日本の子どもに贈るもの(2) 電気不足の社会 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

日本の子どもに贈るもの(2) 電気不足の社会 (6/4)




(日本国内だけの常識にとらわれずに読んでいただければと希望します)



日本では今「節電」はよい子の考えのように錯覚されています。でも、節電は日本の子ども達に「国際競争に勝てない惨めな日本」をもたらすでしょう。



今の日本で「節電」がよい子のように思われているのは、「電気を使うということは悪いこと」とされているからです。でも「電気」は活動の源です。だからよほど無駄に使っていない限り、「電気を使うことは悪いこと」ではなく、「良いこと」なのです。まずはこれを逆転させなければなりません。



電気のようなエネルギーは「活動の源」であり、それがあって始めて国際競争に勝つことができます。電気の節約は日本の活動を減らし、日本の将来をダメにします。それにも程度問題があります。



アメリカの電気は8億キロワット、日本の電気は1.8億キロワット。アメリカはほぼ日本の2倍の国ですが、電気は4倍以上使っています。だから、アメリカは元気がよく、将来性もあるのです。電気を使わなければ子ども達は大きく育ちません。



なぜ、日本はアメリカの4分の1の電気なのに節電をしようとしているのでしょうか?
1)その方が役人が電力削減の利権をとれるから、


2)その方が電力会社が原発の失敗の責任を回避できるから、


3)日本の報道はアメリカとの違いを報道しないから、


4)節約好きの国民を錯覚させた方が人気が出るから、


5)電力会社があまり作らない方が良いというシステムだったから、


6)電力会社の収益を総原価方式(電気代が高いほど儲かる。量が少ない方が
良い)という常識外れのものだったこと。



逆に本当のこと、つまり「電気をさらに使うと日本は繁栄する」というのはこれまでの日本の常識では考えにくいことです。それは日常的な家庭生活では「節電」は良いことだからですが、それは家庭が生産の場でないことによります。



石油などの節約でも同じですが、生産も競争もない場としての家庭と、過酷な民族間の競争と生産、技術革新の場である社会は自ずから基本的な倫理(道徳)が違うのは当然で、それをよく考えて子どもに良い日本を贈るのが大人の役割なのです。



アメリカや中国は節電していません。節電している国は、節電していない国に絶対に負けます。とりあえず原発が動かないので、大至急、資源の心配の無い天然ガス、石炭の火力発電所を作る「新しい電力会社」をつくることです。



これを阻止しようとしている「原発再開問題」に夢中になると、その時間だけ損失をします。太陽光発電なども失敗した電力会社の応援をしているということをよく考える必要があります。



エネルギーは限度があるものですが、それも程度問題です。世界で日本だけ全く使わずに滅びていくという選択は間違っています。日本は「一人あたりのエネルギー消費が先進国の中で平均以下」という目安で活動を決めるべきでしょう。



その意味では今、日本は先進国の中でだんぜん、省エネルギー社会でGDPに対してエネルギー消費は少ない状態にあります。少なくとも今の2倍、つまり日本全体で4億キロワットぐらい電気を作らないと日本の活動が低下して衰退に向かうでしょう。



・・・もう一つ私が言いたいこと・・・



第一、日本人はアメリカ人より優れていても劣っているということはありません。その日本人がアメリカ人の2分の1以下の電気で甘んじているような状態では、教育といく点でもプライドを持った子どもを作ることは出来ないと思います。



私たちの祖父がロシア、中国、アメリカと戦って外地でその命を落としたのは日本を繁栄させるためです。私たちはそれの逆方向に行っています。



私が政府なら、国民には「まだまだ余裕があるので電気は充分につかって快適で発展性のある日本を作ってください」と呼びかけ、一方、電力会社に対しては「アメリカの2分の1しか生産せず、アメリカの2倍の電気代とは何だ!もっとシッカリしろ!」とハッパをかけます。



