お医者さんの窓から見た社会・・・タバコを医師が禁止する理由 (5/6)
お医者さんの多くが「タバコはダメだ」と言います。ところがこのブログで示したようにタバコを吸う人が減ると肺がんが増える(年齢調整後も)という事実もあります。この2つの事実を無理なく説明することは出来るでしょうか?
というのはお医者さんとタバコのことを話してみると、決して利権とか名誉などではなく、真剣に患者さんの健康を心配されていることは明らかなのです。お医者さんと私はともに科学者同士ですから、タバコを禁止したいというお医者さんと膝をつき合わせてお話しすれば、かならず意見は合うと思っています。
科学は予見、先入観、感情、意見などを廃して、論理的客観的に事実を整理し、まとめるものです。だから、もしお医者さんと私の意見が違えば、それはデータか、データの整理か、あるいは私が先入観に邪魔されているかなのだからです。
そのような気持ちでお医者さんの読者の方から寄せられたメールをじっくり読んでみますと、今の私には「おそらくこうだろう」という一つの考えに到達しました。
それは、
1) お医者さんは患者さんを通じて社会を見ているし、タバコも評価している、
2) それに対して私は患者さんではなく、タバコを吸う人全体を見ている、
3) 私にはタバコを吸う人4000万人が見えて、その中にわずか4万人ほどの人が肺がんになっているのが見えない(私には1000人のうち、999人がよく見える)、
4) お医者さんは病院に来る患者さんを見ているので、999人はよく見えず、タバコを吸って肺がんになった人、お一人が目に入る、
5) 本来、お医者さんが言いたかったことは、タバコを吸い始める人のうち、将来、肺がんにかかる人に呼びかけたい。つまり、1000人の人がタバコを吸い始めたとき、もしお医者さんが神様で将来、ガンにかかって死ぬ人がわかれば、その人に注意すれば良いのだが、神様ではないのでわからないので、その他の999人にも呼びかける、
6) 私が「タバコを禁止するのは不当だ」と言っているのは、この999人に対してである。この人たちはタバコを吸っても肺がんにならないのだから、楽しみを奪ってはいけないと私は言う、
ということらしいのです。
これが副流煙になるとさらに極端で、平山論文の例では、夫がタバコを吸う530人のうち、妻が肺がんにかかったのは1人だから、それ以外の529人には「夫婦げんかをしてまで、夫にタバコを止めさせることはありません」と言うべきでしょう(先回の計算でミスがあり、本文も修正しました)。
ただ、タバコは自由意思で吸うものですから、タバコを吸って税金を払い、1000人とか500人に1人がガンになっても、その情報が正しく伝わっていたらあとは本人に任せれば良いのではないかと思うけれど、副流煙は自分の意思ではないから、どのぐらいの危険なら社会的に禁止すべきか、まだ議論は不十分と思います。
さらに、タバコの煙に特に敏感な人、気管関係の弱い人などについての特別な配慮も必要です。
・・・・・・・・・
私はお医者さんが患者さんを通してだけ社会を見るだけではなく、タバコを吸っていて健康な人をご診察されるのが良いと思うけれど、それには時間が無いと思います。逆に私はタバコを吸う人全体を見て、患者さんを見ていません。だから違う感想になるのは当然のように思います。
でも、いずれにしても「喫煙と肺がん」について、それを理由にタバコの追放運動をするのは行きすぎで、自治体はもちろん、お医者さんも含めて、もう一度、人の基本的人権と人間の一生の意味がただ「体だけが健康なら良い」と言うことなのかについて、かなり低い肺がんの確率を考えて、禁煙についての言動の修正することが良いと思います。今の日本の禁煙運動は「良心的」とは言えない状態です。
(注)私が言う「ためにする」行為はこれまでの私の論理に入っていない。たとえば、
1)妻がタバコ賃がもったいないので夫に健康を理由に吸うなという、
2)知事が自分の票を取りたいので禁煙運動を進める、
3)厚労省の調査担当者が出世するために調査を行う、
4)タバコは肺がんは少なくても、歯の病気、気管支系の病気、血管系などあらゆる病気の元になるので、肺がんではなくても肺がんと言えば良いという医師の論理、
などはこの論議には入っていない。あくまでも一つ一つを誠実に考えなければ、日本の再生は無理と思うからです。
(平成24年5月6日)
--------ここから音声内容--------
えー、タバコの研究もですね、だいぶ、あの、最終段階に接近して来ました。えー、私自身は少しずつタバコというものがどういうものか、タバコと健康というのはどういうものか…まだタバコと人生、っていう所を今、調べているわけですが、次第に明らかになってきたような気がします。
今まで私の目の前にですね、何だか分からなかった…えー、「タバコを吸うと肺癌になるって言うけど、タバコを吸う人が減ると肺癌が増える。理屈が無いわけじゃないけど、どうもおかしい」と。まあ、しかし、それは別に私には利害関係はありませんから、本当にどうなんだろうかという事に興味を持ってきた訳でありますが、まあそれからお医者さんとも随分お話をしました。この間、メールも随分いただきまして、参考になりました。
