(原発)責任ある人たちの法律的・倫理的問題点(2) 被曝を勧めた医師の進退 | お手伝いさんたちのブログ

お手伝いさんたちのブログ

中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

(原発)責任ある人たちの法律的・倫理的問題点(2) 被曝を勧めた医師の進退



「1年1ミリ以上の被曝をしてもよい」という意味のことを発言したり、書いたりした医師は、ご本人が自主的に医師免許を返納するか、もしくは医師会がその医師の返還を勧告する必要があります。これはごく簡単なことですので、すぐにでもお願いします。



被曝に関する日本の法律と医師の普遍的な倫理によるもので、このようなことを曖昧にすると日本の医療の信頼は得られません。医師は社会的に指導的な立場にあって、6年間に及ぶ医学教育と国家試験の合格者でありますし、かつその後も医師としての教育を継続的に受けてきているのですから、このような簡単なことを知らないとか自分独自などと言うのは許されません。



なぜ、1年1ミリを超える被曝を許したり、勧めたりすると医師をやめる必要があるかというと、発言をすれば患者さんを治療することができないからです。その理由を明確にしておきますので、医師会なども体裁などにとらわれず、この際、日本の医療のためにはっきりした態度を示してもらいたいと思います。


・・・・・・・・・


1) 国際的にも国内的にも、被曝は1)自然放射線による被曝、2)原発などからの人工源からの被曝、3)医療被曝、の3つからなっており、原発などからの被曝に対して医師の発言の権利は及ばない。医師は殿様でも神様でもなく、被曝に関する権限は「医療用」に限定される。医師は時に患者の両足を切断することがある。このように他人の体を傷つけても罰せられないのは、それが医療行為だからである。医師が医療行為で何ミリシーベルとを患者に施してもそれが正当な医療行為であるときだけ認められる。



また、医師が「自分は両足を切断しても罰せられないから、東電もお客さんの両足を切断することは許される」旨の発言は犯罪である。「自分の医療の学問や経験から、1年1ミリ以上の被曝は問題ないから、従って原発からの被曝は許される」との発言は医師として著しくその権利を逸脱している。



2) 医師が患者の両足を切断しても罪に問われないのは、日本社会が医師の専門性とその権限を医療に関して認めているからである。最高裁判所の裁判官が、「自分は社会的に尊敬される存在であるにもかかわらず、被告を殺す(死刑)にしてもよいことから考えて、人を傷つけることぐらい許される」などと発言することができないことと同じである。



現代社会はその社会の発展と維持のため、特に国家的に認めた人たちに特別の権限を付与することがある。しかし、それは患者、被告などに対して、一定の手続きを経て行えるものであり、その他に敷衍することは許されない。


・・・・・・・・・


首相や都知事は日本国憲法の前文で定められている通り、国民の信託を受けてその代理業務をやっているのですから、法律に基づき、選挙してくれた国民を尊敬してその業務にあたることは当然です。もちろん、民主主義ですから全権を持った殿様ではありません。



これと同じように医療を行うことができる人たちも、国民の信託を受けて、特別な行為が許されているだけであり、その行為は医療行為に限定されます。それを管理している厚労省は、国民の代わりに監督の責任がありますし、専門家のギルドとして機能する医師会は不良な言動に対して必要な勧告を行うことが求められます。



もちろん、私がここに書いたことは普通の日本では行うようなことではありませんが、今回の原発事故における福島医大や東大に所属する医師の言動は、今後の日本の医療のためにどうしても処分、あるいはなぜこのようなことが許されるのかについての説明をする必要があります。



被曝に関して医師が発言しうる最大限の範囲は、「医療においては1年1ミリシーベルト以上の被曝を患者にさせることがあるが、医療以外の分野で人工的な被曝は1年1ミリシーベルトに限定されている。これらの被曝を将来合理的・学問的根拠を持って統一する必要がある」ということでしょう。



