被爆と健康:決定版!!・・・広島・長崎の被爆論文がでました (4/28)
日本人が「大規模」に被爆し、その健康に関するデータが「長期間」にわたって得られるのは、不幸なことですが広島・長崎のものです。そして、その総合論文が今年(2012年)、放射線影響研究所からでました。被爆と健康に関する研究ではもっとも権威のある機関でもあります。
福島原発で多くの人が被爆している最中ですから、本来ならこの論文は毎日のようにテレビ、新聞で報道され、解説されているはずですが、論文内容が「政府に都合が悪い」ということで、ほとんど報道されていません。
なぜ、この論文が政府に都合が悪いかというと、
1) 「これ以下なら安全」という「閾値(しきいち)」がないことを明確に示していること、
2) 低線量被爆でも「被曝量と病気の発生」には比例関係が認められること(直線近似が成立すること)
3) 福島の小学生が被爆した、20ミリシーベルトで子供がガンになる可能性は100人に2人程度と高率になること、
が明らかになったからです。現時点で専門家でこの論文の結論と異なることをいうことはできないでしょう。科学者や医師は事実に忠実ですから。
もともと、日本の法律で「被曝限度は1年1ミリ」と決まっていたり、チェルノブイリの時に1年5ミリ以上の地域が強制退去地域になっているのは、断片的ですが、この論文と同じ知見がかなり多かったことによります。もちろん「1年100ミリ以下はデータがない」などは完全なウソです。子供の健康のことですから、これまで間違っていた専門家はすぐにでもこの論文を読んで、訂正と謝罪をしてください。
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論文内容は少し専門的になりますが、ご紹介します。
学術雑誌名:Radiation Research(英文)
論文題目:「原爆被爆者の死亡率に関する研究、第14 報、1950-2003、がんおよび非がん疾患の概要」
概要: 1950 年から2003 年まで約10万人の健康状態を調査し、死因についての被爆の影響を明らかにした。がんによる死亡(総固形がん)の過剰相対リスクは被曝放射線量に対して「全線量域で直線の線量反応関係」を示し、「閾値は認められず」、リスクが有意となる最低線量域は0-200ミリシーベルトであった。
具体的には、30 歳で1シーベルト被曝して70 歳になった時のがんの死亡は、被曝していない場合に比べて42%増加し、また、被爆の時の年齢が10 歳若くなると29%増加した。従って、20歳で被爆すると83%の増加になり、ほぼ2倍になる。がん以外の疾患では、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患でのリスクが増加した。
解説: 個人が被爆した量と死因別の放射線リスクを総合的に解析した初めての報告である。対象は、被爆者で個人線量が推定される86,611 人、調査期間中に50,620 人(58%)が死亡し、そのうち総固形がん死亡は10,929 人であった。低線量率で若干の緩和がみられるが、直線関係を否定するものではない。
この論文で言う「過剰相対リスク」とは、相対リスク(被曝していない場合に比べて、被曝している場合のリスクが何倍になっているかを表す)から1 を差し引いた数値で、被曝による相対的なリスクの増加分を表している。
(注)放射線影響研究所は、広島・長崎の原爆被爆者を 60 年以上にわたり調査してきた。その研究成果は、国連原子放射線影響科学委員会(UNSCEAR)の放射線リスク評価や国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護基準に関する勧告の主要な科学的根拠とされている。
Radiation Research 誌は、米国放射線影響学会の公式月刊学術誌であり、物理学、化学、生物学、および医学の領域における放射線影響および関連する課題の原著および総説を掲載している。
