日本の発展を妨げているもの・・・東京の食糧自給率1%、工業衰退、平均給与ダントツ?(5/6)
アメリカが1970年代に衰退したことについて、今から30年ほど前に詳しい経済学の解説書を読んだことがあります。いろいろな数字でしっかり整理した本でしたが、結論は「現場にいないニューヨークやワシントンの連中がアメリカをダメにした」というものでした。
人間の頭脳というのは実にダメなもので、頭脳が間違った判断をしようとするのを止めるのは、「現場」と「辛さ」の2つのように思います。現場はいやでも事実を目の前に突きつけますし、辛さは傲慢になった自分の心を直し、事実を見ることができる勇気を与えてくれます。
アメリカは、その後、シリコンバレーなどを中心とした情報産業で最後の火をともすのですが、現場にいない人の支配は変わらず、現在は衰退の一途をたどっています。国が発展するときには、「現場が活躍し、失敗を飲み込み、根菜類を食べる」のが特徴で、現場から離れ、失敗を塗布し、くさい野菜は食べないようになったら、その国は衰退し始めます。あのローマもそうでした。それが栄枯盛衰であり、諸行無常でもあるのです。
人間、特に頭で考える人間が「良い」と思うことは、個別には確かに良いこともあるのですが、全体を見ると悪い方向になることはしばしばあって、このようなことは哲学や物理学では普通のことですが、経済学でも「合成の誤謬」と言っていますし、お釈迦様も中庸と教えておられます。
イエス様が「貧乏な方が天国に近い」と言われたのも同じで、人生の真実を見ることが難しいように人間社会で「お金があると不幸になる」と思っている人はそれほど多くはないでしょう。普通はお金があった方が幸福になると信じて不幸になっているように思います。
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明治維新(もしくは開国)以来、50年間、日本は日露戦争に勝ってしばらく、現場が活躍し根菜類を食べたのですが、それからの35年、軍では中枢部が指導するようになり、だんだん非現実的になって戦争に負けました。戦後も、最初のうちは松下幸之助、本田宗一郎というような現場型の人が産業を指導していましたが、やがて40年から50年を経てバブルが崩壊すると、頭だけで考えた東京型思考が日本を衰退させていきます。
たとえば、積み立てても意味が無いことが最初からわかっていた年金を始めたり、空気も水も綺麗で環境が悪くないのに頭だけで環境が大切だと言ってみたりということが起こり始めるのです。そして、今では地方の現場の工場が軽視され、本社の部隊が幅をきかせるのと同じように、東京でビルの中で仕事をしている人たちが実権を握るようになりました。
なんと言っても東京の食糧自給率は1%、工業もほとんど無くなりました。それでいて東京は地方の2倍近い所得をとっています。実に不思議です。たとえば税金というのはもともと働いている人の生活を豊かにするために税金を払っているのですが、「税金を払っている人が苦労し、税金をもらう人が楽をする」という奇妙な社会になってしまったのです。
「国民は増税反対だが、財務省が増税を進めている」という話は、それ自体が「税金」というものの論理に反するものです。国民が税金を納めるのは「喜んで納める」からであり、「いやいや納めるなら税金ではなく、お殿様の徴収金みたいなもの」だからです。
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東京の電気を原発でつくり、東京は使うだけ、地方は危険な原発を動かし、廃棄物を処理するというシステムは、まさに今の増税路線とおなじく、本来は地方の召使い、国民の公僕だったはずの人たちが力をつけていつの間にか主人になってしまったことを意味しています。
今回の震災の瓦礫の問題も「中央が決めたことだから、地方が汚染されようがやれ」という感じですが、なんでも東京をみてそのご機嫌を取っている地方自治体の首長さんは少しプライドをもって考えなければならないでしょう。
もともと、東京はなにもできません。食べ物もつくれず、GDPにも貢献できないのです。それにも関わらず、地方は自らの努力を怠り、中央の補助金、交付金、工場誘致など「東京頼み」だけの政策を採っているように見えます。
私は良く地方に行きますが、地方の回復は1にも2にも東京からの脱離にあるとおもいます。それには、1)明治の初めのように東京の人が東京の利権を考えるのではなく、地方の力を増やして日本全体が栄えるように我が身を捨てる(万機公論に決すべし・・明治天皇の五箇条のご誓文)、2)地方の人が外国と直接渡り合えるように自分で考え、努力する、の2つが必要なように思います。
最終的には現場にいる地方が力を持たないと日本は衰退していくでしょうし、それに東京が我が身を捨てて協力することこそ日本人なのでしょう。「失敗を認めない」、「うまく言い抜ける」などは現場には関係がありません。言葉だけを使って人生を送っている人だけの特殊な文化、それが今の東京の幻想なのです。
原発の爆発すら認められない、事実を認めることはできない・・・そんな文化が技術者の方まで波及しているのですから、かなり重傷でしょう。なんとかこれを覆して明るい日本を作りたいものです。
(平成24年5月6日)
--------ここから音声内容--------
えー、よく私は地方に行くんですけども、地方に行きますと、日本の発展を妨げているものが何かってのがよく見えるような気がします。アメリカがですね1970年代に衰退したことにつきまして、今から30年ほど前にですね、非常に詳しい経済学の本が出まして、それを面白く読んだことがあります。まぁあの経済学ですから、非常に細かいことを色々整理してるんですが、結果としてはですね、(アメリカが衰退したのは)現場にいない…現場を知らないニューヨークやワシントンの連中がアメリカの政策を切ったからだ、ということですね。
