なぜ、年金は崩壊するのか(3)・・・インフレが来たら終わり(2) | お手伝いさんたちのブログ

お手伝いさんたちのブログ

中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

※今回はところどころ音声が途切れてしまっていて、わかる範囲はこちらで言葉を補っていますが、どうしてもわからない部分は「音声不明瞭」としてあります。


なぜ、年金は崩壊するのか(3)・・・インフレが来たら終わり(2)



現在の制度のように、20歳から国民が年金を納め、国や企業がその一部を負担し(結局、これも国民)、65歳から受け取るという制度では、二つの大きな「だまし」とも言うべき欠陥があります。



第一に、この45年間に一回でもインフレが来たら、それまで貯めてきた年金が無に帰するということです。現実に、これまで40年間、積み立ててきた年金がどうなったかを10年ほど前に計算した例を示します。




お手伝いさんたちのブログ
この例では1965年の時に20歳だった人が2005年に60歳まで年金積み立ての指示に従って積み立てた場合、合計で303万円の原資(積立総額)になることを示しています。20歳から30歳までの積立額が4万円。次の30歳代の10年で43万円・・・となっています。



そして50歳になったときの総積立額が約150万円で、最終的にその2倍の約300万円になっています。なぜ、40年間も積み立てているのに、最後の10年で半分(150万円)を積み立てるようになってしまったか?それは「じわじわ進むインフレ」が原因しています。



戦後の日本では、戦後すぐに大きなインフレがあり、さらに高度成長の時にインフレに見舞われましたが、そのほかでも「景気の良いとき」はインフレになっていました。デフレ傾向になったのは1995年から後で、そのときには景気が悪く金利も小さく、今度は「運用益」がマイナスになったりしています。



人の一生は一度しかありません。その間に、インフレが一度来るとそれまでため続けてきた苦労は水の泡になります。それも貧乏な20歳代、結婚して少しでもお金が必要な30歳代に積み立てた分は「無いも等しい」と言うことになるのです。



・・・・・・・・・


ところでここに大きなトリックがあります。1960年代にやっとの思いで10万円ぐらいの年金を積み立てた人は大変な思いをしました。私が1966年に会社に入ったのですが、そのときの初任給はおおよそ2万円ほどでした。だから10年で10万円といっても1ヶ月1千円ですからかなりの金額です。



ところがこれでも困らない人がいます。それは「社保庁のお役人」でした。社保庁のお役人は「他人が40年後にもらうお金」を「その年ごとに給料として受け取る」ということができます。つまり40年前にみんなの給料が2万円の時に、「先に40年後の年金をもらってしまう」ということです。



お金の価値は時代とともに変わるので、その年、その年で受け取った方が得になります。それを社保庁のお役人が取ったのです。これが第一のトリックでした。



当時、まだ日本経済は成長していましたので、運用益5.5%だから年金は時代とともに増やすことができると言っていましたが、これにもトリックがあります。確かに単純な物価上昇は1年あたり4.3%でしたから、5.5%の運用益なら、そこから社保庁のお役人の給料などを差し引いても物価上昇分だけは確保できそうです。



でも、そうではないのです。たとえば40年前はテレビが珍しく、それも白黒でした。自動車も1000CCぐらいが普通で、とうてい2000ccの車など買えませんでした。つまり「生活は向上する」という比率が1年に3.2%だけあるので、これを合計すると、7.6% の利回りがないと「目減り」していくのです。



さらに、人間は若い頃は寒いのも我慢できますし、脚も丈夫なので坂も歩けます。だから年をとっても若い頃と同じというとかなり辛い人生になります。そこで、「歳なりに同じような生活」ということを考えると、それが1年に2.3%になります。つまり「人間は歳を取る」ということを考えるとそうなるのです。



これらをすべて考えると.9.9%になる。単純な計算をすると、40年間9.9%と、40年間5.5%を比較すると、1.099の40乗と、1.055の40乗の比率だから、0.20、つまり年金は40年間で5分の1になってしまうということを示している。