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政府機関、自治体、御用学者、ご用専門家、テレビ、新聞はあまりあてになりませんが、国民の健康を守り、子供を守るという見地から、大学、医師会などに所属する良心的な方は、積極的にこの論文の結果(おそらくもっとも総合的で、現時点で正確なデータと考えられます)を尊重し、政府に対して被曝の防止(福島の除染、拡散防止、汚染食材や瓦礫の搬出防止など)をするように力を発揮してください。
またテレビ、新聞もうっかり政府の誘導に乗った1年でしたが、本来の報道の目的である、「やや政府に批判的で、事実を伝え、視聴者や読者を危険から守る」ということに戻り、この論文を多くの人が知るようにしてください。
その時、論文を書いた研究者ではなく(研究者は社会に対して倫理的責任を負わない)、科学者、啓蒙家が解説をするのが適切です。
(平成24年4月28日)
(注)本記事の内容の一部は読者からの情報によっています。
--------ここから音声内容--------
えー放射線と被爆という問題を考えるときですね、残念ながら私たちが一番多く、またデータが得られるのは広島・長崎なわけですね。非常に大勢の日本人の方が被爆し、また50年以上経ってるということで、科学的には、まぁそういうデータを、ま、きちっと見るということがですね、ま、大切なわけですね。
ええっと、あのこういった科学的なものは、「自分がそう思う」という想像でですね、「被曝が安全だ」とか、「危険だ」とか、そういう風に言っちゃいけないわけで。常に科学的な根拠、もしくは法律的な決まり、そういったものでですね、我々は日常の生活を守らんといかん。
特に、他人ですね。私がちょっと、この被曝について心配してんのは、例えば子供たち、子供たちの発言権無い・・・ほとんど発言しないわけですね、子供たちの健康に最も関係のある被曝と健康という問題にですね、50歳以上ぐらいの男性がですね、非常に強く発言する、と。これは他人の健康についてですから、相当、慎重側に発言しなきゃいけないと私は思っております。ま、色々考え方ありますが。
えー、この論文はですね…ご紹介する論文は、この前ちょっとだけご紹介しましたが、放射線被曝について、「これ以下なら安全である」という閾値(しきいち)、ま、これがあるとかですね、言ってる人が多いんですが、これは「(閾値は)無い」と言うことを明確に示しているっていうことですね。
そいから「低線量率でも被曝と病気の関係は比例する」んだと、例えば1ミリシーベルト浴びた人と10ミリシーベルト浴びた人では、10ミリの方が10倍になるんだと、ま、いうことを示しております。だから例えば、福島の小学生が被曝した20ミリシーベルト、これをこのデータに当てはめますと、100人に2人・・・その、50人に1人、ま、一クラスに一人ぐらいのですね、ガンが子供になるということで、ま、とても可哀想ですね。私あの、「大丈夫だ」と言ってる人とか教育関係者でですね、未だにあのー、ホットスポットって言いますか、放射線の高いところに子供たちを連れて行こうという考えを持ってる人がいるんですが、到底考えられません。
というのはですね、えーこの子供たちが将来ガンになるっていうのは、『将来』なわけですね。本当にその人たちが、心の奥底からそういう風に思ってるのかと、ま、いうことが疑問ですね。えーま、そういうことで、このデータをきちっと見てみようというふうに思います。少し難しいので、音声の方で解説をいたしますと。
ま、これはあの、論文を書いた方とまとめた方はですね、「放射線影響研究所」っていう、これはまぁ、元々はアメリカ軍が原爆の影響を観測する、そのために作ったものを日本が引き継いだというものですね。非常に歴史が深い、非常に客観的だと思われてる研究所で、そこから第14報、えー、1950年から2003年に渡る研究をまとめたものであります。
それでガンと、それからガン以外の疾病についても、あの、整理をされております。えー対象者はですね、大体約10万人でありますが、実際にはあの経過的なものですから総対象者15万人ぐらいとか、この論文に直接的対象にしてんのは8万6千人とか、そのうち亡くなった方がいくつとかいったことがあります。ま、全体としてはガンの死亡を原因別に分けてるということですね。それで、この領域は0から200ミリシーベルトぐらいの領域でも、ま、十分にリスクがある、と。