えー、まあそれを通じて、私はですね、お医者さんはやっぱり偉い、と。えーまあ、タバコという事に関して私とかなり考えが違う人が多いんですけども、しかしお互いに科学者で、きちっと話をすればですね、「ああ、なるほど、合理的な結論に達するな」っていう確信は、かなり途中から得られました。
つまりですね、科学っていうのは予見だとか、先入観、感情、意見って入らないんですね。だから先入観も入らない、感情も入らない、意見も入らないんですから、まあ、データをよく見てお互いに話したらですね、まあ、最終的に意見が一致するかどうか別にしまして、いずれにしてもお互いにはちゃんと理解できるわけですから、これが科学の良い所ですね。喧嘩に絶対なりませんので。「そんなのケシカラナイ」なんて話はですね、最初から出てくるはずが無いわけですね。まあ、人間大体考える事、同じですから、ちゃんと話せば、「ああそうか」って事になるんですね。立場で損得がある時は別ですけどね。
私は今の所、こんな感じなんですね。お医者さんは患者さんを通じて社会を見てるんですね。まあ、例えば4000万人の内の4万人、まあこれ、1990年ぐらいを基準にすると2万人ぐらいになるし、現在ですと6万人ぐらいになるんで、まあその途中を取って4万人ぐらいの人を通じて見ておられます。
まあ、1000人に1人ぐらいの人を見てますね、お医者さんは。私はですね、どちらかと言うと、見るのを入る時にですね、4000万人の方を先に見たんですよ。で、これはもう、見た人が違うっていう事ですね。お医者さんは当然、タバコを吸って健康を害した人が病院に来ますから。タバコを吸って元気な人が病院に行ってくれると良いんですけどね、行ってもね、お医者さんが診察してくれませんよ。
『あなたどこが悪いんですか?』
『いやもう、元気でピンピンしてます』と。
『じゃあ、何で来られたんですか?』
『いやまあ、元気なんだけどタバコ吸ってるもんで』って言うと、
『いやまあ、タバコはあんまり良くないですけど、まあお元気なら、ちょっと忙しいから、今。患者さんも待っておられるから、どうぞ帰って下さい』
って言われちゃいますからね。診察されないんですよ。
私はお医者さんじゃないんで、4000万人の方を見ましたね。そうするとどうも1000人の内、4000万人で4万人が肺癌ですから、1000人のうち999人はどうも肺癌じゃないじゃないかって、そっちの方が見えちゃった訳ですね。で、まあこれはですね、こういう事ってよくあるんです。だけどそれはまたそれで、えっと、良いって言えば良いんですよ。統計的に物を見るっていう場合と、個別の事例を見るっていう場合があるんですね。これを悪用しようとするといけないっていうだけですね。
あの、まあ、北極の氷がその良い例なんですけども、温暖化した北極の氷が溶けるっていう映像を カメラマンが撮るっていうのは簡単なんですよ。北極でも一部は氷が溶けてますから、それを撮れば良い。そうすると北極では氷が溶けてるって結論になる。
ところが、私のように、あの、北極に行かずに…サボってて行かずにですね、人工衛星のデータを まあ、これ毎日見(ら)れますから、毎日見てるんです。そうすると「氷、変わってないじゃないか」と。こういう事になるんですね。こういったものとやや似てます。お医者さんの方は、やや真面目ですね、ええ。本来お医者さんがね、タバコを吸わないようにと呼びかけておられますが、それはですね、将来肺癌になる人に、本当は呼びかけたいんですよ。1000人の人がタバコを吸って、その内、肺癌になるのは1人ですから、その1人を見つけてですね、『あなたはタバコ吸っちゃいけませんよ』って言わなきゃいけないんですけど、それは神様じゃないから分からないんです。
ところが私が言ってるのはですね、『残りの999人に対して、何で呼びかけるんですか?』と、こう言ってる訳ですね。これ肺癌に関してですよ。他の病気はあるんです。これはちょっと後で、あの、話しますが。肺癌に関してだけですね。じゃあその人は肺癌にならずに楽しんで生活送ってるんですから、『何で楽しみを奪うんですか?』と、こういう風になるんですね。
勿論、副流煙は全然別です。これは、あの、ちょっとこの前計算、私、間違っててちょっとだけ数字違ってたんですけど、まあ、読者の方から指摘受けまして、530人の内、1人って感じですね。まあこれはこれで良いとしましてですね。ええまあ、その、副流煙を気にすべきかっていうのはそういう、この健康上のこと、特に肺癌のことでは言えるのかな?っていう気がいたします。
ええ私はですね、この喫煙と肺癌については特に全体的には行き過ぎだったと思います。お医者さんは良いんですが…お医者さんは特に保護しようというんじゃないんですよ? お医者さんは患者さん診てる訳ですから。現に目の前にいる患者さん、呼吸器がですね、タバコによって侵されてる訳ですからね、これはやっぱりそりゃ、『良くないですね』って当然なんですよ。