なにしろ石油、石炭、天然ガスが「もう少し経ったら無くなる」と考えているのは日本だけで、アメリカなどの100年後の計画を見ていないからです。



その点で、今の政府は「国民をいじめ、電力を優遇する」とうことで徹底し、それをマスコミが支持しています。マスコミの記者さんも自らの魂に問いかけ、ものの本質をじっくり考えて欲しいと思います。

(平成24年6月4日)




--------ここから音声内容--------



えー、このブログをお読みになってる方はですね、ま、あまりあの日本国内だけの常識にとらわれないで、物事を読んだり考えたりなさってると思いますが、特に今回ですね・・・えーちょっともう、逆転の発想なもんですから・・・。





ええと、日本では今、「節電はよい子の考え」と考えられてるわけですね。つまりあの「節電する事は良いことだ」と。「何で?」って聞くとですね、「ええと、資源が・・・使わないから」とかですね、で、「資源を使わないってことは良いことだ」と思ってるところもあるんですね。で、まぁ「電気はちょっと無駄なものだ」と思ってるところもあるんですね。





例えば、「薪をくべるのはそんなに悪くない」けど、「電気を使うのは何となくマズい」という、こういう感じもあるんですね。しかし、電気を使う・・・電気っつうのは人間の活動するためのもので、エネルギーとしては一番高度なものなんですね。それから「電気を使うってことは決して悪いこと」ではないんです。つまり「良いことである」ってことですね。人間は何のために生きてるかって言うと、ま、ご飯を食べたり考えたり、子供育てたりと、色んなすることがあってですね、そのために一番都合の良いのは電気なんですね。





他にももちろん・・・例えば、ガスの火の方が暖房は良いとか、ほいから何か煮物するときは良いってことはあるんですけども、一番、万遍ないエネルギーっつうのは電気の方が良いわけですね。で、このような電気エネルギーっていうのは「活動の基(もと)」で、従ってまぁ、ここもまたひっくり返っちゃうんですけども・・・要するに、電気を多く使う国の方がおそらく強いんですよ。変な話なんですけど強いんですね。





だからアメリカが8億キロワット、日本が1.8億キロワットですね、そうしますとアメリカ人と日本人ってどういう差が出てくるかって言うとですね、一人当たりで2倍になるんですが、アメリカはいつも街が明るいと、日本は暗いと。例えば何か活動しようと思っても日本はちょっと我慢すると、アメリカは思い切ってやると、どっか旅行行くにもアメリカは遠くに旅行して、日本は余り遠くに行かないと、ま、こんなことになりますからね。それはやっぱり、うんと使った方が良いわけですよ。





じゃあ、何で日本人は節電しようとしてるのか?っていうのは難しいんですけど、ま、「日本古来の思想がある」と言えばその通りなんですが、


1) 「役人が電力削減の利権を取れる」っていうのは、これは一番大きいでしょうね。


2) それから電力会社にしてみれば、「原発の失敗をあんまり目立たないようにできる」っていうことですね。


3) それから、「日本の報道がアメリカとは違う報道をするから」。


4) 「節約好きの日本人だから、節約を呼び掛けたら人気が出る」っていうことですね。


5) まぁ、「電気の効用に気が付かない」。


6) それから例えば、電力会社がですね、「総(括)原価方式」つうの使っておりまして、普通の会社ですとコストが安くて売り上げが高い方が良いんですけど、電力会社は逆なんですよ。もうちょっと考えられないんですけど。「値段が高くて、あんまり売らない方が儲かる」っていうか、「安定してる」っていうか、そういう風になるんですね。





ということで、「電気を更に使うと日本は繁栄する」というのが(これまでの日本の)常識では考えらんないんです。これにちょっとややこしいのは「家庭の存在」ですね。家庭っていうのはこれ全然、「人生」とか「家」というのは全然競争にも関係ないし、あまりこう・・・節約が似合ってるとこなんですね。ですから、この「競争と生産の無い家庭」と、「過酷な民族間の競争がある社会」っていうのと、どうも混同してしまって、「日本の将来はですね、非常に暗い将来を子供に約束している」ということなんですね。





