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アーシュラ・K. ル・グウィン, 清水 真砂子, Ursula K. Le Guin
さいはての島へ―ゲド戦記 3

さぁ、これが噂のジブリアニメ化原作ですよ。

(今では)6巻に渡るゲド戦記の、この巻がアニメ化されるのです。

宮崎駿、の、息子に…


年老い、大賢人となったゲド。

賢人の島ロークで日を送る彼の元に不吉な噂を携え少年王子がやってくる。

それは世界全てを、その均衡を破壊する恐るべき禍への前兆だった。

ゲドは王子の中にある予兆を見出し、

彼を唯一の供に禍の原因を求める旅に出る


生きている限りは死にたくない。

これって、人間の(というか、生物の?)最も大きな欲望ですよね。

不老不死、若返りの研究が本気で進められているような、

現代の発達した科学社会、言い換えれば頭でっかちな社会にとっての

痛烈な批判がこの巻にはあります。


「だが、おれは人間だ。

自然よりもすぐれ、自然を支配する人間だ。

おれは自然のたどる道(注;死のこと)はたどらないぞ。

どこまでも自分であることをやめないぞ!」

                        (注はサリオ

                        本書P288、15~17行目)


クライマックスである、禍を起こした人物とゲドの対話は、

誰にでも分かりやすく、かつ、鋭い叫びです。

まー、わかりやすく云うと、

ナウシカの叫びそのものだな!

ナウシカとユパさまがここにおるけん!

(宮崎駿はやっぱ影響されたんだろなー)


ねっ、今日の、「世界一受けたい授業」 見ました?

人体再生医学の。

マウスの背中に、人間の耳が生えてるやつです。


もしわたしが明日事故にあって、耳が無くなってしまったら。

そして、自分の元のままの耳を再び手に入れる方法が目の前にあったら。


飛びつかないとは、云えません。


だけど、見てください。

マウスの背中から人間の耳が生えている映像を。

これを、気持ち悪いと思わない人間がいますか?


病気や、怪我や、生まれつきでからだの本来あるべき何かがなかったら。

方法さえあれば、あるべき姿に戻したいというのは素直な気持ちだと思います。

でも、野良猫は、喧嘩で耳を失ってもそのまま生きてる。

それが自然。


治したいという気持ちも、自然。

だけど、どこかで線引きは絶対必要。

個人の悲しみや苦しみは、自然界の均衡や成り立ちを崩してまで

元通りに癒されるべきものなのかな。


「どこまでも自分であることをやめないぞ!」

この叫びは、美しいものか、醜いものか。