お子さんを守るための教室(2) 1年1ミリでも危ないか? | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
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お子さんを守るための教室(2) 1年1ミリでも危ないか? (5/15)




1年1ミリの法律の規制もありますし、1年5ミリ以上の被曝は白血病に対して労災が認定されるのに、1年20ミリとか100ミリと違法行為を勧める知識人もいて、困りものです。でも、反対に1年1ミリでも心配しているお母さんも多いので、ここで子どもを守るための考え方をまとめました。

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まず、基礎知識として頭に入れなければならないことが3つあります。第一は、被曝は4階建てということです。一階が自然被曝(1.5ミリ)、二階が医療被曝(2.2ミリ)、三階が核実験被曝(0.3ミリ)、そして四階が原発被曝(1ミリ)です。






原発が爆発しなければ、普通の人は1年4ミリ程度の被曝をしています。この被曝がガンなどの元になるかという点については世界的にも議論があります。つまり学問的にわかっていないということです。ただ1950年に結核予防法ができて児童がレントゲン検診を受けるようになると、白血病が増えたので、検診の頻度を下げた経験があります。でもその時には一回のレントゲン検診で受ける被曝量が多かったので、そのまま直接、比較することは出来ません。



また広島長崎の被曝の例では、低線量率でも病気になっていますし、ドイツは原発からの被曝を1年0.1ミリにしています。ドイツは医療被曝が少なく、核実験被曝もほとんど無いので、自然被曝を中心として3ミリ程度でしょう。



考え方としては次のようなのが妥当です。

1) 被曝はいずれにしても危険である(法律でもそのように明記されている)、

2) 人間はどのぐらいの被曝がどのぐらいの被害を与えるか正確にわからない、

3) 当面、法の規制に基づくのが妥当。



第二には、基準値は「普通の人のうち、やや弱い人が対象で決まっていて、特異体質の方は含まない」ということです。



第三に、社会は危険に満ちあふれているので、若干の危険を承知で生活をしているということです。



このような3つのことがありますから、国や自治体は法律上の規制を守ったり、社会的に問題になるようなことにならないように注意をすることまでは出来ても、個人の特殊性や希望に全部、沿うことは出来ないということも知っておかなければなりません。



特に第三をよくお母さんが考えてあげてください。交通事故では1年に100万人以上の人が負傷します。そんなに多くの人が負傷し、時には子どもが悲惨な目に遭うのになぜ、車は走っているのでしょうか? それは車がなければ、スーパーに食料を届けることも出来ず、お米や水も運べず、宅急便もなくなり、救急車もなしになるので、犠牲を承知で自動車を走らせています。



このようなことは「メリット」と「損失」のバランスで決めていますし、それは医療でも同じです。薬も副作用があり、ワクチンは危険でもあります。インフルエンザがはやりそうな時期に学校に行かせること自体も問題です。そこのところをどの程度のバランスでやるかということです。



1年1ミリは「被曝をするのだから、少し白血病やガンが出るが「我慢できる範囲」」と言うことで決まっています。



でも、個人によって「我慢できる」というのは違いがあるので、「まったく影響がないとできる」というレベルとして「クリアランスレベル」を決めています。この場合1年に0.01ミリシーベルトですが、瓦礫の管理などは出来ますが、個人の被曝ではやや非現実的です。だから、「ある程度の覚悟」が要ります。もし覚悟をしなければ、自然放射線の他、医療も受けず、原発も全廃する必要を生じます。



私はこの際、原発を全廃し、医療の被曝も減らして、しばらく様子を見ることと、被曝の医学を進めることが最善と思っていますが、現に福島原発が爆発したので、過去のことは仕方が無いと思い、子どもに対してはぜったいに1年1ミリを守るという決意を大人がする必要があると考えています。



それぞれ1年1ミリの意味をお考えになり、ご判断ください。1年1ミリ以下は個人で判断するしかないのです。

(平成24年5月15日)




--------ここから音声内容--------



えー、これはあの、子供を守るためのお母さん教室みたいなものですね。えーっとあの講演会なんかで色々ご質問受けます。えー今度、今日はですね、1年1ミリっていう、まあ(規定)のがあるんですが、それでも危ないって心配されてる方もおられます。これについてですね、えー、どうするかについて、お話をしたいと思いますが、1年1ミリ以上は駄目だというのは法律の規定もありますし、1年5ミリ以上になりますと、白血病になるという事で、労災適応されております。




えーまあ、1年20ミリとか100ミリまで大丈夫だと、まあ、言う人もおられるんですが、まあ、その人はその人で勝手にやってください、と。えー、ところが逆にですね、1年1ミリ以下でも心配してるお母さんも多いので、そこのところをですね、踏ん切りをまあ、付けてもらった方が良いんではないか、と思います。




まず第1に頭に入れなければならない事は、被曝がですね、4階建てだっていう事なんですね。あの、1年1ミリとか1年5ミリとか言うとどうしてもそれだけ考えちゃうんですけども、1階部分が自然被曝、2階部分が医療被曝、3階が核実験被曝ですね。このうちどうにもならないのが自然被曝と核実験被曝で、2階と4階は何とかなるんですね。で、もしも原発が爆発しなければ、大体1年4ミリ、つまり自然の1.5+医療の2.2+(核実験の)0.3ですから(合計)4ミリですね。これがまあ、あの福島原発爆発するまで、大体平均的なお子さんが被曝してた量ですね。




