて、とても難しく感じる。
一言で言えば「気合入れすぎちゃったかナー」。
物語の骨。
メインテーマは、悲劇的で、悲しさと、人の強さに感動できる。
んが、人物が複数出てくる上、主人公がクールすぎて感情移入しづらい…
嫌な言い方をすれば、理系オタクが好みそうな人物展開。
クールで、人間関係が不得手な美人を救う、暖かな人間性が得意技の男、みたいな。
そんな。
みたいな。
苦手なんだよね…
人間味豊かなキャラクターも勿論出てきはしますが。
男女の多少の逆転はあれど、理論型、若干オタク気質の男性作家に多い関係性な気がする。
偏見?
テーマとは別の、物語の概要。
人が突然消える現象。意志を持った(らしい)街。
人が、物理的に分裂すること、など、SF好きにはたまらない、設定、世界観。
オリエンタリズムと、寂寥感溢れる雰囲気。
確か、藤子不二雄の短編マンガで、意志を持った町の話が合ったけど、
あれとはまた別軸で大変良い。
SF界では、いくつか見かける設定なのかな??
これは長編だけれど、
この世界観で短編をいくつか書いて欲しいなって思う。
というか、これ、短編集でも良かったんじゃないかなーー
設定詰め込みすぎが多少は緩和されたかも。
構成も、詰め込みすぎなんだ。
途中から、ハリウッド映画か、といいたくなるほどの冒険譚がはじまるのです。
面白いんだけど、壮大というか、やっぱ消化不良感感じちゃうんだよなー
連作にすれば良かったのになー
というわけで、大変好きな作品なのですが、
消化不良という点で、非常に惜しいと思う。