被曝と健康・・・お子さんを守る考え方教室(1) 被曝と健康 (5/13) | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
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被曝と健康・・・お子さんを守る考え方教室(1) 被曝と健康 (5/13)




しばらく旅行をしていましたら、読者の方からのメールがたまって一部のメールにご返事ができなくなりました。いずれのご質問もかなり重要なもので、ご返事が出来ないのはまことに申し訳ないのですが、時間がとれそうもないので、「お子さんを守る考え方」のシリーズを少し書いて、日常の生活のご参考にしていただければと思います。今回はその1回目で、復習もかねて、主に「考え方」を整理します。


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「どのぐらい被曝しても大丈夫だろうか?」というご心配を今でも多くの方がお持ちです。それは「原発推進側」も「被曝心配の方」の両方が同じような錯覚をしていることもあります。



まず、法律では(一般人で原発からの被曝に限っては)1年1ミリを上限にしているということです。この1年1ミリは国際的にも、また国内法でも決まっている値で、もちろん専門家がいろいろな知見を元にしていますから、決して「いい加減な値」ではありません。



政府をはじめ、マスコミの記者、一般の方で「法律で1年1ミリと決まっていても、俺は1年100ミリまで大丈夫と思う」と発言している人がおられます。自分がどのように思うかは個人の自由ですが、人に違法行為を勧めているのですから、お子さんを守る時に、そんなことにだまされてはいけません。特に一つか二つの論文を読んでそれだけで判断している人もいますが、被曝と健康はそれほど簡単ではないので、あまり個人で判断しない方が良いでしょう。



道路の制限速度が60キロと決まっているのに、急ぐから自分で120キロで走っても良いと考えるのは良くないことですが、さらに他人に「あの道路は60キロだけど、120キロでも大丈夫だよ」というようなことを公的に言ったり、ブログに書いたりするのは社会的にやってはいけないことです。



もし、変えるなら法律や規則を変えてからにしなければなりませんし、放射線障害防止規則(厚労省)のものは2011年10月(事故後半年)に改正されていますが、それでも1年1ミリも含め、土壌汚染などの数値は変わっていません。つまり今の政府は、片方で法律を改正して1年1ミリのままにしながら、社会的には瓦礫問題などで法律違反(核廃棄物を瓦礫と呼んだりしています)を繰り返し、いわば「ダブルスタンダードの状態」を続けていますが、国民は自分たちの健康の問題ですので、紛れないようにしましょう。


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ところで、1年1ミリで安心か?ということになると難しくなります。簡単に言うと「学問ではどこから危険かわからないので、1年1ミリにした」ということですし、「原発で1年1ミリということは、他の被曝も入れると1年5ミリと言うこと」とも言えます。



被曝は足し算ですから、一階が自然被曝で1.5ミリ、二階が医療被曝で2.2ミリ、三階が核実験被曝で0.3ミリで、原発がなくても1年4ミリは被曝します。それに原発の1ミリが合算されるので、合計で5ミリです。



人間が自然被曝に対して防御能力を持っていて、自然放射線の1.5ミリより少し余裕があってゼロレベルから見ると1年2ミリぐらいまで大丈夫と思われます。そうすると自然被曝に加えて医療被曝で2.2ミリの被曝をしますと合計3.7ミリになって、少し危険な領域に入ります。それが、ランセット論文(世界でもっとも権威のある医学雑誌)では「日本人は医療被曝で欧米人の3倍の発がん」という結論にもつながっています。



つまり、いろいろなことを言う人がおられますが、子どもを守るという点では「原爆事故がなくても被曝は注意しなければならない」ということになります。それに加えて少し年齢の高い人は核実験の被曝を多く受けていますから、これが0.3ミリぐらいで、「被曝の3階の屋根まで」で4ミリになっています。福島原発事故は私たちに被曝に注意しなければならないという警告をしてくれたようなものです。



原発からの被曝が少し多い人は、1階から3階部分を減らすことで、たとえばカリウムを含む食品を控えるとか、医療被曝をできるだけ避けるなども有効です。ただカリウムは必要な元素ですから、あまり極端な食事も注意しましょう。


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先日、広島・長崎の被曝と病気についての最新の論文を紹介しましたが、1ミリシーベルト以下でも若干の発がんが見られています。その点では、「1年100ミリまで大丈夫」などという奇妙なへりくつには惑わされずに、被曝を避けるようにしなければならないでしょう。



