子どもに贈る日本(1) 核廃棄物満載の国土 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

子どもに贈る日本(1) 核廃棄物満載の国土 (5/14)




日本で最初の原発が動いたのは1963年だからもうすでに50年になろうとしています。その後、今日の54基になるまで原発は徐々にその数を増やしてきました。原発を動かせば、次の3つのことが起こります。


1) 原発が爆発して被曝する危険、 2)電気を使えるメリット、 3)核廃棄物がでる。


仮に安全な原発があれば、これは二つになり、「電気は増えるが、核廃棄物がでる」ということになります。電気が増えるのは良いことですが、それに伴う核廃棄物は困りものだと多くの人がおもっています。



アパートを経営しようという人がアパートを建てて入居人を募集したとします。「家賃は月6万円。但しトイレは使わないでください」(お金は欲しいが、汚いものの始末はイヤ)という募集では入居人はいないでしょう。そして「欲しいものだけ欲しい」というのはいかにも子どもです。



でも、先日、私は経団連の会長が「電気がいるから原発の再稼働をして欲しい」と言っているのを聞いて「子ども?!」と疑いました。すでに原発を運転し始めてから40年ほど経ったし、今度の福島の事故は原発を進める上で、安全を軽視し、廃棄物は知らないというような中途半端な管理体制が起こしたものでもあります。



すでに日本では120万本を超える使用済み核廃棄物があります。それが発電所に半分、その他のところにもほぼ「無防備な状態」で放置されています。「どうするの?」と大人に聞くと「核廃棄物は危ないから子どもに任せる。俺たちは電気だけ欲しい」といいます。それは政府、経団連だけではなく日本の大人のほぼ全員なのです。


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原発を再開する人は、経団連も含め「電気の分だけ廃棄物を自分の町に引き取る」というのを条件にすること、これまでためてきた120万本を私たちの世代で処理すること、の2つを実施し、子どもたちに「核廃棄物がない日本」を引き継ぎたいと思います。今は「電気が欲しいから、核廃棄物は子どもたちに」という考えですが、私は同意できません。

(平成24年5月14日)




--------ここから音声内容--------




もう既にあの、日本の原発が最初に動いたのは1963年ですから、これはもう50年ぐらい経つんですが。その後、徐々に増やしまして現在では54基になって、原発が停止するまで電力の30%を原発でやってたわけですね。原発を動かせば、三つの事が起こることは誰でも知ってるわけです。





まず、「原発が爆発して被曝する危険がある」ということ、二つ目は「電気を貰えるというメリット」ですね、それから「運転すれば必ず核廃棄物が出る」ということですね。で、まぁ安全な原発をもし造ることができれば、これは二つになりまして、「電気が増えるけども、核廃棄物が出る」ということになりますね。





現在、原発が危険か安全かっていう議論に集中しとりますが、私はですね、『電気は貰えるけれども、核廃棄物が出る』ということを、もう少し真剣に考えてみる必要があると思います。





例えばですね、アパートを経営しようっていう人が、アパートを建てて入居人を募集するときですね、「家賃は月6万円下さい」と、「ただし、トイレは使わないで下さい」、そういう“お金は欲しいけども、汚いものは嫌ですよ”という募集をしたら、多分入居人はいないですね。そしてまた、家主はバカにされますよ、「あれ、子供じゃないのか?」と、「家賃だけ欲しいけど、トイレは使っちゃいけないって・・・」っていう風に、まぁみなさんも陰口を叩くでしょうね。





だけど、それと同じことが白昼堂々・・・この前テレビ見てますと経団連の会長がですね、「経済界は電気が要るから原発を再稼動して欲しい」って言ってるの聞いて、ビックリしましたね。何しろ、原発を運転し始めてから40年経って、今度の福島の事故は安全を軽視した事もありますが、「廃棄物は知らないよ」つったですね、今の私たちの中途半端な無責任な考えが起こした事でもあるんですね。





やっぱり経団連はですね、電気が要るんなら廃棄物を引き取らなきゃいけませんよ。「電気だけ要るけど廃棄物は誰かに押し付けるから、再稼動してくれ!」って、それはいくらなんでも子供ですね。




まぁ既に日本では、120万本超える使用済み核燃料廃棄物があるんですよ。ちょうど半分ぐらいが発電所にそのまま貯まっておりましてですね、その他も、もちろん無防備な状態で放置されてるんです。核廃棄物の貯蔵所って無いんですからね、無いっていうことは、いやもう、「地下300メートルとか厳重に管理しなきゃいけない」なんて言ってるんですけど、今、“野積み(のづみ)”ですからね、ほぼ。仮置きですから。酷いもんですねぇ・・・これはまぁ、政府、経団連ばかりでなくて日本人全体(が取るべき責任)じゃないかと思いますね。





私はですね、原発を再開する時に原発の安全性ばかりでなくて、経団連も含めてですね、「電気を貰う分だけ廃棄物を自分の町に引き取る」っていうの、条件にしなきゃいけないと思うんですよ。これはね、世界でも日本だけなんですよ、「原発だけを動かして、廃棄物(処理)やんない」っていうのは。まぁフランスなんか一時、日本の物も引き取ってくれてましたね。





もちろん原発をやれば、廃棄物出るの決まってるわけですから、それをずーっと貯めながらやる、と。それで、「じゃ、これどうすんの?」って聞いたらですね大人に、「いや、もう核廃棄物は危ないから、子供に任せるよ」と、「俺たちは電気だけ欲しいんだ」と、「俺たちが死んだ後、子供がね、核廃棄物を処理してくれ」とまぁ、こうですからね。これじゃやっぱダメだと思います。





私は『子供たちに、核廃棄物が無い日本を引き継がなきゃいけない』と思います。今、「電気が欲しいから、核廃棄物は子供たちに任せる」という考え方は、私は同意できません。これはですね、私たちの責任で処理をして、子供たちがこの日本を引き継ぐ時には、ま、原発を子供たちがやっても良いですけども、それまでには我々が使った電気の分だけの廃棄物は、もう処理をしとかないと、これはやっぱまずいと思いますね。





えー、だから原発の再開条件は今、原発の安全性だけになってますが、私は「核廃棄物を引き取らない人は原発の電気は渡さない」という極めて簡単な原理を、この際貫いた方が良いと思います。


(文字起こし by danielle)