で、まあ、この4ミリでもあの、ある程度の癌は出るんですね。その一例として、まあ、1950年に結核予防法が出来た時に、レントゲンを毎年やったんですけど、そうしますと白血病が出てきて、それであの、検診の頻度を下げたという事があるので、えーやっぱりですね、あの、被曝はあんまり良くないっていうのは当たり前なんですね。




広島・長崎の被曝の例でもそうですし、まあ、ドイツが原発からの被曝を1年0.1ミリというのに、非常に低くしてあるのもですね、まあこれの原因です。それに加えてドイツでは医療用の被曝も日本よりか少ない。核実験被曝も少ないっていう事で、まあドイツでは全部入れて3ミリいかないんじゃないかなと思いますね。ちょっと自然被曝が大きいんですけど、まあそのぐらいじゃないかと思います。




そこでですね、まあ妥当な考え方はこうだと思うんですね。『被曝はいずれにしても危険だ』という事ですね。それから『人間がどのぐらいの被曝を受けると、どのぐらいの被害があるかっていう事は分からない』。世界的にも日本とドイツが(見解が)違うようにですね、(見解が)違うという事ですね。




だからまあ、一応今まで色々な人が考えた法の規制に基づくのが妥当だろうと思うんですね。まあ、専門家でも御用学者みたいな人もいますが、原発が爆発する前はですね、みんなで「放射線の被曝、気をつけよう」と言ってた訳ですから、その当時のものって結構良いんですね。あの、お子さんを守るためにも良いっていうのが私の判断ですね。




第2には、まあこの、基準値っていうのは普通の人の内やや弱い人が対象になって決まってるんですね。ですから、まああの、成人男子で元気な人はこれよりか強いし、えー何か身体に少しの異常がある人は弱い人もいるんですね。ただ特異体質の人は含みません。ですからまあ、自分のお子さんが特異体質であるって場合はですね、やっぱり、えーかなり気をつけるって必要がある訳ですね。




もう1つ、第3にはですね、えっとあの1年1ミリででも心配してるお母さんの中には、社会に危険が満ち溢れてるっていう事について、ちょっとですね、えーよくまだ認識されてないっていう方が多いようですね。えーっと国とか自治体がやるべき事はですね、特異体質の人だけ注意する訳にもいかないんですよ。まあ一応ですね、全体を考えて、やるって事なので、第3番目の事について、お母さんが考えてあげなきゃいけないんですね。つまりお母さんがやるべき事と全体がやるべき事とが、あるんですね。お母さんがやるべき事は、まあ全体は、まあ一応守られてるとして、それで(個別の子供のことを)考えるって事ですよね。




例えば交通事故ですけど、1年に100万人以上の人が負傷するんですよ、交通事故で。時々お子さんが悲惨な目に合いますよね。だけど何で車、走ってんのかというと、まあ車が走らないとスーパーに食料も行かないし、お米や水も運べないし、宅急便も無いし、救急車も無い、と。(そう)いう事になるんで、100万人って言ったら多いんですけど、まあ一応これでしょうがないっていう事ですね。これはメリットと損失のバランスで決まってる訳です。





医療でもそうですね。薬を飲めば必ず副作用ありますし、ワクチンも危険ですし、例えばインフルエンザが流行りそうになった時に、学校に行かせること自体で問題な訳ですよね。ですから、どこのところで決めるかっていうのはやっぱりこれ、全体としては国とか学校がやるんですけど、個別にはやっぱり両親がやるしか無いんですね。




で、1年1ミリっていうのはですね、どうしても少しは癌が出る、けども我慢ができる(許容範囲内の発生率)っていう事で決まってる訳ですね。えーまあ、我慢ができるのはどこか? って事になるんですが、子供が例えば食品のうち、知らず知らずのうちに(被曝に)なってしまう、例えばバナナを食べるとか、海藻類を食べるっていうのは被曝しますからですね。そういう事はある程度の覚悟はいるわけです。やっぱりどうしてもある程度の人はですね、病気になったりもするわけですね。




原発を全廃しても4ミリシーベルトは残る(1階から3階までの被曝は不可避)って事ですね。と言いますとね、じゃあ少し心配な方、それでも心配な方はどうするかって言うと、ややですね、医療被曝を減らすっていう事でしょうね。あの、例えば、今まで気軽にレントゲンを受けてたりしてたのを少し止める、と。そうしますと、福島の原発で爆発した分を補うことが出来ます。多くの人は恐らくですね、福島原発が爆発するまで、何ミリぐらい、何ミリシーベルトなんて言葉も知らなかったぐらいだと思うんですね。




ですからまあ、この際ですね、自然放射線とそれから核実験は仕方ありませんから、ちょっと飛行機を控えるとかですね、やっぱり飛行機に乗ると結構被曝しますから。それから海藻とかバナナを少し控えると。それから医療用のものを控えるって事をしますと、4階建てですからね、何と言っても。2階部分を少し小さくして、4階の部分を少し余裕を持たせると、こういう事をすればですね、お子さんは福島原発の前と同じような状態になります。




これでもご心配って事はあるんですよね。鼻血が出たり下痢をしたりしますからね。でもお母さん方、心配なんですが、鼻血とか下痢が必ずしも、そのまま白血病とか癌に繋がるって訳でもないんで、えー、お子さんをずっと見ておられるお母さん、心配だと思いますが、まあ一応そこの所は冷静にお子さんを守ってあげる、と。




お子さんとしても交通事故を怖がって家を一歩も出ないって言ったら、やっぱり成長に問題が起きますからね。まあ、ここは若干の冒険があるんですが、そこはお母さんの方でですね、よくお考えになって、(対応を)やられたら良いんじゃないかと思います。

(文字起こし by まあ)