「やや危険地帯」のお子さんを守るには パート2 (7/14)
先回、「やや危険地帯のお子さんを守るには」を書いたときに「時にはうどんを食べましょう」としたのですが、その後、国産小麦がかなり汚染されている(1キロ100ベクレル以上のものもある)ことがわかり、国産の小麦を使ったうどんは当面、避けた方が良いと思います。
【最近の食材の汚染について】
長期間、汚染されているのが、太平洋のサカナ(先日のブログに出しました)、椎茸タケノコ類、関東以北の柑橘類、鮎やウナギなどの川魚などです。
困ったことに農水省が「産地を表示すると汚染されているものがわかって売れなくなる」ということで、2011年に「できるだけ広い産地を示すこと」というとんでもない指導をしたので、最近では「食の信頼性」というのは極端になくなっています。
これらのものに加えて、最近、わかってきた汚染された食材は、
1)山菜類(コシアブラ、たらの芽、わらび、タケノコ、こごみ…など)
2)桃、梅、常緑樹の果樹
3)野鳥やイノシシ・鹿肉(まだ不明)など、
4)福島を中心とした干し柿
などです。一応、頭に入れておいてください。
【体内被曝について】
体内被曝について極端な2つの考え方が流布されていて、心配されている方が多いようです。一つは政府系で、食材なら1キロ100ベクレル、内部被曝はそれほど恐ろしくないという発表ですし、もう一つは1キロ1ベクレルでも毎日、とり続けると大変な量になるという計算値で、ICRPのグラフが良く引き合いに出されます(ICRPは権威はあるが、任意団体)。
このブログで再三、書いていますが、
1)被曝と健康の関係は学問的にはわかっていない、
2)つまり「危険」という論文と「安全」という論文があって、どちらかを採用すればあたかも科学的根拠を持って危険か安全かを言えるように錯覚する人が多い、
3)「危険」と「安全」の二つの群の論文があるということは、どちらの論文も意味が無いことを示してる、
ことをもう一度、くり返して理解していただきたいと思います。
「安全だ」というのを強調する人は「自然食品にもカリウムが1キロ100ベクレル含まれているものが多い」と言いますし、「危険だ」という人は「ICRPのレポートでも1日1ベクレルでも危険なほど蓄積する」と言います。
真実は、「よくわからないが、これまでの経験ではおおよそ食材では1キロ40ベクレル、水では1キロ10ベクレル、子供や弱い人は少し注意」というところです。それ以上にはわかっていません。
自然の食品からの放射線の内部被曝はほとんどがカリウムですし、福島原発からはセシウム、ストロンチウムですから、その影響が同じであるかも「わかっていません」。
また生物は放射性物質や放射線の中で進化してきましたので、防御機構があります。これが何ベクレルで、核種によってどのように違うかもハッキリしていませんが、カリウムのように大昔からあるものと、人工的に作られたもので違いがあるとも考えられます。
科学というのは「わからないこと」があるのです。それをわかったように言うというのがもっとも不適切で、科学に携わる人は恥ずかしくても、「わからないところはわからない。でも経験的にはこのぐらい」と言わなければなりません。
食材の基準は1キロ40ベクレル、水は1キロ10ベクレル、外部被曝は1年1ミリ、土壌は1平方メートルあたり4万ベクレルというこれまでの膨大な研究と経験で判断するのが適切でしょう。
人間には知性と知恵があります。何もわからないのでもないし、全知全能でもありません。それを理解してしっかり子供を守ってあげましょう。
(平成24年7月14日)
--------ここから音声内容--------
最近のですね、放射線の状態を少し…二つほどですね、みなさんの関心のあるものを書きたいと思いますが、前回はですね、「やや危険地帯のお子さんを守るには」ということでですね、「時にはうどんを食べましょう」と。お米がですね、汚染されたお米がどこ行ったか分かんないんですよ。これこそが、政府が発表するとか、マスコミがですね、追跡してほしいんですけど、全然やりませんので。