第一回はこのぐらいにして、とにかく1年1ミリ(外部、内部の合計)を守るという決意をすることです。子どもは親を信じ、楽しく人生を送っています。もちろん人間には限界がありますから、「人知を尽くしても」わからないことがあり、それで子どもが病気になることも万が一にはあるでしょうが、その場合は「外出もさせられない(交通事故)、暖房器具も使えない(火事)」などとなります。あくまでも常識の範囲は親の責任ということです。



でもお母さんの責任だけで守ることは出来ません。政府は1年1ミリを守るようにし、農家は1キロ40ベクレル以上の食材は出荷せず、学校関係者は子どもをどこかに連れて行ったりするときには、一つのことを計算するのではなく、その子どもの総合的な被曝量を計算し、お母さんの負担を減らすようにしてください。

(平成24年5月13日)




--------ここから音声内容--------




えー、暫く旅行などが重なりましてですね、ちょっとあのメールのお答えが滞ってしまいました。それで、まぁあの、お母さん方からのご質問はやや似ているものもありますので、ここでですね、ええと今まで書いたからというんではなくてちょっと復習も兼ねましてですね、大体皆さんが繰り返しご質問になるものをですね中心に、連続的に少し書いていきたいかなと思います。





まぁ最初はもう基礎の基礎で、何回も書いていますのでちょっと復習になり過ぎるんですけど、ま、最初からスタートしたいと思います。えー、まぁ「原発推進派の方」もですね、「被曝を心配してる方」もちょっと両方とも錯覚してるとこありましてですね、ま、法律ではあの、「一般人で原発からの被曝っていうのは1年1ミリ(上限)」なんですね。これはあの、国際的にも、国内法にも決まっております。2回目のときにこの「1年1ミリでもいいか?」って話もちょっとしますけど、今日はこれ一応「1年1ミリ」ということで考えてください。





でまぁ、この値はですね、非常に精密に計算されているので、今の医学で必ずしもですね、これで健康だってことを断言はできないんですけど、ま、私たち専門家のですね、最も推薦できる値ということになりますね。まぁあの、「俺は1年100ミリまで大丈夫だ」って言ってる人いますけど、ま、その人はまぁその人で勝手にやってくださいっていう感じですね。





ええと、「お子さんを守るってことは、自分の体じゃありませんから」ね、やっぱり、その点は当然ですけども大切だと思います。それから中にはですね、あの“にわか勉強”をされて、これもいいんですけど。論文を一つか二つ読みますとね、やっぱり大丈夫だっていう論文もありますんで、それにあんまり左右されないようにした方が良いと思いますね。





ま、これはあの私よく言ってるように、「道路で制限速度が60キロと決まってるけども、急いで120キロで走ったけど事故は起こんなかった」と、だから人に向かってですね、「60キロだけど、120キロでも大丈夫だよ」っていうようなことをですね、公的に言ったり、ブログに書くのもちょっとマズいんじゃないかと思いますね。あの「早く・・・のろのろ走ったらストレスが溜まるから、そっちの方が健康に悪い」なんて言えないことはないですけども、まぁやっぱり法律をちゃんと守るってことが大切だろうと思いますね。





で、あのこういった規則はあの、事故後の改正でも改正されてないんですよ。例えば、去年の10月にはですね、事故後半年経って放射線障害防止規則が改定されましたけど、このときにも「1年1ミリ」とか「1平方メートル4万ベクレル」とかいう数値は変わっておりません。





ちょっと分かりにくいのが、『現在の政府がダブルスタンダードを使ってる』んですよね。えー「普通のものは法律通り」、「東電のものはその10倍」とか、ま、そんな感じなんですね。ですからまぁ、ちょっと分かりにくいということになります。例えば暫定基準なんか、その典型的なものですね。食品の暫定基準なんてあるはずないわけですね。だって人間の体の状態が変わらないわけですから、法律をものすごくいい加減に作ってんだったら別ですけども、法律に根拠があるんならですね、暫定基準なんていうのはあり得るはずないんですけど。ま、そういうのが出てきましたですね。





