生活の鱗002 日本は家庭、フランスは男女・・・夫婦事情 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

生活の鱗002 日本は家庭、フランスは男女・・・夫婦事情 (4/8)



2005年に「家庭や夫婦」に関する国際的な調査が行われています。質問は「夫婦生活の中でなにがもっとも大切ですか?」というものです。これに対して、国と第一位、第二位、第三位と並べると次の通りになります。



日本    1.誠実、2.収入、3.子供の健康と成長
フランス  1.誠実、2.性的魅力、3.共通の趣味


第一位の「誠実」だけは同じですが、第二位からはずいぶん違いますね。日本人は愛して結婚するのですが、結婚しておよそ3年経つと、「お互いの愛より、家庭」に切り替わります。「3年目の浮気」というのは、日本では3年間はお互いの愛情で生活ができますが、3年のうちに「愛する夫婦」から「家庭の連れ合い」に変わる必要があるのに、それに気づかない人がいるからだそうです。



つまり3年間のつきあいのあと結婚したとすると、3年(恋人)、3年(愛する夫婦)、そしてそれから後の50年は「家庭を一緒に営む連れ合い」になるのです。それがわかっているペアーはうまくいっているようです。




これに対してフランス(概してヨーロッパ、アメリカではその傾向が強いのですが)は、「個人の独立」を重んじますので、いつまでも「愛する夫婦」の関係で家庭を維持することができます。そのためには、「性的魅力」や「共通の趣味」が大切ですし、ちょっと言いにくいのですが、セックスの回数も日本とはかなり違います(フランスは世界平均より少し多く、日本は世界平均より2分の1程度とされています)。



先日のブログにも書きましたが、このことは日本では「結婚すると家庭人となる」と表現するのが適切で、かつては「結婚して所帯を持つ」と言いました。それに対して個人を一つの単位とするヨーロッパでは「結婚して夫婦になる」ということで、あくまでも2人が単位になっています。



これは子供の養育にも違いを及ぼし、日本では子供が所帯を持つまでは親が面倒を見るというのに対して、ヨーロッパやアメリカでは「18歳になったら子供は家庭から出て行かなければならない。家庭は夫婦のものだから」というのとの違いとなります。



どちらが良いかというのは多くの人の希望で決まりますが、日本人は日本文化の中で生きているので、どちらかというと「自分の生まれ育った家庭は、結婚するまではその一員である。さらに、結婚して年老いて両親がいなくなっても精神的な実家として残っている」という感じを持っています。



男女が互いに独立していて、2人が同居するというヨーロッパ型では「男女平等」が問題となりますが、男女が一心同体で家庭の一員となるという日本型では「男女平等」という概念はなく「お互いに幸福か」という子供を含めたその家庭の構成員の「幸福平等」ということではないかと思います。



卑弥呼の時代は女性の幸福の方が上、戦国時代(奈良時代から1945年まで)は男性の幸福の方が上、そして今は新しい時代に向かっていると言うことができるかも知れませんが、それもあまりに単純な区分のように感じられます。



戦国時代は「戦争で死ぬのは男」と決まっていましたが、「死ぬ方が幸福」というのもかなり乱暴な議論です。また「戦争は男がするもの」と役割分担を固定するのもやや疑問です。「男だから戦争で死ぬのは当然だ」とか「女だから家事をするのは当たり前」というのではなく、またお互いに自分が得をすればというのでもなく、さらに「こういう人もいる」という特殊な例を出すことなく、平均的な男女が、それぞれの人生の目標を達して幸福に生きることができる無理のない社会を考えたいと思っています。



たとえば、男女の雇用が均等化し、賃金の同じになったとしても、子供を保育所にあずけ、その子供が病気をしたらお母さんが仕事をほうり出して迎えに行かなければならないというのでは、不満がたまり、とうてい幸福な人生を送ることはできません。



建前論ではなく、真に日本の男女、日本の家庭、そして人生の幸福を親身になって考えて、よりよい男女関係、夫婦関係を、とげとげしい議論をせずに、世界に先駆けて日本人の夫婦、家庭が幸福に笑い声が絶えないように作っていきたいものだと思います。



このような記事をこの頃書いているのは、女性の方で「新しい夫婦」、「新しい家庭生活」、「仕事と家庭の両立」、「子供が保育園で熱を出したときにどちらが連れてくるか」などの日常的なことで苦しんでいる方が多いからです。



私の感想では、それは「ヨーロッパのやり方を、日本と違うのにあまり議論せずに輸入し、そのシステムの中で苦しんでいる」というように見えます。これは「年金問題」や「原発の爆発」とも類似していまして、日本の「地形、風土、文化」などを考えずに、議論せずに直輸入してくることに問題があると思うからです。