タバコの追放運動した人はどこを見てるんだろうか、っていう気がしますね。それからあの、タバコっていうのは何のために吸うのかっていうとですね、若干身体に悪いっていう事は誰でも知ってるんですよ、普通の人だったら。だけども気分が晴れるとか、そういう事ですからね。それを禁止するっていうのはですね、ちょっと問題かなって思います。
まあ、今回ですね、なかなか面白いことが分かりました。つまりですね、お医者さんが「タバコ吸っちゃいけない」って言うのは、タバコ吸って健康を害する人が「この人だ」って事が分かれば非常に的確ですけれども、分からないって事ですね。将来その人がタバコを吸って一生、幸福に過ごすかも知れないし、病気になるかも知れない。その比率がどのぐらいか、少なくとも肺癌については、1000人に1人だから、1000人全部に呼びかけるのはちょっと行き過ぎかなっていうのが私の感じですね。
『あなた方の1000人の内1人だけ肺癌になります。その1人がよく分かりません。だけどもまあ、一応、私としては医師として注意しときます。』こりゃまあ、正しいですね、完璧に正しいですね。私は逆にこう言いますね。『えー、この1000人の皆さんの中に1人だけ肺癌になります。それが非常に怖いんであればタバコをやめることです。だけどもあとの999人はなりませんから、もし楽しいんだったら、まあ、そういう事を分かってお吸いになっても結構ですよ』、と。まあ、私はお医者さんじゃないから、そう言うかも知れませんね。まあ、そういう事です。
一応かなりハッキリしてきたので、非常にスッキリとして来ましたね。ええ、しかし、もう一つですね、私はですね、この話の中で変なメールが一杯来たんです。それはですね、あの、副流煙の事に対して一般的に妻が夫にですね、「タバコを吸うと私が肺癌になるからって言うのは嘘で、タバコ賃が勿体無いから、夫の健康を理由に言ってるんだ」っていうのがありましてね。「そんな事も分かんないの?」なんて言われて。それはね、私は考えに入れてないんですよ。勿論、私も人間ですから分かるんですけど、それを言ってるともう、混乱しちゃってですね、どうにもならないですね。
「知事は自分の票を獲りたいからだ」、まあこういって言ってるんですけど、これもまあ、ハズレ。それから、「厚生省の調査担当者が出世するために調査してるんだから良いじゃないか」っていう。それもやっぱりちょっとマズイですね。勿論こういうヤツで一番まともなのがお医者さんからのもので、「肺癌は少ないかも知れないけれど、歯の病気にもなる、気管支の病気にもなる、血管系(の病気)などある、もうタバコはですね、あらゆる病気の元になるんだ」と。まあ、いう事がある訳です。
これはですね、実はタバコを吸ったら肺癌になるって話が来た時にお医者さんは絶対『そうじゃない』って言わなければなりませんね。これはまあ、職業倫理として重要なんですよ。『いや、喫煙しても肺癌は少ないんですよ、問題なのはもっと別の病気なんです。全体的に身体は傷むので、私たち医師は、タバコを吸うことをお勧め出来ません』と。これはね、キチンと言わなければ。
つまり専門家というのはですね、これ、「まあいいや、言わせとけばいいや」ってのは駄目なんですよ。これがやっぱり、あの、原発の事故なんかもそうなんですよ。私、そばに居てですね、「まあ、これでいいんじゃないか、安全と言ってるからいいじゃないか。津波・地震に耐震指針と言ってるんだから、津波のことは知らなくて良いよ」とか、そういう事がですね、専門家の方で、これはまあ原子力の専門家の方で適当に使いましたね。
って言うのは、原子力の専門家はですね、そこをよく分かってるんですけど、聞いた方は聞いたまま、なんですよ。私、メールでですね、『武田は喫煙と肺癌の事ばっかり言ってるけど、実は他の病気が問題なんだ』と(いう内容のものを受け取った)。それだったらですね、あの、『肺癌になるからタバコをやめましょう』と言っちゃいけないんですね。それはやっぱり。いけないんです。何故かっていうと、間違いますからね。
人間はそれほど頭の良い存在じゃなくて、人の言ったことをそのまま信じて良いんですよ、ええ。そりゃもう、今、民主党が非常に文句言われてますけど、その通りなんですよね。高速道路無料化するなら無料化する、増税しないなら増税しない、と言った事を相手が信じて良いっていうんじゃなくちゃ駄目なんですよ。「言ってる事の裏を必ず読まなきゃ駄目だ」なんて、そんなのね、複雑過ぎますね。
まあ一応、そこの所まで来ました。相当ハッキリしたと思います。お医者さんから見たらタバコはいけない。だけど1000人に1人、誰が病気になるかお医者さんとしては分からない。だから全体に呼びかけてしまう。それがちょっと肺癌に関しては行き過ぎだったんではないか、と。そういう風に私は思います。
それに厚生省の調査がですね、かなり意図的であって、データを出さない。タバコを吸うと、もう全体的に駄目になる、最初肺癌だと言ってて、少しずつ少しずつそれを変えていくという、官僚独特のですね、まあ、騙し手法をやった。これがですね、非常に混乱を招いたと思います。
(文字起こし by まあ)