原発短信・・・汚染米はどこに行った? (6/10) | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

原発短信・・・汚染米はどこに行った? (6/10)




長野県の大手コメ卸業者が26トンのお米を長野県産(21トンが福島産)として販売、兵庫でも県がJAS法違反でJA兵庫に改善を命令しています。お米の汚染は日本人の主食であり、神棚に飾るものであることから、産地を偽装したお米の販売は日本人の魂を汚し、体を痛めるという意味で放置することは出来ません。


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日本で生産されるお米は年々、少なくなっているものの約900万トン。そのうち4%程度を福島県が生産しているから、35万トンが福島県産で、茨城など周辺の汚染地域の田んぼを含めると約40万トン程度が汚染されたお米と思われる。



これらのお米のうち、いったい何万トンが1キロ40ベクレルを超え、そのお米はどこに行ったのだろうか? お米は日本人にとっても大切なもので、たとえ何ベクレルでもその情報は必要なものである。



仮に1キロ10ベクレル、40ベクレル、100ベクレル、500ベクレルと基準の違いはあっても、それを参考に自分や自分の子どもに食べさせるかどうかは、食べる方が決めることだ。



無農薬野菜があっても、かえって危ないと思う人と、絶対、無農薬が良いと言う人がいる。人、それぞれであり、自分が食べるものを自分で選ぶ権利は当然、食べる側にある。



一方、出荷する方は「消費者が安心して食べて欲しい」と願うはずだし、「安心して」というのが人によって違うことは良くご存じのはずだ。そしてお米を汚したのは、消費者でも、子どもでも、心配するお母さんでも、私でも、反原発派でもない。東電であり、責任は政府にある。



お米を出荷する農家は、攻撃の矛先を消費者に向けるのではなく(汚染されたお米を消費者に食べさせるのではなく)、責任のある政府に引き取ってもらったら良いと思う。もし政府がそれが安全と考えるなら、「1キロ何ベクレル」という表示をつけて希望者に販売するのが適当だろう。



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ところで、「日本の子ども、土地、コメ」を大切にしたいということから言えば、政府は公約違反を堂々とやる集団だからどうにもならないが、私が信頼していた日本の農家、愛国的立場を取ってきた人たちの態度が理解できない。



日本の農家は誠実な人たちだ。だから放射性物質で汚染されたコメはたとえ国の基準を下回っていても出荷したくない、国民が餓死しそうだから無理矢理、出荷してくれというなら別だが、自分の職の魂をかけて出荷したくないと思うはずだ。



まして誇りある福島のお米を他県の名前を冠してこそこそと売るのが福島の農家の希望とはとても思えない。でも福島から「そんなものを売ってもらっては困る」という声が上がらないのはどういうわけだろうか?



日本を愛する人たち、愛国的立場の人たちが「法規を破っても良い」と言って子ども達を被曝させているのも不思議だ。私が今まで愛国的立場の人を信頼していたのは、彼らが日本の子ども、土地、コメを守ってくれると思っていたからだ。でも、原発事故以来、すっかり政府側について日本を見捨てている。



酷い場合は日本の法律を馬鹿にして、「欧米ではこう言っている」と白人に媚びているのは本当にビックリした。日本は石炭と天然ガスで悠々とやっていけるのだから、なにをびくびくしているのだろうか?



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いずれにしても日本の家庭はそれぞれで子どもを守らなければならない。そのためには、宮城(偽装あり)、山形(偽装あり)、長野(偽装あり)、兵庫(偽装あり)のお米は買わないことだろう。


(平成24年6月10日)




--------ここから音声内容--------




最近ですね、長野県の大手の米卸し問屋が26トンのお米を「長野県産」として売ったんですけど、そのうち実に21トンがですね、「福島産」だったということがわかりました。兵庫の方ではですね、県がJAS法違反でJA兵庫に改善を命令するという事件もありました。





えー、お米の汚染というのはですね、非常に大きな問題です。一つは、日本人の主食で、かなり多く食べるということが一つとですね、それから神棚にお米って飾りますから、そういったですね日本人の精神に大きく影響するものをですね、偽装するという…まぁそういうようなことで、体を傷め魂を傷つけると、こういうふうな結果が続いております。





実はですね、この問題はもっと大きな問題が背後にありまして、日本で生産されるお米は年々少なくなってはいますけど、だいたい900万トンですね。そのうち4%が福島県産なので、おおよそ35万トンです。これのほかに茨城など周辺の汚染遅滞で植えたものを含めますと、だいたい40万トンぐらいが汚染対象(の)お米となります。





40万トン全部汚れてるっていう…汚染されてるっていうわけじゃありませんが、一応汚染が気がかりなもの40万トン、そのうちだいたい20万トン以上はですね、かなり強く汚染されていると考えられます。で、このお米のうち、いったい何万トンがですね、1kg40ベクレルを超えているのか。そのお米はどこに行ってるのか、まったくわかりません。こつぜんとして消えたわけですね。今汚染米が積んであるはずなんですが、積んでないと考えられます。