日本の医療の将来と、日本の専門家の倫理を保つために、厚労省、医師会、そして医師本人の誠意に期待します。言うまでも無いことですが、厚労省は国民のため、医師会は患者のために存在し、医師の利益代表でも無いと思いますし、さらに医療の正常化はこの二つの機関の最も大切なことと思います。「村の掟」ではなく、近代国家の「法律と倫理」のもとづいた行動を望みます。



繰り返しますが、「健康」に関することだからと言って医師は万能ではありません。患者さんを相手にした治療以外に、医師がどの範囲で発言しうるのか(医師として)、まだ社会的な合意は進んでいません。そのこともよくお考えになり、前向きな議論を展開することを期待します。

(平成24年4月2日(月))




--------ここから音声内容0--------




えー、先回ですね、明るい未来が見通せる社会では、芸術や学術が花を開くという大変に前向きの話をいたしました。しかしそのためにはですね、今この社会を覆ってる極めて重要なことは取り除いとかなきゃいけませんね。その一つとして、ちょっと固いんですが、 責任ある人は…その、「法律的・倫理的問題点その2 被曝を勧めた医師」、ということでお話をしますが、えー、一年1ミリ以上の被曝をしてよいということの意味のようなことを発言したり、書いたりしたお医者さん、これは自主的にですね医師免許を返納して下さい。もしくは医師会がその医師の免許の返納を勧告する必要がありますね。これも大変に重要なことですが簡単なことであります。





なぜかって言いますとですね、日本の法律と医師の普遍的な倫理に基づけばですね、えー、このようなことを曖昧にしたままにしておくと、日本の医療は崩壊します、ええ。ま、医師はですね、社会的に指導的な立場にありますし、ま、6年間に学ぶ医学教育、国家試験の合格者であります。その後もですね、人の命を救うという崇高な使命を達成され、労働時間も長いですね。ま、こういった尊敬できる医師が、もうこれほどひどいことを言ったらやっぱりいけません。





えー、なぜ一年1ミリシーベルトを超える被曝を許したり、また勧めたりするとですね、医者をやめなきゃいけないか、と…いうことはどういうことか、ということを説明しますが、基本的には簡単で、患者さんを治療することができる医師は、そういうことをやっちゃ行けない、っていうことですね。ま、これは、そのギルドである医師会も、まぁそこんとこはっきりとした態度を示すべきでしょう。少なくともステイトメントがいりますね。





まず、その理由をきちっと話をしときますが、国際的にも国内的にも被曝というのはもう三つあるんですね。自然放射線による被曝。原発などからの人工的被曝。それから医療被曝ですね。この三つは独立しております。この独立してるのも合意ですね…社会的合意です。ま、将来はどうだかわかりませんけどね。で、原発などからの人工源からの被曝に対して医師は発言の権利を及びません。医師は殿様でも神様でもありません。被曝に関して社会が医師に許してるのは医療用に限られております。





一つ例をあげますと、医師は時に患者の両足を切断することがありますが、こんなことをしても罰せられないのは、それが医療行為の範囲だからなんですよ。医師は医療行為で何十ミリシーベルトを患者に施してもですね、それが正当な医療行為であれば許されるんです、ええ。その、今、今度、福島原発の事故があって、医者がですね「一年100ミリシーベルトまでいい」とか「被曝しても健康になる」とか言って、(それは)医療行為の範囲じゃありません、ええ。





また医師がですね、「自分は両足を切断しても罰せられないんだから、東電もお客さんの両足を切断してもいいよ」なんて言っちゃいけない。これ犯罪ですね。まあ、そこまで言わなくても、自分の医療とか学問の経験から「一年1ミリシーベルトの被曝は問題ないんだ」と。「だから原発からの被曝は許されるんだ」と。これなんかもう、まったく医師としての権利を逸脱しとります。認められたものですね…ま、権利というんですかね…むしろ社会から容認されているものっていうことでしょうね。





二番目はですね、ま、専門家の倫理ってのがあるんですね。これはもう専門家に共通してるわけです、ええ。えー、医師が患者の両足を切断しても罪に問われないのはなぜか? それは、日本社会が医師の専門性に期待して、えー、認めてるからですね。




