東北人の誠意を見せて下さい:一関市長と議会に謝罪を求める | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

東北人の誠意を見せて下さい:一関市長と議会に謝罪を求める  (5/28)




現代の日本人の悩みの一つは「ケジメ」をつける誠意と勇気を失ったことでしょう。少し前にはJR西日本が大きな事故を起こしたのに社長が辞任せず、もがいて事故隠しという不祥事を招きました。近くは原子力安全委員会が判断ミスをして福島原発が爆発したのに、相変わらず1600万円の年俸をもらいながら、委員を辞任しません。



かつて日本の小学校では「間違ったら謝ること、潔いこと、誠実であること、それを実行する勇気を持つこと」を教育したものです。



私は昨年の秋、事故から半年ほど経ったところでテレビ放送で「東北の一関は汚染されたので注意した方が良い」という旨の発言をしましたら、東北から一斉にバッシングを受けました。特に一関市長からは2011年9月7日に公開非難を受け、議会からも謝罪を求められました。




これによって、私は学者としての信用を一部、失墜し、東北のマスコミは私が敵のように報道し、郡山市は私のアドバイス職をキャンセルしました。個人としての被害は甚大でした。でも、岩手県でも一関市などが汚染されたことがほぼわかっていました。学問的な情報を提供するのは学者の仕事でもあります。しかも半年後です。


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一関の人は次の事実をどのように感じているのでしょうか? 私への批判は間違っていて、個人を追い詰めたことについて、誠意と勇気は無いのでしょうか?


1)私の発言の直後、2011年9月9日、1キロ583ベクレルのウシ2頭を出し、出荷停止をした、 その後も汚染食材を多く生産した(個別のことは一関市の人が知っておられる)、


2)農家が東京電力を相手取って、汚染による被害を補償するために約4000万円の訴訟を起こした、


3)国の「汚染状況重点調査地域」の指定を受けた一関市が、国の承認を待たずに除染に着手する方針を明らかにしたことについて、岩手県知事は「国が先頭に立って、東電が早めに手を打つのが基本。強く県からも促したい」と除染を国に働きかける姿勢を示した(一関市は岩手県知事に「一関が汚染されていることを認めたのはけしからん!」と抗議文を送っていない)、


4)一関市は5月22日独自の判断に基づき市内の学校施設で本格的な除染作業を開始した。子どもの安全を優先する観点から国の手続き遅れに堪忍袋の緒を切らした。


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日本人には誠意が求められます。私の手元には市長と議員からの抗議文がありますが、いったい、このまま一関市は「武田は個人だから、無視しても良い」という態度を続けるのでしょうか?



日本の再建には、誠実さと誤りを認める勇気がいります。一関市自体、東電の不誠実、政府の不誠実に反撃をしていますが、いったい、自分自身の不誠実なら黙っているのなら誠実とは言えません。私は早く一関市の汚染を指摘したのだから、学者として批判されることはないと考えます。



一関市長と議会の誠意と勇気、東北人の魂に期待します。そして今後「正しいこと」を発言した人が被害に遭わないためにも、大切な一つの儀式と思います。


(平成24年5月28日)




--------ここから音声内容--------




えー、日本人とは何かと言うとですね、やっぱり『日本人は日本列島に住んでいる』とかですね、『DNAが日本人だ』ってだけじゃあ、ちょっと寂しいですね。やっぱり日本人っていうのは誠意があり、潔いと、「ああ、やっぱり日本人だなあ」と、こういうのが日本人だと思いますね。私も小学校の頃、先生に教わりましたよ。人間には間違いがある。間違ったら『すいません』と謝る勇気を持ちなさいと。そしてそこから再スタートなんだと、いう事を言われましたね。





私は実はですね、去年はとても良い経験したんですが、9月の初旬にですね、やしきたかじんの番組出まして、まあ、『一関が東北で汚染された』という事を指摘します。これはですね、何故指摘したかと言うと、勿論福島で事故が起こりましたから、えーまあ、隣の県は宮城県ですからね。岩手県まで汚染が行かないかなあと皆思ってたかも知れませんが、残念ながら風に流れて、雨か何か降ったか気流の関係かですね、一関で3月20日頃ですけども、放射性物質が降った訳ですよ。そしたらこれ、一関の子供を守らなきゃいけないですね。





で、まあ私が言ったのは9月ですから(事故から)半年後ですから、ちょっと遅きに失してるんですが、その頃まだ岩手県が汚染されてるって事はあんまり知られて無かったので、やっぱり言わなきゃいけないと思って、一関の名前を出しました。そうしますと突然ですね、東北の新聞にどんどん書かれ、一関市長と議会から『発言を撤回しろ』という様な抗議が来ました。





学者ですからね、私は。それが事実でなければ撤回して謝ります。しかし一関が汚染されたのは事実でありますから、私は学者として撤回できませんよ。だって事実を撤回するという事は学者にとっては、もう、それはできませんからね。そのために私はかなりの被害は受けました、ええ。例えば郡山市が私をアドバイス(アドバイザー)にすると決まっておりましたけれども、この事でキャンセルになりましたね。そういう色んな事がありました。