それでまぁ、「時にはうどんでも食べましょう」って言ったら、今度は国産小麦が少し汚染されておりましてですね、ちょっと、あの国産小麦を使ったうどんっていうのは、ちょっと当面避けた方が良いんじゃないかと思います。全部じゃないらしいんですね。15%…小麦の15%ぐらいですかね、なんかそういう話もあって、色々非常に複雑なもんですから、バッと言えないんですけども、まぁそういうことですね。
食材のうち、わりあいと長期間汚染されているのが、「太平洋のサカナ」。これは先日ブログに出しましたので。福島沖のサカナってのは、ほとんど出荷されてないと思いますが、宮城、千葉、茨城、青森ですね、岩手まで、だいたい数十ベクレル汚染されているものが多いということですね。それから、「椎茸タケノコ類、それから(関東以北の)柑橘類」ですね。この前、ある東北の方に行きましたら、そこはですね、柑橘類の出荷を止めておりましたですね。まぁ、適切な措置じゃないかと思います。
それから、「鮎とかウナギなどの川魚」。これらがずっと長い間汚染されてるんですが、困ったことに農水省がですね、「産地を表示すると汚染されてるのがバレちゃう」っていうんでですね、昨年に「できるだけ広い産地を示す」という、つまらない指導をしたわけですね、まぁ「食の信頼性」という点では非常に大きな汚点を残すもんですね。だって、国自身が「1キロ何ベクレル」とか決めてるわけですから。
だから、国民にですね、「お前らバカだから、ベクレルを表示しないでも、安心して食え」と言うような、「国が認めてるんだから、食べろ」なーんて言ったってですね、国も間違ったことを山ほど言ってるわけですし、それから憲法に決められた基本的人権ではですね、その人の生活だとか、健康とかいうのは、その人が判断することになってんですから、国は判断材料を提供する役割であって命令する役割じゃないんですよ。もう少し憲法を読んでほしいと思うんですけどね。
それに加えて、最近の情勢をちょっとお話しますと、「山菜類(コシアブラ、たらの芽、わらび、タケノコ、こごみ…など)」。これはまぁ私も結構、汚染の例を見ておりますが、色んなものが汚染されております。それから、「桃とか、梅なんかのものとか、常緑樹の果樹」ですね。それから、「野鳥とか、野獣っていうのか…イノシシのようなもの」。「干し柿」。あの、これらはね、ある共通点がありますね。つまり、「山が汚れた」っていうことですね、山が。山が汚れたので、山のものを食べているイノシシとか野鳥、それから山の野菜類。ま、ちょっとですね、山が怪しくなってきたってことですね。これは最初は多分、木の葉っぱか何かに付いたのが、だんだん落ちてきたんでしょうね。
で、土に染み込んで、山のものが汚染されてくると。ま、理屈通りですので、いつも私言ってますけども、この放射性物質という赤い粉、これがですね、「どこら辺にこう、今来てるかな?」っていうことをですね、お母さんがぜひ頭の中で思い浮かべるようにしていただければですね、相当良いんじゃないかというふうに思います。また情報が入ったり、測定値が出てきたりしましたらですね、色々な方がメールでもご連絡いただくので、それらがある程度固まった時点で、また繰り返して測定されているような場合についてはですね、このブログに示していきたいというふうに思います。
それから、もう一つ最近ですね、私のところに来る質問の多くの「体内被曝」ですね、これ体内被曝に対するですね、極端な2つの考え方が言われてんですよ。一つはまぁ政府系って言いますか、「(食材なら)1キロ100ベクレル」もしくは昔「500ベクレル」だったんですけど。「内部被曝はそんな怖くないよ」ってやつが一つと。もう一つはですね、「『1キロ1ベクレル』でも、毎日とり続けると大変な量になる」ということで、これはICRP…これはNPOですけどね、グラフが良く引き合いに出されております。これはね、あのこれでご心配になってる人が随分いるんで、このブログで再三書いてるんですけども、「被曝と健康の関係は分かってない」んですよ。それをですね、頭に叩き込んでほしいんですね。
つまり「『危険』という論文と『安全』という論文があるってことは、科学的にまだ決まってない」ってことなんですよ。「分からない」ってことなんです。だから、『危険』という論文を持って来れば『危険』になるし、『安全』という論文を持って来れば『安全』になるんで、まぁほとんど意味が無いんですよ。それをですね、一応頭の中にこう、もう一回理解してほしいと思うんですね。で、例えば、それはそれぞれ根拠があるわけですよ。「安全だ」って言う人は例えばですね、自然食品の中にはカリウムが1キロ100ベクレル以上含まれてるのがいっぱいありますからね、それでいいし、今度は「危険だ」って言う人はもうある論文を持ってきて「こんなに危ないんだ」ってこう言うわけですね。
