細菌を注射し、屈強な体に? | こけ玉のブログ

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不惑の年などもうとうに過ぎたのに、いまだに自分の道も確立できていない。
そんな男の独り言。

あなたはバチルスFという細菌をご存じだろうか。

バチルスFとはロシア大学の永久凍土学者であるアナトリ・ブロチコフ氏により、2009年にシベリア・サハ共和国のマンモスマウンテンにおいて、永久凍土の中から発見された菌である。

外部と完全に切り離された環境で見つかっていることなどの地質学的調査から、この菌は350万年もの間、生き続けていたとされている。

この菌を、なんと発見者であるブロチコフ氏が2015年に自らに注射したという。

すると、これまでにないほどの身体の活性化を実感し、2年間は全くインフルエンザにも罹らなくなったとして、極めて高い健康効果があると提唱しているのである。



彼が自らに注射するに至ったのは発見から6年間行われてきた数々の実験の成果を踏まえてのものである。

マウス実験では、一般的な生存日数である600日を生きたメスに注入したところ、体動が活発になるだけでなく、免疫力を高め、生殖機能の回復もみられたというのだ。

結果マウスは20~30%生存日数を伸ばしたとのこと。

単純に日本人の平均寿命に当てはめると、100数歳まで寿命を延ばすことになる。

まあ、現在の日本でそのことが果たして「良いこと」になるかどうかは分からないが、本当にそれが可能なことだとして、それが実現するころには、誰もが長寿を喜び合える時代になっていることを期待しておこう。



実験の成果はそれだけにとどまらず、植物においては成長が促進され、寒さにも耐えられるようになったという。

もしそれが事実であれば、寒冷地でも育成できる作物が増えることにもなり、食糧問題にも寄与することができるかもしれない。

健康促進や不老長寿、果ては食糧問題にも期待されるバチルスFは現在ネットでも手に入るようである。

ブロチコフ氏が商品化のために提携した会社がなんと日本にあるというのだ。

下記がその会社のサイトである。
お客様の声 バシラス F はアナトリー・ブロチコフ博士自身によって日本に運ばれた、高純度の品質を誇る純正品です。 (bacillus-f.net)



バチルスFは納豆菌と同じ枯草菌の一種である。

しかし、独特の遺伝子構造を持っているらしく、600万種以上といわれる遺伝子を持つのだそうだ。

現在考えられているのは、隕石によって地球のもたらされた枯草菌は地球上に広がったが、長い時間経過の中で不必要になった能力を失っていき、氷の中に閉じ込められていたバチルスFだけが古代に持っていたその能力を維持させることができたのではないかというのである。

菌の生命力の強さは隕石の衝撃にも耐え、放射線にもびくともせず、350万年も生き続けたという事実が証明している。



と、ここまで書いておいて言うのもなんだが、個人的には今一つ信頼できていないのである。

検索すれば様々な記事がヒットするので、その菌の存在が世界的に一大センセーショナルを巻き起こしたのは事実なのだろう。

しかし、不確定要素があまりにも多すぎるのだ。

例えば、その菌が健康増進に役立つとする根拠の一つに、バチルスFが見つかった地方に住むヤクート人は他の地域に住む人と比べると長寿であるという。

それは現在、永久凍土が溶け出してきており、菌が地下水に入り、それを飲んでいるからだろうというのかブロチコフ氏の考えである。

しかし、自分が見たどの記事の中にも、ヤクート人がどの程度の長寿となっているのか、実際に水に菌が含まれているという水質調査結果が出たのか、たったそれだけの基本的なデータすらどこにも記載されていないのだ。

現在ではいくつかの国においてバチルスFについての研究がなされているとのことだが、当初、この菌の発見が公表されてもロシア以外の国の研究者は誰も目にすることができず、実際には存在しないのではないかとさえ言われていた。

ロシア政府が発行したという安全性を保証する証明書の写真はネット上でも公開されているけれども、肝心のデータは今も非公開になったままのようである。

これまでいくつもの企業が研究成果の買取などを打診したそうだが、金持ちが利益を独占するのではなく多くの人に健康を享受させたいとの氏の考え方からそれは実現していない。

その考え方には賛同するが、科学とは誰もが再現できるという事実があってこそ、その菌の能力が真に認められるものである。

上述のいくつかの国で行われているはずの研究による成果の記事はまだ目にできていない。

単に、研究を許してからの期間がまだ短く、成果を発表するまでに至っていないのかもしれないが、再現性を早く証明してほしいものである。



さらに細かいことを言えば、永久凍土の岩石の年代測定は難しく、現在でもその測定法はないのだそうだ。

350万年前というのは、あくまでも状況証拠に過ぎないという。

まあ、仮に350万年前が1万年前だとしてもすごいことには変わりないのだけれども・・・。

そして、重箱の隅をつつくようで申し訳ないのだが、ブロチコフ氏は何故いきなり注射という方法をとったのであろうか。

そこにも疑問を感じてしまう。

バチルスFが含まれている水の摂取だけで地域の人々が健康になっていると考えるのであれば、口からの摂取でも効果を証明できるとは考えなかったのであろうか。

基本的に副作用の危険性を考えれば、注射よりも口からの摂取の方が、何かあった際に遥かに対処しやすいと思う。

記事には出ていなかったが、その段階を踏んだ上での試みだったのだろうか。

自分だったら、服用してみてこのような変化があり、自信が持てたので注射に踏み切った、とする方がよほど説得力を持つのではないかと思えるのだ。

それは倫理上の問題というのではなく、何かを証明しようとする際の科学的な手法の問題としてどうも疑問を感じざるを得ないのである。



バチルスFに関する情報は多岐にわたっている。

ブロチコフ氏のように菌を直接静脈注射しているというドイツ人女性の動画(菌は直接ブロチコフ氏から入手しているとのこと)、「マンモス菌入り」として「マンモスジュース」を手に入れたという沖縄のスピリチュアル系の男性、施術を受けた人に格安で分けているという東京の女性セラピスト、あれほど秘密だった割に一般にこれほど出回っているのはどういうわけだろう。

ある良心的なサイトでは、はじめはバチルスF入りとして紹介されていた「パラダイス酵母」。

しかし、その後、その酵母提供者との意思の疎通がうまくいっていなかったことが判明し、パラダイス酵母にはバチルスFは入っていなかったことを明らかにしている。 

いずれ、今回のテーマの取っ掛かりは、なんかすごい菌が見つかったようだ、との思いから始めたが、少なくともネット検索して感じたのは、「ネームバリューは凄いがいまいち具体性に欠ける」というもの。

本当にそれだけ高い効果を持つのであれば、人間にとっては非常に有効な菌であることは間違いないので、いつの日か、信じなくてごめんなさいと言えることを待ち望んでいる。