社保庁のお役人はこの物価上昇、社会環境の変化、自分の年齢変化の3つの被害を受けずに、その年、その年で精算して給料をもらっているのに、年金を拠出した人は5分の1に減った年金を受け取るということになるのだ。



これが私が「その年型」しか解決策がなく、かつ誰がお金を出しているのかが見えるので、日本文化を踏襲する意味でも唯一の年金解決策と考える理由である。


(平成24年4月10日)




--------ここから音声内容--------




年金の話も書き追ってきまして、もう3回目になります。えー、インフレが来たら終わりっていう話は、この前ちょっと半分ぐらいしました。それを詳しくきちんとデータも入れてですね、お話をしたいと思いますが。えー、現在のように例えば20才ぐらいから国民が年金を(納めて)ですね、えー、国や企業がその一部を負担し…まぁこれは結局、まぁこれも国民なんですけど。えー65才から受けとるっていうのは、例えば制度を作りますとね、これは二つの大きなダマシがあるわけですね。





えー、まずもちろん一つはですね、その45年間、つまり我々が年金をためている45年間に、ま、一回でもインフレが来ると、ま、それまでためたきた年金が無に帰するわけですね。えー、ま、デフレはまたデフレでまったくこれの跳ね返りと同じなんですけど、なくなっちゃうんですが。ま、そういうことが起こるってことですね。





えー、現実にこれで40年間積み立ててきた年金がどうなったかを、10年ほど前に私が計算した例を示しました。えー、これを見てもらうとわかるんですけども、1965年の時に20才だった人がですね、60才まで年金の積立をきちっとやった、と。そうすると、303万を積み立てたことになりますね。ところが、よくよく見るとですね、えー、その10年の積立額、たった4万円なんですよ。次の10年が43万ってことでですね、全部で333万積み立てたっていってもですね、えー、最後の10年だけで半分なんですよ。





なんで40年間も積み立ててんのに、最後の10年だけで半分かっていうとですね、それはじわじわ進むインフレが原因してるんですね。えー、まあ、あの戦後日本はインフレがあったんですが、それ以後も少しずつ、あのー、えー、インフレがありましてですね、で、あのー、こんなふうなんですね。だけど、結局逆っていうのもダメなんですね。えー、あの、デフレになると今度は景気が悪くなって金利が少なくなって、やっぱりこれは同じようなことになりますんで、ま、ここではめんどくさい(音声が切れてました)…インフレの時だけで説明してあります。





で、そうなりますとね、年金ってのはまあ、一生に一回受けとるわけですね。ですから、その…人生って一回しかありませんから、その間40年間に一回だけインフレ来ると、それでもう終わり、とかですね、ま、そんなの危なくってしょうがないわけですよ。まあ20才代貧乏ですから、その時にやっとためたお金、もしくは30才代で結婚してですね、少しでもお金(が必要な時に)ためたやつは、結局無に等しいってことなんですね。





えーと、例えばどういうことかっていうとですね、あのー、私の初任給なんってのはですね、えー、2万円でしたね。もう、それでもけっこういい初任給だったんですよ。えー、もしかしたら1万円ぐらいの人多かったでしょうね。だから、10年ためるっつっても、けっこう大変なんですよ。あー、もう、10万円ためるなん(ていっ)たら、(音声が切れてました)ほんとにこう…一ヶ月1000円ためるってのも相当大変ですからね。えー、まぁ、今で言えば2万円ですから、一ヶ月1万円ずつためると…ためるっていうか年金に納めるっていうわけでしょ。





だから、その、ようするに、40年前っつったら、もうほんとに今と時代がまったく違うんですよね。そん時にためたやつを40年後にもらうっていうこと自体がおかしいんですよ。これ、あの、実は、あのー、何回も言うようですけど、デフレ問題は後で扱いますけど、デフレでも同じなんですね。デフレは今度は運用益の方でかぶってるということで同じなんですね。