その後ですね、私はまあ、一関の人もですね、あの、一関の人の子供の事は一関の人が守るんですからね。私じゃありませんから。まあ「事実を言ってもらっちゃ困る」と、一関が汚染されたという事を隠したいというのならね、そりゃあまあ、私がわざわざそれを指摘する事も無いんで黙っておりました。





私は実は一関のお米も食べますからね。それは別にその、一関がどうと思ってる訳じゃ無いんです。汚染されたのは非常に残念なんですよね。一関のお米を食べてるのは汚染されてないお米で、且つ、美味しいから食べてるんであって、それ全然何の問題も無い訳ですね。





ところが私の発言の直後、9月9日にはですね、1キロ583ベクレルっていう非常に強く汚染された牛が2頭出ましてね。出荷停止になりました。その後も汚染された食材っていうのは結構一関付近から出ております。それについては私は何もコメントしませんでした。それはどうしてかって…残念でしたけどね、やっぱり私は一関の付近の人を守りたいと思いましたけど、それは守ると、私が政治的に守るんじゃないですよ。『学者として正しい情報を提供したい』と。やっぱり学者が正しい情報を提供しないとですね、政治家もそれに基づいて住民を守れませんから。そういう意味ですね。だけどそれを控えておりました。そりゃまあ、一関の市長さんとか議員さんがそんなに心配するなら、事実を伝えるのも何だなあ、と思ってやめておりました。






ところがですね、私、その後少し気分が変わって来たんですよ。って言うのはですね、一関の農家の人が東京電力を相手取ってですね、汚染による被害を補償して、4000万円払えという訴訟を起こしました。私はね、『あれっ?!』と思いましたね。だって隠してくれって言う人がですね、訴訟を起こすっていう事なんで、ちょっとこれには引っ掛かりました。





そうこうしている内に今度はあろう事かですね、一関汚染状況を重点調査地域に指定を受け、それでも一関市は国の態度が遅いと言って独自に除染に着手する方針を明らかにしました。更にこれについて岩手県知事がですね、『早く手を打ってくれと、県からも強く国に促したい』と言うんですよ。いや・・・・・これねえ、ちょっと私、驚きましたね。





って言うのは、一関市は私が言った事を、やめてくれと言う事を実施してるんですよ、自分で。だから、『あれっ?!』と思いましたね。私に謝罪文が来ないんですよ。えっと9月に指摘されて、その時はカッと来たけど、よくよく考えてみりゃ汚染してると。子供を守らなきゃいかんので、国に汚染状況重点調査地域に指定してもらって早くやってくれと言ってる、と。「あの時は失礼しました」という風に言ってくれるかなあと思ったら、言って来ないんですよ。





それで私は、まあ、これを直接文章を書こうと思ったのはですね、更に最近ですけど5月22日、独自の判断に基づいて一関市がですね、学校の本格的な除染作業を開始したと。子供の安全を優先する観点と言ったと。これは良い事ですよ。もう非常に良い事ですね。これを早くやってもらいたかったっていうのが私の最初の意図だったんですが、まあ遅れても良いですよ。だけどねえ、やった事は良い事ですよ。だけどやっぱり私に謝罪して欲しいですね、ええ。えーまあ、『武田は個人だから無視しても良いよ』っていうのは駄目なんです、これ。





あの、サリン事件の時にね、松本サリン事件の時ですよ。本当はオウムっていう宗教団体がやった訳ですけども、あの時に民家がね、やったみたいな、何とかさんって言う人がね、もう集中的に報道されます。今度の東北の新聞は…私に対する態度はまるでそうだったんですけど。何しろね、一個人を狙ってバッシングするんですよ。個人っていうのは力ありませんからね。あの時も非難された人、可哀想にじっとしてました、ええ。私は少しは発信力ありますけど、それでも個人ですからね。





まあ一関市はですね、やっぱり自分でですよ、「一関市が汚染されてるから、除染しなきゃいけない。国に助けも求めてどんどんやって行こう」と言うならですね、やっぱり9月の私に対する抗議ですね、「本当の事を言ってくれるな。隠してるんだから」と、まあ(そう)いう事に対してですね、やっぱり私は、『すいません』というですね、謝る勇気を持ってもらいたいし。東北の人っていうのは非常にあの、そういう点では『魂』ちゃんとしてますよ、私の知ってる人は少なくとも。





ですからこの事が非常に大切な事はですね、何故大切か、私が何故ここで、一関市長と議会に私に対する謝罪を要求するかって言うとですね、これは今後ですね、学者の人が『事実に基づいて正しい事を言える』という事なんですよ。だから儀式としてどうしても必要ですね、ええ。『学者が正しい事を言った時はバッシングしない』と。これはですね、日本の今後の正常な発展の為に大切です。





今でもですね、何か福島の何処だったかのを、他の県の所に偽装して売ったなんていうのは、今でも出てますね。本当に多くの人を傷つけますよ、色んな意味で。私はですね、誠実な日本人、ちゃんと謝る事のできる日本人を一関の人に、市長と議員に期待します。

(文字起こし by まあ)