で、アメリカや中国は節電してないわけですね。節電してない国と節電してる国とを見ますと、それはもう節電してる方が非常に大きく負けてしまうわけです。で、エネルギー源が無いか?って言ったら、もう石油と天然ガス、山ほどあるわけですから、ま、千年ぐらいあるわけですからね。だからこそ、アメリカも中国もどんどん使ってるわけですね。





で、まぁ私はですね、何かの機会にまた書きたいとは思ってるんですが、やっぱり極端っていうのはね、よっぽど自分の考えがしっかりしてなきゃダメなんですよ。例えば、アメリカ、中国、その他の世界っていうのありますね。その世界の平均よりか、はるかに電気の使用量がGDP(国内総生産)当たり低いと、まぁいうことになりますとね、これは日本人が独特な哲学を持って、ものすごくよく考えてなきゃいけないんですね。





「横並び」じゃ、分かんないわけですね。横並びってことは標準的だってことですから、私はまぁ、今の日本の考え方から言えばですね、「中庸(ちゅうよう=かたよることなく、常に変わらないこと。)」つまり、今の2倍は電気は使った方が良いと思いますね、国民は今の2倍。つまり、日本全体では4億キロワット、これはまぁ生産してですね、ええと、日本の活動を盛んにするっていうことがですね、日本人の幸福にもつながり、環境も良くして・・・これ、環境も良くするんですよ!それから楽しく生活ができる、就職もできるってことになると思いますね。





あともう一つ、私がこれでね、腹立つのは、私、日本の方が好きなもんですから、アメリカの1/2っていうのは気に入らないんですよ。まぁアメリカ人と日本人が比べてどっちが優れてるとは言いたくないんですけども、まぁ日本人がアメリカ人の召使いってことはありませんから、親がですね、そんなプライドの低いことでは、子供を立派に育てることは出来ないと思うんですね。そいから我々の祖父、おじいちゃんはですね、ロシア、中国、アメリカと戦ってきたわけです。えー、まあね、それも無にするのか?と、まぁいう感じですね。





私が政府だったら、こう言いますよ。国民に向かっては、「まぁとにかくアメリカの1/2って、ものすごく節約してんだからこんなこともう止めて、アメリカと同じぐらい使いましょう!」と、まず呼び掛ける、と。「電気は2倍ぐらい使って良いですよ」とこう呼び掛けて、電力会社の方にはですね、「やっぱりアメリカ並みの電力費で・・・ちゃんと電気代でですね、国民に供給しなきゃダメだ!」と、「あなた方、日本の企業でしょう?」と、ね。そういう風にやっぱり言うと思いますよね。





ええと、鉄鋼業と電力業つうのは全然違うんですが、これは見掛けが違うだけなんですね。石炭買ってきて溶鉱炉で燃やして鉄を出すのが鉄鋼業、石炭を買ってきて発電所で燃やして電気を作るのが電力業、ですから鉄と電気っていうのはですね、出てくるものは違うんですがやってることは同じなんですよ。

で、鉄鋼は国際価格なのに、電気は国際価格じゃないということですからね。電気がこんな2倍も高いっていうのは異常なんですよ。韓国は少し政策的なことありますけども、日本の1/3ですからね。サムソン(SAMSUNG)にパナソニックが負けるって、当たり前かもしれませんね。





これだけ日本の産業をいじめて、政治家と電力だけが良い目に遭うつったら、やっぱり日本ダメになってきますね。ま、今の政府は「国民をいじめて、電力を優遇する」っていう、自分の投票してくれた人にまぁ裏切ると言うかですね、ま、そういう政府です。またマスコミもですね、それを現在支持してますけども。マスコミの一人一人の記者さんっていうのは、ま、魂のある人もいるんですよ。ですからこの人たちが自らの魂に問いかけて、物の本質をじっくりと考えて欲しいと私は思います。


(文字起こし by danielle)