天下り先を作るとか、税金をばらまけるというような動機で、不完全な制度を持ち込み、その中で「子供を持つお母さん」や「これから就職しようとしている若者」が被害を受けていると思うのです。


(平成24年4月8日(日))



--------ここから音声内容--------




えーこの前、ちょっと家庭のことを書きましたが、もう一個少し続けてですね、えー2005年に「家庭や夫婦」に関する国際的な調査が行われております。ま、質問はですね、「夫婦生活の中で何が最も大切ですか?」というものですが、ま、これに対して、国と第一位、第二位、第三位に挙げられたものを並べますと、ま、日本ですと、誠実、収入、子供の健康と成長ってことで、まぁ日本人だったらそう考えますね。ところがフランスですと、誠実、性的魅力、共通の趣味っていうのが並びます。





これ、どういう風に違うかって言いますとですね、ま、結婚生活ですから、もちろんお互いの「誠実さ」っていうのが一番大切で、嘘をつかないとかですね、ええまぁ、表面上ぐらいはちょっとは良いけど、とまぁそんな感じですね。




しかし、日本の場合はまぁ結婚しますとですね、「所帯を持つ」っていう感じがあるんですよね。ですから、まぁ3年は、まぁ割合と愛情の下で住むわけです。子供ができて、そのうちにですね、「愛する夫婦関係」というよりか、むしろ「家庭の連れ合い」であると、ま、いう風に変わってくるわけですね。




私は、あの実は「3年目の浮気」とか、ああいう話を聞きますとね、“ああこれは、そういう男女の関係から、家族の関係に変わっていくのがちょっと下手な人がいるんだな”と、まぁそういう風に思うことがあります。えーやはり、日本の社会はそういうことですね、家庭は。




ところが、フランスなんかは、これフランスばかりじゃなくて、ま、この調査はアメリカやスウェーデンとかいろんなとこあるんですが、大体はこういう傾向なんですね。えー、「個人の独立」というのを重んじておりますので、やっぱ家庭でもですね、「夫と妻が愛する関係」ということで家庭を維持するわけですね。そのためにはずーっと「性的魅力」がなきゃいけないし、「共通の趣味」も大切である、と。ちょっと言いにくいんですけど、セックスの回数もちょっと違うと、ま、こんな感じですね。





えーまぁ日本の場合はですね、「結婚すると家庭人になる」ということでですね、えー、これはちょっとあの感覚が違うわけですね。あのー、ヨーロッパでは「結婚して夫婦になる」っていうことであくまでも二人が単位ですね。これはあの別に夫婦ばかりじゃなくて、この前書いたように子供の養育ですね。日本では、まぁ子供が所帯を持つまで親が面倒を見るということに対しまして、ヨーロッパ・アメリカではですね、基本的にはあのー「18歳になったら子供は家庭から出て行く、どうしてかって言ったら、家庭は夫婦のものですから」ね。ですから日本ではですね、親と子供は一体なんですね。





ところが、ええと、ま、こういったもので分かるようにヨーロッパとかそういうのは、家庭は夫婦のものなんですね。ですから、えー18歳になったら、もちろん夫婦ではない人は出て行くと、ま、こういうことになりますね。えー、どちらが良いかよく判りません。




狼なんかもですね、えー、成人になると出て行きます。えー、だから狼の家族っていうのは非常にこう良い家族なんですが、それでもやっぱり成人になったら出て行きますね、家からは。そういうのか、それとも、ま、どうか?っていうことですね。日本人ですとね、自分が生まれて育った家庭はもちろん結婚するまで18歳とか関係なく、えー、その一員なんですよね。それで、更に結婚していてもですね、もしこう年老いて両親がいなくなってもですね、ま、精神的な実家として残っている。ま、要するに、ま、やっぱり「家」って言うんでしょうかね、家制度も良いって言うんじゃないんですよ、これ絶対誤解しないでくださいね。そういうこと言ってんじゃないんです、そういうことだということですね。





で、そういうことでですね、男女がお互いに独立していて同居するというヨーロッパ型では、「男女が平等であるか」っていうのが問題になるわけですよ。ところが日本ではね一心同体型なんでね、家庭の一員ですから、「男女平等」っていうんじゃないんですよ。「お互いに幸福か」というのを子供を含めてですね、いわば「幸福平等」なんですね。お互いに同じご飯を食べて、お互いに苦労をして、と。“男女が”って言うと、ちょっとですね、「子供も含めて平等、家族みんな平等」っていうことですね。これがあのこの前書いた、お財布の関係ですが、えー家族の財布を一緒にするっていうのがこの、日本の家庭の「幸福平等」というのに、まぁ関係してるわけですね。





