壊れた腕輪 | お役に立ちません。

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本・漫画・映画のレビューブログ。
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アーシュラ・K. ル・グウィン, 清水 真砂子, Ursula K. Le Guin
こわれた腕環―ゲド戦記 2

このシリーズ、現在では6作品出てるんですわ。

本来は3作だったんだけど、最近になってル・グウィン女史が追加したんですね。


一作目から時は離れ、

ゲドは偉大な青年魔法使いへ。

世界の平穏を取り戻す為、異教徒の守る暗黒の墓所へ、

失われた遺物を探しに。

そこで、”大巫女”と呼ばれる美しい少女と出会う。



今作は少女の成長物語。

美しい少女と、偉大な青年魔法使い。

うーん、わくわくして読みやすい設定です。

でもやっぱり、思想は深い。

女性の成長、そこで得るもの、失われるものを描いているんですからね。


失われゆく信仰の生贄として、偶像として、

だけど、それに気付かないままに最高位の巫女として祭り上げられる少女。

彼女の信仰は本物で、周りも自分と全く同じ気持ちを持っていると信じている。

けれど、実際は信仰はすでに死に絶え、

信じろと教えた周りの者ですら真の信仰を持たないことを知ってゆく。


自分の周りの世界の本当の姿を教えたのは、

ある日突然現れた異国の魔法使い。

彼は今いる世界の全てを捨てるか、

今までどおり生きてゆくか、の選択を迫る。


ゲドは正直、ここでは破壊者です。

少女、テナーの慎ましくおどろおどろしいけれど平穏な生活を全て壊しちゃうんだもの。

それはテナーが新しい世界を選択したからであったけれど、

かなり強制的な選択です。

全てを破壊し、捨てさせ、だけど、新しい世界でずっと一緒にはいてくれないゲドがなんだか悲しい。


見も知らぬ世界で、

頼る人も側にいなくて、

果たしてテナーが新しい人生を選んだのは幸福だったのかな、って。

勿論、ゲドは優しいですよ。

新しい世界にテナーが怯えて、竦んでも、

否定せずにそっと隣にいてくれるんだもの。

だけど、ずっとじゃない。

ずっと側にいてくれない。


作者は文化人類学に造詣が深いそうですが、それはシリーズ全般に反映されてるんだけど、

でも一番色濃くシリーズを貫くのは心理学だと思います。


影との戦いも、

この女性の自立の話も、

全く心理学的心の成長過程そのものなんですよ。


だから神話的だと思うし、

偉大だと思う。


これ、ジブリアニメ化してくれたらいいのにー。

3作目なんだよね、今年7月公開するのはサ。