その後ですね、アメリカはシリコンバレーなどを中心とした情報産業でですね、一応ちょっと回復しますが、やはりそれも短期間に過ぎずですね、今衰退の一途をたどっておりますが、やっぱり国が発展するっていうのは現場主義ですね。現場主義っていうのは、「根菜類を食べる」とよく言われるんですが、ニンニクとからっきょみたいに臭いものを食べるわけですが、栄養つけて元気で現場で働く、と。ここから正しい…まぁなんて言いますか、健康な考え方が出てくるんですね。
ローマもそうで、最初のころは土の匂いのする軍隊だったんですが、そのうちですね、鉛の容器にワインを入れて飲むというようなことがはやりまして、結局衰退していきます。まぁ、栄枯盛衰、諸行無常でしょうね。
ま、そういうことですが、明治維新以来ですね、もう50年間たちました。その間日本は日露戦争に勝ったり色々してですね、現場が活躍した時代でした。しかしそれから35年、戦争に負けるまで、軍の中枢部…まぁぜんぜん現場とは関係ないところでやって戦争に負けますね。
戦後もやはり松下幸之助、本田宗一郎というような現場型の人が産業を指導して繁栄しましたが、やがてバブルが崩壊しますと、頭だけの世界に入っていきまして日本は衰退します。ま、年金なんかその一つの例ですね。どうせ積み立てていったらインフレでなくなる、と。物価水準が変わるからダメになる、と。そん時賦課型にすりゃいいや、と。そのうちには消費税取りゃいいや、つってですね、もう最初から捨ててかかってるわけですね。それは自分が働いて年金を納めてる人が考えるんじゃないからなんですね。
環境問題もっとひどいんですよ。なにしろ空気も水もきれいで日本中どこを見渡しても環境はいいのに、「環境問題が大変だ、環境が大変だ」って言うわけですからね。まったく現場感覚と違うっていうことですね。ま、これはやっぱり会社でもですね、本社がよく幅を利かせるんですよ、重役の横にくっついてますからね。地方はですね、工場でどんなに深夜まで一生懸命働いてもなかなか報われないんですが、それと同じことになってるわけです。
なんつったって東京は食糧自給率1%、工業ほとんどないっちゅうわけですから。それで所得はですね、地方の2倍近いわけですよ。実に不思議ですよね。食べ物も作らない、工業製品も作らないのに2倍近い所得って、いったい何してるの? っていうわけですね。
これはあの、税金と似てるんですね。税金ってのはもともと税金を払う人っていうんですけど、払う人だけしか日本にはいないんですよ、ほんとは。だけど、そのうちだんだんですね、変なことになりまして、今みたいに税金払ってる人が苦労し、税金もらう人が楽をする。つまり税金を払う民間の人が苦労してですね、一生懸命会社合理化してんだけども、市役所の方はもう…相変わらずのんびりした仕事やってるっていう奇妙な社会になっちゃったわけですね。
えー国民は増税反対だけど、財務省が増税を進めてるっていう、この話はよく言われるんですけど、このこと自体がもう論理成り立ってませんよ。国民が税金を納めるのは「自分たちのために喜んで納めるから」ですから。嫌々納めるのは税金じゃないですね。お殿様の徴収税みたいなもんですから…徴収金ですからね。
それがだんだんだんだん税金とかそういうもの以外にも及んでくるわけですよ。東京は「電気は使う」んです。だけど「使うだけ」。地方に危険な原発を置いて、廃棄物処理するのも地方、と。本来は地方の召使いが東京であり、官僚は国民の公僕だったはずですけど、これが逆になっちゃって、東京の官僚が主人になるって…変なことになってるわけですね。
ま、今度の瓦礫問題もそうですよ。「中央が決めたんだから、地方が汚染されようがなんだ(ろうが)やれ」っていうわけですね。それで東京の様子を見て、これ、ご機嫌を取りたいっていう地方自治体の首長さんが、自分の地域を汚すっちゅうわけですから、汚染するっつぅんですからね。もう少しプライド持ってほしいですね。
実は東京ってのは何もできないんですよ。食べ物も作れないしGDPも寄与してないんですね。これを言うと経済学の人が「いや、ソフトこそ重要なんだ」なんて言いますけども、それはハードあってのこと、地方あってのことですね。
だけどどうしても地方から見れば…地方に厳しく言えばですね、やっぱり地方も自らの努力を怠り、中央の補助金とか交付金とか工場誘致とかいう、いわゆる「東京頼み」なんですね。だからこの日本の悪い…「東京だけしか使わない」という、そういう悪い日本の国土と国民の無駄遣いっていいますかね、ま、そんな感じになってるわけですが。
それはまず一つはですね、東京の人が東京の利権を考えないっていうことなんですよ。明治天皇の「五箇条のご誓文」にあります、「万機公論に決すべし」。日本の全体が栄えるように我が身を捨てるという…これ明治時代ちゃんとやったんですね、それを。それをもう一回やるってことですね。それから地方の人も今度は政府じゃなくて外国と直接渡り合えるように自分で考え努力するという二つがいるんじゃないかと思います。
いずれにしてもですね、現場から離れた国っていうのは衰退していきますね。これは1970年代のアメリカであり現在の日本であります。したがって現場主義であり、かつ根菜類を食べるという…この二つのですね、野暮ったい民族、これが発展するんだ、と…まぁいうことを我々がもう一回考えなきゃいけないし、食糧自給率1%で工業がないという…「何をやってんての? あなたたち」という東京がですね、所得の2倍を取るというような世界。これいったいどういうことなのか、つまり働いてる人の上前をはねてるってことは明らかですからね。
これをやっぱり我々が考えて、まあ、国づくりといいますかね、日本国の根幹を作っていかなきゃいけない、と…私はそういうふうに思っております。