ところでこれで困らない人がいるんですよ。これが社保庁のお役人なんですよ。社保庁のお役人はですね、実にうまいんですよ、これ。っちゅうのはですね、えー、40年後にみんながもらうものをですね、えー、今もらうんですよね。ですから、40年前の給料…2万円の時には、みんなが40年後にもらう年金をもらうんですよ、そん中から。だから、その年その年でもらうわけですからね。片っ方は積み立ててるわけですから。全然勝負にならないんですね。





えー、つまり、社保庁の職員が…お役人がいい思いをするための年金が「積立型」だったと…こういうふうになるわけですね。えー、ようするに彼らはどう言ったかといったら「運用益が5,5パーセント年率あるので大丈夫だ」と言ってたんですけど、これ違うんですよ。確かに単純な物価上昇はですね、一年あたり4,3でしたからね。これ事実ですが。5,5パーセントの運用益なら、まあ、あー、だいたいそこからちょっと社保庁のお役人の給料とか、(音声不明瞭)…の分を抜いてもですね、まぁ確保できる。





実はだけどそうじゃないんですよ。40年前はテレビは、まぁ珍しくてですね、ま、白黒…あっても白黒、と。自動車もパブリカとかですね、カローラとかいうのはみんな1000ccですね。とうてい2000ccの車なんか買えないわけですよ。クラウンつぅのは金持ちしか買えなかったわけですね。これは何を言ってるかっていうと、生活は向上するわけです。この向上分ってのが大体年に3,2パーセントになるんですね。で、(音声不明瞭)…は贅沢だって、そういうわけにいかないんですよ。もうねぇ売ってないんですよ、元々。安い白黒テレビとかそんなのは。





だから、えー、結局ですね、えー、7,6パーセントの利回りだと目減りするわけです。それからもう一つはですね、あのー、普通に考えてですよ、我慢って(音声不明瞭)…言いますけど、お年寄りは我慢できますが、人間は若い頃は寒い…少しぐらい寒くても我慢できますしね。ストーブつけなくて。足も丈夫なんで坂も歩けるわけですよ。色んな点が違うわけですね。





で、従って「年なりに」若い時と同じような生活をしようとすると、大体一年に2,3パーセントぐらい必要になんですね。これはつまり人間が年を取るということを考えるわけですね。そうしますと、この三つ…つまり、単純な物価上昇、世の中が良くなっていく、自分が年を取るっていう三つを(音声不明瞭)…させますと、9,9パーセントになりますね。そうしますと40年間9,9パーセントと、40年間5,5パーセントを比較しますと、年金が実質1/5に減っちゃうんですね、ええ。えー、これを…まあ、これが実態なわけですよ。





ところが社保庁のお役人だけは、この物価上昇も、社会環境の変化も、自分の年齢変化に対する三つの被害はまったく受けずに、その年で清算して給料もらっちゃってるわけですね。ですから、年金を拠出した人は自分の年金をもらう時には1/5に減るんですが、その年金を取り扱う社保庁の人はですね、その年その年の清算だから得をすると…まぁ、こういうわけですね。





これが私がですね、実は年金つぅのは「その年型」でないと解決策はないし、えー、やっぱり40年間インフレもデフレも来ない、と、ま、デフレが来ますと何回も言ってますが、今度は運用益がほとんどゼロパーセントになりますからね。今度のAIJのような問題が起きますから。ま、結局同じになっちゃうんですけど。えー、日本文化を踏襲するという意味でもですね、まあ、私は「その年型」が唯一の年金解決策になると考えております。





ま、これについては、また色々な機会に、えー、ディスカッションしてですね、少しずつレベルを上げていきたい。ま、ようはですね、「ゆりかごから墓場まで」なんていうキャッチフレーズ、「原発は安全である」とか、そういう神話をですね、一つ一つ剥がしていこう、と。我々が本当に民主主義で、我々が住んでる日本にしたい、と。ま、こういうふうに思って、ま、こういう問題も取り組んでいます。