市民や保護者は「危険を科学的に示す」必要はありません | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

市民や保護者は「危険を科学的に示す」必要はありません (6/5)




福島原発事故が起こってから、被曝を心配する市民や保護者に対して、「そんなに心配なら、危険であることを科学的根拠を示せ」と言う地方公務員や学校や幼稚園の経営者が後を絶ちません。きわめて悪質なので、役人や教育関係者に「良心」を取り戻すことを求めます。



放射線の被曝計算は極めて困難で、「シーベルト(直接、体への影響)」の解釈でも難しいのに、「ベクレル(あるものがだす放射線量に比例する数値)」は専門的知識が必要です。



そのために、法律では「原発からの放射線は外部+内部で1年1ミリ」(自然放射線、医療放射線などとは足し算)、「土壌は1平方メートルあたり4万ベクレル」、「1キロ100ベクレル以上のものは低レベル廃棄物」、「食品基準は(おおよそ)1キロ40ベクレル以下」、「水道水は1リットル10ベクレル程度」と数値を決めています。



市民や保護者は子どもや家族を守るためにこの数値を示すことです。たとえば、幼稚園の砂場が1キロ500ベクレルとすると、保護者が「その危険性を科学的に示す」という必要は無く、反対に、仮にこの数値でも安全だと考える幼稚園があったら「なぜ、法規の基準より高いのに安全なのか」を幼稚園側が示す必要があります。



高速道路の制限速度が80キロの時、80キロ以内なら証明の必要は無く、80キロ以上でも安全というならかなりの資料と説明が必要だということです。間違いないでください。国が法律を守らないからという理由は成立しません。法規は国民同士の約束だからです。国はそれを監視する役割に過ぎません。


(平成24年6月5日)



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ええとあの、福島原発事故が起こってからですね、被曝を心配する市民の方が市役所に行ったり、保護者が小学校とか幼稚園に行ってですね、何か聞くとこによると、「土を測ったら、1キロ当たり例えば500ベクレルでした」と、「これは本当に大丈夫でしょうか?」と、まぁこういう風に聞きに行くわけですね、「土を変えてください」。そうすっとですね、あろうことか、その市役所とかですね、学校の方がですね、「いや、あなたがそんなに心配だったら、その科学的根拠を示しなさい」と、こう言うわけですね。





ま、驚くべき日本になりましたね、ええ。非常に悪質だと思いますよ。私は役人とか教育関係者、これほど悪質になったのかと思いますね。というのはですね、元々あの、シーベルトとかベクレルなんてのは非常にそれ自身が難しいんですよ。しかもですね、「シーベルト」はまぁ直接体に関係がありますからね、まだまぁ「1年1ミリシーベルト」とか覚えればまだ良いんですけど、それでも東大教授でも足し算できないぐらいですからね、まぁやや難しい。





ところが「ベクレル」になりますとね、ベクレルっていうのは別にすぐ判るわけじゃないんですよ。シーベルトを決めたら、それから換算していくわけですから、結構大変なんですよね。だから「1キロ当たり何ベクレルが危険であるか、あなた証明しなさい」なんつったって、これ証明できる人はですね、すぐちょこちょこっと書いてできる人は日本に10人ぐらいしかいないでしょうね。





だからこそ法律というのはですね、そういうこと決めてるわけですよ。例えば、高速道路80キロ、「80キロっていうのはどうしてですか?」って聞かれてもですね、これ専門家じゃないとなかなか答えらんないですね。「70キロじゃいけないんですか?この道路では何で80キロなんですか?」なんて言われたって、普通の人答えらんないんですよ。その代わりに80キロという看板が立ってるわけですね。看板を説明するのはお役人の方であって、走る人の方じゃないんですよ。





例えば、法律では「原発からの放射線は、内部、外部合わせて1年1ミリだ」と、「自然放射線と医療放射線と比べてはいけない、これは足し算だ」と。つい最近も読者の方からですね、ある幼稚園で「自然放射線が1.5なんだから、このぐらい良いじゃないか」って、いや、それ違うんです、足し算ですからね。





土壌は1平方メートル当たり4万ベクレル、1キログラム当たり100ベクレル以上のものは低レベル廃棄物、食品基準はおよそ1キロ40ベクレル以下、水道水は1リットル当たり10ベクレル程度、と数値を決めてるわけですよ。これ決めてるのは、普通の人が計算できないからですよね。





だから例えば、幼稚園の砂場が1キロ500ベクレルならですね、それはですね、保護者が心配するのは当然で、「低レベル廃棄物」ですからね。低レベル廃棄物の中で幼稚園児を遊ばせるってことですから、それは保護者が心配するんですけど、それをですね、保護者に向かってですね、幼稚園が「危険性を科学的に示せ」と言う場合があるんですよ、ええ。だけども、これは逆ですね。





例えば、高速道路80キロんところを120キロで走って良いって言う人がいたら、法律に反して120キロで走って良いという方が、根拠を示さんといかんのですよ、ええ。幼稚園はですね、「何故、法規の基準より高いのに安全なのか?」 「何故、幼児を低レベル廃棄物の中で遊ばしても大丈夫なのか?」と、これを言ってくれないけないんです。





「国が・・・」なんつって逃げちゃいけませんよ、国っていうのは、現在の民主党政権もありますけども、我々が守ってきた法律があるわけですね。この法律は、国が国民に示してるんじゃないんですよ、国民同士の約束事ですから、ええ。私とあなたは…例えば幼稚園にお子さんを出してるお母さんですね、幼稚園の園長さんたちと・・・「私と園長さんとの間の約束は1キログラム当たり100ベクレル以上は低レベル廃棄物ということだったじゃないですか」と、「だから1キログラムあたり500ベクレルというのは『低レベル廃棄物』です」と。





「低レベル廃棄物の中で子供を遊ばしてるんだから、これが何故安全か、園長さん説明してください」って話聞かなきゃいけないんですね。これに対して園長さんが「何言ってんだ」と、「政府が言ってんじゃないか」と・・・民主党政権つうのはあれ、変な政権なんですよ。だって「増税なき財政再建」って言ってて、首相がですね、「増税に政治生命を懸ける」つってるような政権ですからね、もう公約も法律も全部無視なんですよ。そんなね、政府の言うことを我々国民が守ってられませんよ。ほんとは解散せないけないんですからね、ただ居座ってるだけですから、法律違反みたいなもんですからね。





やっぱり私はこの際ですね、幼稚園の園長さんも真面目になって欲しいですよ。小学校の校長先生、それからもうあの、ええっと、教育委員会はもう絶対ダメだって言われてますけどね、やっぱここでもう一回、思い出してください、と思います。


(文字起こし by danielle)