本当にお母さんが知ってなきゃいけないのは、こういうことなんですね。「よく分かってない」と。だけど、今までの経験では、「およそ食材では1キロ40ベクレルぐらい。水では1キロ10ベクレルぐらい。子どもや弱い人は、まぁちょっとその半分ぐらいにしとく」と、いうことは分かってるわけですね。それ以上は分かってないんですよ。ほんとに分かってないからしょうがないんですね、ええ。で、自然の食品は放射線の内部被曝はほとんどがカリウムですからね、福島原発からはセシウム、ストロンチウムですから、やっぱり違うんですよね。ベクレルの問題でもないんですよ。
我々生物はですね、太古の昔から放射性物質とか放射線の中で戦ってきたわけですから、もちろん防御機構があるんですね。防御機構が無ければ、それは1ベクレルでも危ないんですが、防御機構があるわけです。例えば、細菌の中で我々は暮らしてきたから、無菌室で生活すると病気になるってのと同じなんですね。ある程度の放射線は要るんですよ。ところが、それを超すと病気になっちゃうわけですね。これは、細菌と同じですからね、ええ。ある程度の菌がそこら辺にあるのはいいと。免疫も保てるし。
それが、その子の防御能力を超えると、発病するわけですね。その、どのくらいで発病するか?っていう「このくらいだったら安全だ」っていうのが、「1キロ40ベクレル」なんですよ。もう少し本当は高いところでもいいんですが、実際には少し弱い子もいるし、体調が悪い時もありますんでね、だいたい40ベクレル。それよりか少し少ないぐらいのところに目処があるっていうのは確かなんですね。
それから、カリウムのように大昔からあるものは、やっぱりカリウムによる被曝っていうのはですね、セシウムと違うかもしれないんですけどね、分かってないんですよ。科学はですね、「わからないこと」があるってことなんです。科学者が絶対にやっちゃいけないことは、「分かっていないのに、分かってるように言うこと」なんですよ。この被曝と健康のことについて、科学者じゃない人が随分発言していますが、これは科学の問題です。ハッキリしてますね、これは科学の問題です。
ですから、科学に携わる人は恥ずかしくてもですね、どんなに恥ずかしくても「わからないことは、わからない。経験的にしか分かってない」とか言う必要があります。それはハッキリしてるんですよ。「食材の基準は1キロ40ベクレルであり、水は1キロ10ベクレルであり、外部被曝は1年1ミリであり、土壌は1平方メートルあたり4万ベクレル」なんですよね。これがいずれも0ベクレルなら、ちょうど無菌室に入ってるようで、我々は放射線に対する抵抗力を失うんですよ。だからと言って、1000ベクレルとかってなると、我々は放射線による病気になるんです。だからどこなんだ?っていうことを今言ってるだけのことですね。
私たち人間には知恵とか知性があるわけです。「何もわからない」んではないんですよ。そうかと言って、全知全能でもないんです。人間はどうしてもですね、「俺はどっちだ、何にも分かんない。自暴自棄だ」というふうになりたいんですよ。もしくは、「全知全能だから、これはこうなんだ」って言って断定したいんですよ。特に、何か物書く時なんかはそういう欲求にとり憑かれるんですね。ここで書きたいと。これをグッと抑える力、それがですね、科学者なんです、ええ。
そしてお母さん方は、目安がしっかりあるんだと、それ以下では無菌室になっちゃうんだと、それ以上では病気になっちゃうんだということでですね、あとお子さんの個別の年齢、体力、健康状態をご覧になりながら、母親としての勘も働かせて、子ども達を守ってあげると、こういうことになりますね。決して動揺してはいけません。要するに、我々はもう基準…だいたいの基準は分かってるんですよ。だいたいの基準は分かってるんですね。ですからその「だいたいの基準を信じる」ということがですね、科学的なことだということになります。
(文字起こし by haru)