で、これをですね、例えば闇で売るというのもあります。それから1kg100ベクレル以下だから大丈夫だと言って売っているものもありますが、私はこれについては非常に懸念を表してます。っていうのはですね、病気になるとかならないとかそういうことではなくて、やっぱりですね、お米を買う方に選択させなきゃいけませんよ。例えば1kg何ベクレルという表示をして売る、と。あの、売る方はですね、表示すると売れなくなると思ってるんでしょうけど、売れなくなるやつを騙して売るっていうわけですからね。これは問題だと思います。





それから例えばですね、無農薬野菜ってのありましたね。で、無農薬野菜っていう方が危ないと言ってる人もいました。一方、絶対に無農薬野菜がいいっていう人もいました。これ、食べる物は人それぞれなんですよ。自分が食べる物は自分で選ぶわけですから、「セシウムが入ってても構わない」って食べる人もいますしね、「セシウムがもう1ベクレルでもイヤだ」っていう人もいるんですよ。それをね、別にね、出荷する方が決めなくていいんですよ、ええ。それで、出荷する方の農家の方はですね、消費者が安心して食べてほしいと思ってるはずです。「安心して」っていうのはよく言われるようにですね、「安全」とは違うんですね。ようするに「本人が安心して食べることができる」っていうことなんですよ。





で、一方ですね、実はお米を汚したのは農家でも消費者でもないんですよ。消費者でも、子どもでも、心配するお母さんでも、私でも、反原発派でもないんですよ。東電であり、責任は政府なんですよ。東電と政府が犯人なんですよ。犯人じゃないところで、農家と消費者が、まぁ言えば騙しあってるという…非常に悲惨な状態にあるわけですね。





で、農家はですね、攻撃の矛先を消費者に向けています。つまり、「ベクレルで汚れたやつ、セシウムで汚れたやつを食べなきゃダメじゃないか」と、こういうふうに言ってるわけですが、これは本当に見当外れですね。やはり責任は政府、もしくは東電にあるわけですから、売れなかったお米は政府に引き取ってもらう必要があるんですよ。責任があるところが被害を受けないでですね、責任のないお子さんに食べさしちゃいけないわけですね。





もう一つの視点では…私の考え方ですが、私は日本の子供、土地、米を大切にしたい、と。これを米を作ってる人もですね、日本の米を大切にしてくれ…と今まで言ってきました。で、まぁ、今の日本政府は公約違反どんどんやるわけですから、これはまぁ私あまり期待していませんけども、私が今まで信頼してきた日本の農家、それから愛国的立場を取ってきた人たちですね…やや右側の人たちでしょうか…の態度はちょっと理解できませんね。





私はですね、日本の農家ってのは非常に誠実な人たちだったと思ってました。ですから、「放射性物質で汚染されて米を出荷したくない」と…いうふうなこと(態度・行動)に出ると、そういうことで行くと思ってましたけど、もしもですね、現在国民が餓死しそうだから、無理やりとにかく少し汚れて米でも出荷してくれっていうなら、それに応じるでしょうけど、だけど今のような状態でですね、誤魔化して売るってのはどういうことでしょうかね。





しかも、福島の農家の方は私にこう言いましたよ。「福島のお米は誇りがあるんだ」と、「立派なお米なんだ」って言いましたよ。そのお米にですね、「長野県産」っていう名前付けて売っていいんでしょうかね。それが福島の農家の人の希望なんでしょうか。むしろ、福島の農家からですね、「そんなもの売ってもらっては困る」という声を上げてもらいたいと思いますね。





それからもう一つ、やや右寄りの人たち…日本の愛国者っていうか、そういうことを標榜(ひょうぼう)していた人たちですね。法規を破って子どもたちに被曝する(させる)ことは、統一的なご意見としていいんでしょうか。私ちょっとわからないんですね。今までそういう雑誌に載ってるのをずいぶん読みましたが、なぜこの福島原発に対して「放射線の法規を破っても子どもたちに被曝していいんだ」と、「被曝させていいんだ」と、「お米(のベクレル)を表示しなくていいんだ」と、誇りある福島のお米をですね、「他県の名前を付けて売っていいんだ」ということになるのか。ま、ちょっとわかりません。





それからこの、右翼の人たちの本の中にですね、「アメリカのどっかの委員会がいいと言ってるから」っていうのが出てきて、これはびっくりしました。私はですね、日本という国にプライドを持ってますので、アメリカのどっかわけのわかんない委員会が安全だと言ったから、日本の米を日本の子どもに食べさせるってのはもう考えられませんね、汚染されたものを、ええ。





そういう意味では、我々自衛という意味では、私が今まで知っているのは、宮城産、山形産、長野産、兵庫産っつぅのが、はっきりとした偽装がありました。従ってですね、我々はよほど素性のわかった米でないと買わない、と…まぁいうような自衛策を取らざるを得ませんが、私はですね、やっぱり日本の米、日本の農家の魂を信じたいですね。





やっぱりそれで、もうとにかく一日でも早く、「私たちは汚染されたお米は出しません」と、もしくは「どうしても出す時には、何ベクレルという表示をして出します」というですね、日本人らしい誠実なですね、農家が出現することを期待しています。