裁判所の…最高裁判所の裁判官は死刑判決をします。だけどもその裁判官が何回も何回も死刑判決してるうちに…これは例えば医療だったらば何回も何回もCTスキャンやってるから…っていうわけですね、…錯覚しましてね、「自分は社会的に尊敬されてるから、どうも死刑判決ができるらしい」、 「被告を殺してもいい」 「だから普通の人も、人を傷つけることぐらい許されんじゃないか」…なんて発言したらダメなんですね、ええ。裁判官は人を殺すことができます…死刑判決。だけども裁判所を出た所で人を傷つけてはいけないんですね。





えー、つまり現代社会は、その社会の発展と維持のために、特に国家的に認めた人たちに、特別な場・特別な相手に対して、ある特別な権限を付与してるんですね。しかしそれには、相手も決まってる、手続きも決まっとりますから、それは、あー、拡大したらいけないわけです。えー、「私はお医者さんだから被曝をしても大丈夫だ、と言える」と、 「法律で一年1ミリシーベルト決まってるけど、そんな法律なんか違反してもいいんだ」 と…こうは言えないわけですね。





これはもちろん共通してるのは、首相や都知事でも、日本国憲法の前文で定められてる通りですね、国民の信託を受けて代理業務をやってんであって、えー、むしろ国民を尊敬しながら業務にあたらなきゃいけない。えー、殿様ではありませんね。ま、医療ももちろん何回か言いましたけど、国民の信託を受けて認められてるわけです。これを管理してる管理責任は厚労省にありますね。それから専門家のギルドとして機能してる医師会も、やはり責任がありますから、勧告をする必要があると思います。





えー、今度ですね、まぁ福島医大とか東大に所属するお医者さんの一部が、こう…激しい法律違反を勧めました。これはもう今後の日本の医療に大きな打撃を与える…もう与えておりますね、一部。だからこれについてはですね、ま、医師免許の返納ってのをすぐできなければ、説明はしなきゃいけません。





なぜ医師が人工源からの被曝についてコメントできるのか? っていうことですね。えー、医療においては一年1ミリシーベルト以上の被曝を患者さんにさせることができるが、医療以外の分野の人工的な被曝については一年1ミリシーベルト以下に限定されている、と。ま、「将来、この被曝を統一する必要があると医学的には考えられるが、しかし今はそこまでいってないので、別々に定められている」と…いうことを説明するのが専門家です。





私はですね、えー、日本は「まあまあ、なあなあ」の社会だから、ま、こんなことがあっても医療は大丈夫だと思われる人もいるでしょうけどね、だけど私は、これはやっぱりダメだと思いますね。えー、厚労省、医師会、そしてその医師本人…発言された医師本人の、まずは誠意に期待したいと思います、ええ。





ま、厚労省は国民のために存在します。医師会もですね、医師のためもあるけど患者のためにも存在しとります。だからこの医療の正常化というものをですね(音声が飛んでいて不明)…の責任がある厚労省と医師会が、まずは村の掟ではなくて、近代国家の法律と倫理に基づいた行動を望みたいと思います。





最低でもですね、えー、なぜこのようなことを医師が言ってもいいのか? と。医師の権限ってのはどこまであるのか? と。治療における放射線の被曝と、それから東電の被曝というのは同じなのか? ま、このぐらいの解釈はですね、はっきりとした解釈を厚労省と医師会とで述べて頂きたい。私が厚労省の法律を読む限り…電離放射線障害防止規則ですね、それはまったく違うことが書いてあります。





ですから厚労省はやっぱり、えー、国民の税金を使った、あー、この…省庁としてですね、ここは毅然たる態度、もしくはステイトメントをですね、えー、出して頂きたい、と。これは日本の医療にとって極めて大切なことだ、と。そうしないとお医者さんはなんでもやっていい、と…まぁいうことになって、えー、大変に信頼性を失うと私は思っております。