で、もう一つの、しかし重要なポイントはですね、『被曝は足し算です』ってこのブログでも何回も言ってるわけですね。「1階部分が自然被曝で1.5ミリ、2階部分が医療被曝で2.2ミリ、3階が核実験で0.3ミリ、そして原発(事故)がなければ1年4ミリなんですが、原発(事故)の1ミリが合算されて合計5ミリだ」と、こういうことになりますね。





ええと、今までの経験ですとね、ちょっと1.5ミリは人間は大丈夫だっていう感じなんですね、最初の自然放射線は。それに医療被曝を2.2足しちゃうと若干危険かなっていうんで、ま、ランセット論文・・・このランセットという雑誌は世界で最も権威のある医学雑誌なんですが、これで「日本人は医療被曝で欧米人の3倍だ」という結論もあるんです。これ、“結論もある”ってだけですね。だからまぁ、「やや危ないかな?とみなさんが思ってる」ってことですね。だから「原発事故がなければ4ミリシーベルトなんですが、原発事故があって子供たちが5ミリシーベルトになってる」つうのが現状なんですね。





そうしますとね、一つの方法としては、あの「1階から3階部分を減らす」ってことあるんですよ。例えば、「カリウムを含む食品を控える」とか、それから「飛行機にできるだけ乗らないようにする」とか、そいからまぁ、「あまり必要なければお医者さんに相談されて、医療被曝をできるだけ避ける」と、これをしますとね、1階から3階までの4ミリシーベルトが減りますから。





例えばですね、仮に言えばそんなには減らないですけど、それを3ミリシーベルトにすれば、1ミリシーベルト浴びても子供たちは原発の影響を全く受けないと、まぁ極端に言えばそうなるんですね、内部被曝なんか難しいんですが。ただ、カリウムは大切な元素なんで極端な食事をするのはまずいんですが、“あえてカリウムを摂る”っていうのはやめると、こんなことですね。血圧の関係の方とかも色んな方おられますので、よくよく考えられてやっていただきたいと思います。





で、広島・長崎の最新の論文をご紹介しましたが、ま、1ミリシーベルト以下でも若干の発ガンが見られますが、これあの自然放射線入ってませんから、ちょっとそういう表示が一つ一つ難しいんですけどね。ま、「(1年)100ミリ(まで大丈夫)」とかそういうことではないということですね。





ですからまぁ、わたしはですね、とにかく「1年1ミリを守るんだ!」というまず決意をするってことですね。ま、決意をすりゃ簡単です。ええまぁ、とにかく・・・あの人間はですね、「どうしようかなぁ、どうしようかなぁ・・・」と思ってると、非常にこう疲れちゃうんですね。





だけども、「もうこれでいく!」と、とにかく「一所懸命、子供たち被曝からやめさせる」と、ま、「できるだけ飛行機乗らない」 「あんまりホコリの激しいとこは行かない」 「太平洋側の魚は食べない」 「医療被曝もできるだけ避けて、まぁお医者さんに行かなくて済むように健康を保つ」と、こんな感じですね。





で、それでも少しは心配があって・・・これはあの第二回にやりますが、あの、やっぱり世の中ね、どうしても交通事故、火事なんつうのあってですね、「それを怖がって外出もしない」、「暖房器具も使えない」っていうのはダメなんです。やっぱりこれはですね、やっぱり常識の範囲なんですね。ま、難しいんですが常識の範囲なんですね。だけどこれはね、ちょっとお母さん方に(被曝から守るための判断/責任を)被せすぎてんですよ。





政府がやっぱり1年1ミリを守るっていう決意をして、僕は・・・農家の方ね・・・農家っていうのは、「人が安心して食べられるものを出すのが農家」で、僕は危険なものを出すのは農家と呼べないと思いますけどね。それから学校関係者もですね、あの1階、2階、3階、4階の全部を減らすというぐらいの気持ちでですね、「生徒さんをどっか連れてったって、(その時の被曝は)0.1ミリしかならないよ」つったって、0.1ミリやっぱ足されていくんですからね。





まぁお子さんの総合的な被曝量を計算して、できるだけお母さん方の負担を減らしてもらうようにしたいと思いますね。お母さん方「だけ」で子供を守るってやっぱ難しいんですよ、周りの人も協力してお母さん方の負担を減らすと、これも是非ですね、一つお願いをしたいと、まぁいう風に思います。


(文字起こし by danielle)