ま、この著者はですね、「閾値は無い」と、どんなに低い被曝をしてもやっぱりガンは出る、と。ただあの、あえて閾値はいくらかと言ったら「0シーベルト」だ、と。ま、いう風な言い方をしております。ま、かなりきちっと言ってるってことですね。あと、直線関係が得られますので、先ほど言いましたように1ミリシーベルトと10ミリシーベルトと比べると、10ミリシーベルトの方が10倍になる、と。
ま、これはあの日本の法律でもですね、えー「放射線による被曝はできるだけ減らさなければならない」という原則が書いとりますし、ま、今発言してる人のほとんどがですね、このことを充分に勉強してですね、専門家になったと思うんで、東電の事故があったからとかですね、政府の覚えが良くなる(=気に入られる)からつって自分の専門を捨てんのはですね、あんまり感心できません。
えー具体的には、30歳で1シーベルト被曝した人が70歳になったときのガンの死亡率は、えー被曝してない人に比べて42%、えー、それから被爆のときの年齢が10歳若くなり29%増加しました。従ってこの計算によりますと20歳で被曝しますと83%ということで、ほぼ2倍のガンになります。えーまぁ、そういうことでですね、まぁかなり確率が高いということが言えますね。
もう少し詳しい解説では、えー被爆者で個人線量が推定される8万6千6百人、調査中にもう既に5万人の方がお亡くなりになっとります。えー死亡数は1万人ということで、まぁ統計的には相当の量であると、まぁいうことですね。
で、ええとまぁその、この研究結果っていうのはですね、もちろん膨大な被爆と研究の一つでありますが、相当、そのちゃんとした報告であるということは、まぁ同時に言えますね。ただこの前、あるマスコミの人とお話しをしたら、「何でこんな重要な論文が新聞に出ないんだろうか?」と、ま、こう言ってますね。これは非常に大きな問題で、何故かって言いますと、ま、現在のテレビとか新聞の、この何て言いますか、被曝の報道っていうのはですね、「大丈夫だ」と言うことを、とにかく国民に説得するという立場を取ってるように私は思います。
えー元々、報道機関なり自治体とかそういうのは、そういう人はですね、えー別段それほど偉くはないつったらいけないんですけども、その、国民を指導するっていうんではなくてですね、こういった重要な論文が出たら、やっぱりそれを紹介すると。
やっぱり、考えるのはあくまでも国民だと、原発を再開するかどうかを決めるのも国民だ、と。それを扇動してるっていう風に言う人もいますが、えー、扇動するっていうことは実際できるんでしょうかね? ま、よっぽどデータに偏りがあれば扇動されることもあるでしょうけど、まぁまぁ中立的な立場で報道すればですね、人はですね、扇動する方を信用しないのが普通です。
ですからですね、ぜひこの1年はマスコミはうっかり政府の誘導に乗ってしまいましたが、やっぱ本来のマスコミの目的である、やや政府には批判的・・・そんな無茶苦茶、批判的じゃなくていいですけど、「やや政府に批判的で、ま、事実を伝えることに主力を置き、どちらかと言うと危険(から国民)を守る」と、ま、いうことに戻ってもらえないかと思いますね。
えー被曝の計算なり、まだ今でもお子さんをですね、林間学校とか夏休みの旅行に出させるっていう人がほんとに迷っとります。ま、それはですね、専門家がわざと、と私思いますけども、例えばどっかに行くというとき、そん時だけの被曝量を計算したりしてますね。瓦礫もそうですね。一つ一つを計算して、ま、それが1ミリシーベルト以下であるという言い方をやってますけども、私が「足し算ができない東大教授」っていうのを書きましたけども、今では「足し算をしない色々な人、教育関係者」のように見えます。
ま、この論文をぜひ、じっくりお読みになってですね、ちょっと難しい論文ですがお読みになって、それで、被曝というのは健康を害する可能性がかなりあるんだと、このくらいはですね、やっぱり理解する必要があるんではないかと、ま、それが責任者としての役割ではないかと、私は科学者としてそう思います。
(文字起こし by danielle)