ええと、まぁ歴史的に見ますと、卑弥呼の時代は女性の幸福の方が上だったと思います。戦国時代つっても、奈良時代から1945年までですが、戦争が主体となった時代は、えー男性の幸福の方が上だったかもしれませんね。今はま、それが新しい時代に向かってる。ただ戦国時代もですね、「戦争で死ぬのは男」と決まっておりましたが、ま、「死ぬ方が幸福」だっていうのもかなり乱暴な議論ですね。えー、それからまぁ戦争は男がするもの、と役割分担が固定してますが。それから「男だから戦争で死ぬのは当然だ」、「女だから家事をするのは当然だ」、というのはちょっと私ね、疑問があるんですよ、ええ。





まぁ男も女もですね、お互いに自分の性が得をするなら良いというんではなくて、あと「こういう人もいるんだ」と特殊な例を出すんではなくて、やっぱり平均的な男女がですね、日本の文化の中で、まぁそれぞれの人生の目標を達すること、幸福に生きること、こういうのが大切だと思うんですね。





ええまぁ今日本はですね、私はちょっと議論がずれてると思うんですね。平均的な男女が出てこないで、ものすごく優れた女性の例が出てきたりですね、そういうことも多いんですね。ま、私はですね、男女の雇用が均等化して賃金が同じになったとしてもですね、子供をその、保育所にあずけてあったら、その子供が病気したらお母さんが仕事を放り出して迎えに行くっていうんではですね、えー、やっぱりこれはちょっと女性がですね、あのダメだって言うか、やっぱ可哀想だと思うんですよね。幸福な人生と言えない。





だからここではですね、私は建前論がちょっと先行してんじゃないか? 真に日本の男女、日本の家庭、もしくは人生の幸福に親身になって考える、とげとげしい議論ではない…まぁいうことが大切だと思うんですが。実はですね、女性の方で、「新しい夫婦の関係」、「新しい家庭生活」、「仕事と家庭の両立」、「子供が保育園で熱を出したらどちらが連れてくるか」ってなですね、そういうことに苦しんでる人多いんですよ、賃金も低いですしね。





で、これは私はですね、ヨーロッパのやり方を日本の文化とは違うのに、輸入して、そのシステムの中で苦しんでる。これは「年金問題」もそう、「原発の問題」もそう。私がこうちょっとこういう関係に、ちょっとこう進みつつあるのは、原発をやると年金も引っ掛かってくる、タバコも引っ掛かってくる、えーこういったあの、夫婦関係も引っ掛かってくる。





今、日本はですね、天下り先を作るとか、税金をばら撒けるっていう動機でですね、非常に不完全な制度を持ち込むんですよ。その中で苦しんでる人は、「子供を持つお母さん」とか、「これから就職しようとしてる若者」が被害を受けてるように思うんですね。ま、こういう風なことを書きますと、バッシングが私のほうに来るんですが、ほんとにそれでいいのか? ま、別に私、バッシング受けても構わないですが。本当にこう、今女性の方はね、苦しまずに楽しく幸福な人生を送ってんのか? もう少し日本の風習というというものも考えた…これ日本の風習に戻るっていうんじゃないんですよ、これ。いつもこれで誤解されるんですけど、そういうの全然言ってないですね。





いくら新しいことを言っても、日本には古い風習が残ってる、その古い風習が残ってるのと新しい見方の間で、具体的に苦しんでんのは女性の方じゃないか、もしくは就職では若者じゃないか? 原発では電気を貰う経済界じゃなくて、原発で被曝した子供の方じゃないか?そっちの方にこう、なんか目を向けないとですね、まずいんじゃないか?私はそういう風に思って、ま、書いてるわけですね。





その・・・原発の問題でも、これは欧米だったらすごく違うと思うんですね。到底その法律に反するようなことはできないと思うんです。日本ではいとも簡単に法律を無視して、子供たちを被曝させるってことが現実に行われるわけですね。だからこれに対して、被曝する子供たちの身になってみれば、もうちょっと考えてあげた方が良いんじゃないか、日本としての考えをやっぱり持ち出さなきゃいけないんじゃないか、とこう言ってるだけですね。





まぁあの、今度大震災が起こったときに、日本人がほんとに我慢してじっと待ってたと、暴動が起こらなかったというような日本文化の中で、ヨーロッパのものをそのまま直輸入するのは問題であろうか? それを我々は冷静に議論する、そういうこう何ていうんですかね、我慢強い心っていうのを持たなきゃいけないんじゃないかと、ま、こういう風に思います。


(文字起こし by danielle)